06導入ガイド

冷凍商品の賞味期限の設定保存試験・安全係数・根拠資料

冷凍商品の賞味期限は、表示責任者である製造業者等が保存試験の結果をもとに自ら設定します。判定に使うのは消費者庁のガイドライン(令和7年3月改正)が示す微生物・理化学・官能の客観的な指標で、安全係数は1に近づけ、根拠資料は整備・保管します。急速冷凍で氷結晶を小さくしても、表示する期限は凍結テストではなく保存試験で決まります。

シュークリームの品質比較(急速冷凍と通常冷凍)

要点

  • 期限設定の責任と根拠は表示責任者(製造業者等)が持つ
  • 保存試験の指標は微生物・理化学・官能。安全係数は1に近づける
  • 保存条件を変えたら期限を再設定。根拠資料は整備・保管する

01

期限設定の責任は表示責任者にある

冷凍商品の期限は、その食品を最も理解している表示責任者が設定します。消費者庁のQ&Aでは、輸入食品以外は製造業者、加工業者又は販売業者が、輸入食品は輸入業者が責任を持って期限を設定し表示するとしています。

期限には消費期限と賞味期限があり、食品表示基準第2条の定義に従ってどちらか一方を表示します。消費期限は微生物試験等の安全性に係る結果を、賞味期限は理化学試験や官能検査等の品質に係る結果を優先して設定する期限です。

「5日」を境に消費期限と賞味期限を分ける以前の考え方は、現在は推奨されていません。冷凍商品は品質の劣化が比較的穏やかなものが多く、賞味期限を表示する例が多いですが、どちらを表示するかは定義に照らして商品ごとに判断します。

出典: 消費者庁「食品期限表示の設定のためのガイドライン」(令和7年3月)本文2(1)およびQ&A 期限(事)-1・2。

消費期限と賞味期限の違い(食品表示基準第2条・消費者庁ガイドライン)
項目消費期限賞味期限
定義定められた方法で保存した場合に、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くおそれがないと認められる期限定められた方法で保存した場合に、期待される全ての品質の保持が十分に可能と認められる期限
優先する試験微生物試験等の安全性に係る試験・検査理化学試験や官能検査等の品質に係る試験・検査
表示例の食品弁当、サンドイッチ、惣菜菓子、カップめん、缶詰
期限を過ぎた場合食べないほうがよい定められた方法で保存していれば、すぐに食べられなくなるわけではない

02

微生物・理化学・官能の指標と協会要領の判定基準

期限設定に使う指標は、表示責任者が食品の特性と保存状態を踏まえて自ら決めます。品目横断の必須検査は定められておらず、全商品に同じ検査項目を一律に課すと期限が必要以上に短くなるため、ガイドラインはこれを望ましくないとしています。

客観的な指標は、理化学試験、微生物試験、官能検査などで数値化できる項目です。官能検査も、条件を管理し、適切な検査担当者が的確な手法で行えば客観的な指標になります。信頼性と妥当性が担保される条件で実施することが前提です。

日本冷凍食品協会の実施要領では、保存試験の検体を官能試験と衛生試験、必要に応じて理化学試験で評価します。真空包装や脱酸素を行う商品については、消費者庁のQ&A(期限(事)-6)が、嫌気性菌や耐熱性芽胞菌を危害要因として分析し指標にすることを有益としています。

協会要領の判定基準は会員向け要領(更新日 令和2年6月23日)の記載です。自社商品の指標と基準は表示責任者が決めます。

微生物・理化学・官能の試験と冷凍食品での例
試験評価すること冷凍食品での例(協会要領)
微生物試験製造日からの微生物の増殖に伴う品質劣化。HACCPの危害要因分析で特定した菌種等から項目を決める衛生試験として細菌数を測定し、食品衛生法の冷凍食品の成分規格で判定
理化学試験物性の変化に伴う品質劣化。製造日の測定値と保存後の測定値を比較する油脂の酸化が影響する商品は酸価(AV)3以下、過酸化物価(POV)30以下で判定
官能検査視覚・味覚・嗅覚等で一定条件下に評価し、統計学的手法で結果を扱う訓練された試験員3名が色沢・香味・食感を5点評価。1点の項目がある、または平均3.0未満なら各試験員が不適格とし、3名中2名以上が不適格なら総合不適格

03

仮期限から保存試験、判定、表示までの手順

商品仕様と保存方法を固定し、仮の期限を置いてから保存試験を設計します。試験の途中で包装や内容量、保存温度を変えると販売する商品と条件がずれ、結果を根拠に使えなくなります。

保存試験では、流通実態に合わせた包装形態の製品を、自社で設定した保存温度(例えば−18℃や−23℃)で保管し、2か月または3か月ごとなど複数の試験区で検体を採取して評価します。協会要領では試験区ごとに3検体を採取します。

いずれかの試験項目で不適格となった試験区の、前回試験区までの経過月数が保存可能期間です。ここに安全係数を掛けて賞味期限とし、表示と根拠資料の整備に進みます。仮期限は保存試験の結果に置き換えます。

試験区の間隔や検体数は協会要領の例示です。想定する期間が短い商品は間隔を短く、長い商品は初期を長く終期を短くします。

期限設定の手順

  1. 1仕様を固定
  2. 2仮期限を置く
  3. 3保存試験を設計
  4. 4判定
  5. 5安全係数で確定
  6. 6表示・根拠を保管

原材料・製法・包装・保存条件のどれかを変えたら、期限は設定し直します。

04

安全係数は1に近づけ、差し引く日数は0に近づける

改正ガイドラインでは、試験で得られた期限に、食品の特性に応じて1未満の安全係数を掛けるか、特定の日数を差し引いて期限を設定します。その際、安全係数は1に近づけ、差し引く日数は0に近づけることが望ましいとされています。

従来の食品表示基準Q&A(平成27年)にあった「0.8以上を目安」は見直されました。実態調査で0.8未満の品目が約40%あり、必要以上に短い期限が食品ロスにつながるためです。微生物の増殖が抑えられ、ばらつきの少ない食品では安全係数を考慮しないこともあり得ます。

微生物が増殖する可能性や品質のばらつきが大きい食品には、特性に応じた安全係数が必要です。低すぎる係数で期限を設定し、後から在庫解消のために貼り替えて消費者に誤解を与えた事例もあるため、係数は商品の実態に合わせて決めます。

日本冷凍食品協会の実施要領(更新日 令和2年6月23日)には0.7〜0.8程度の記載があります。改正後の考え方との整合は協会の最新版で確認してください。

安全係数

製造日試験区1試験区2試験区3試験区4試験区5試験区6×保存可能期間(最後に合格した試験区)賞味期限 = 保存可能期間 × 安全係数係数が1に近いほど差は小さい

消費者庁のガイドライン(2025年3月改正)は、安全係数を1に近づけること、差し引く日数を0に近づけることが望ましいとしています。

05

凍結時の氷結晶と保存中の劣化の関係

賞味期限をどこまで設定できるかは、凍結時の品質と保管中の管理で決まります。急速冷凍では大きな氷結晶ができにくく、通常冷凍より細胞破壊を抑えやすいため、解凍時のドリップや食感の劣化を減らしやすくなります。

ただし、保管中の乾燥、脂質の酸化、温度変動による再結晶化は急速冷凍だけでは防げません。冷凍焼けは表面から水分が昇華して起こり、包装に隙間があると進みやすくなります。包装と保管温度の安定が期限設定の前提です。

急速冷凍したからといって長期保存できるとは限りません。凍結前の鮮度、包装、保管温度、配送、解凍方法まで含めて商品を設計し、保存中の品質の残り方は保存試験で確かめます。

出典: KOGASUN「急速冷凍食品の賞味期限」「冷凍焼けの原因と防止策」。

マグロ刺身の解凍後ドリップ比較。急速冷凍した刺身はドリップが出ておらず、通常冷凍はドリップが出ている
マグロ刺身の解凍後ドリップ比較。凍結時の氷結晶の大きさが、解凍後のドリップ量に表れます

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保存条件の変更と期限の再設定

流通段階で冷凍するなど保存方法を変えた場合は、変更後の保存方法と、それに基づく新たな期限を改めて設定し、表示し直さなければなりません。再設定は科学的・合理的な根拠をもって行えば法令違反にはなりません。

陳列後に期限を延長して貼り替えることは、当初の設定範囲内であっても消費者の信頼を損なうため慎むべきとされています。冷凍保存品は、返品後に定められた方法で保存されていたかの確認が通常は難しいため再出荷は困難とされ、返品品に期限を延長して付し直すことは認められません。

保存温度の表示は期限の前提です。食品衛生法上の冷凍食品の保存基準は−15℃以下で、−18℃以下は日本冷凍食品協会の自主基準です。表示する保存温度は保存試験の温度と一致させ、協会要領の例示(−18℃、−23℃)のように自社で設定した温度で試験を行います。

出典: 消費者庁ガイドラインQ&A、KOGASUN「急速冷凍と食品衛生法」。保存温度の法定基準と自主基準の詳細は保管設備のページにあります。

保存条件と期限表示で注意する場面
場面対応出典
流通段階で冷凍に変更変更後の保存方法と新たな期限を設定し直し、理由が分かる注意事項を記載消費者庁Q&A 期限(事)-11
陳列後の期限延長当初の範囲内でも貼り替えは慎む消費者庁Q&A 期限(事)-13
返品された冷凍品定められた方法で保存されていたかの確認が通常は困難で再出荷は難しい。期限の延長は不可消費者庁Q&A 期限(事)-14
店内で保存温度を変えて販売表示責任者と別の者が変更する場合は保存温度変更者の表示が望ましい消費者庁Q&A 期限(事)-28

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根拠資料の整備・保管と情報提供

表示責任者は、期限設定の根拠に関する資料等を整備・保管し、消費者等から求められたときには情報提供するよう努めるものとされています。Q&Aではウェブサイトへの掲載も例示されています。

資料には、商品仕様、保存試験の条件、各試験区の結果、判定、安全係数とその理由、表示内容をそろえます。取引先や保健所への説明、表示の見直し、商品改廃時の類似商品への展開にもそのまま使えます。

賞味期限を過ぎても食べられる期限の目安を求められた場合は、食品の特性に応じてできる範囲で情報提供に努めることが望ましいとされています。安全係数を設定している場合は、試験で得られた期限を示すことがその材料になります。

出典: 消費者庁ガイドライン本文2(5)ア・イ、Q&A 期限(事)-7。

根拠資料

  1. 1商品仕様書
  2. 2保存試験計画(温度・試験区・検体数・指標)
  3. 3試験結果表
  4. 4判定記録
  5. 5安全係数と理由
  6. 6表示ラベル案

取引先、保健所、消費者から求められたときに提供できるよう、根拠を1つのファイルにまとめて保管します。

08

凍結テストと保存試験の役割の違い

急速冷凍機の凍結テストで確認するのは、凍結直後の品質、包装条件、初期の劣化傾向です。1回の凍結テストだけで賞味期限は確定できず、表示に使う期限は保存試験と検査を組み合わせて決めます。

乾燥・目減り・ドリップを抑えたい商品には、3Dフリーザー®が向いています。高湿度の冷気で包み込むように凍結するため、期限設定の前段階で、実際の商品を使って品質の残り方を確認しやすくなります。

導入を検討する場合は、自社商品で凍結テストを行い、凍結後の包装と保管条件を決めたうえで保存試験に進みます。表示の細部は消費者庁または都道府県の食品表示窓口に、営業許可は管轄の保健所に確認してください。

凍結テストの結果は凍結直後の状態です。保存中の変化は保存試験で確かめてください。

3Dフリーザー®の庫内から急速冷凍した寿司トレーを取り出す様子
3Dフリーザー®から取り出した直後の寿司トレー

FAQ

よくある質問

冷凍商品の賞味期限は誰が決めますか。

表示責任者である製造業者、加工業者又は販売業者(輸入食品は輸入業者)が決めます。消費者庁のQ&Aでは、その食品を最も理解している者が、食品の特性、原材料の衛生状態、容器包装の形態、保存状態などを勘案して科学的・合理的に設定するとしています。根拠を持って設定し、説明する責任は表示責任者にあります。

急速冷凍機を導入すれば賞味期限を長く表示できますか。

導入だけで期限が決まることはありません。急速冷凍は氷結晶を小さくし、細胞破壊やドリップを抑えやすくするため、保存中の品質を守る土台になります。保管中の乾燥、酸化、温度変動は別に管理が必要で、表示に使う期限は実際の商品と包装で保存試験を行い、客観的な指標で判定した結果から設定します。

安全係数はいくつにすればよいですか。

一律の数値はありません。2025年3月改正の消費者庁ガイドラインでは、食品の特性に応じて安全係数は1に近づけ、差し引く日数は0に近づけることが望ましいとされ、従来の食品表示基準Q&A(平成27年)にあった「0.8以上を目安」は見直されました。ばらつきが少なく安全性が担保されている食品では考慮しないこともあり得ますが、微生物が増殖する可能性やばらつきが大きい食品には特性に応じた係数が必要です。

保存試験はどの温度で、どのくらいの期間行えばよいですか。

温度と期間は表示責任者が自ら設定します。日本冷凍食品協会の実施要領では、流通実態に応じた包装形態の製品を、−18℃や−23℃などで保管し、2か月または3か月ごとなどの試験区で3検体ずつ評価する方法が例示されています。期間は商品の想定に合わせて設計し、いずれかの項目で不適格となった試験区の前回までを保存可能期間とします。

保存試験の途中で包装や保存温度を変えた場合はどうなりますか。

条件が変わった試験結果は、変更後の商品の根拠として使えません。期限表示は定められた保存方法を前提にしているため、包装形態や保存温度を変えたときは、変更後の条件で改めて試験を行い、期限を設定し直します。流通段階で保存方法を変えた場合も、新たな期限を設定して表示し直します。

表示する保存温度と保存試験の温度は一致させる必要がありますか。

一致させてください。期限表示は表示した保存方法で保存した場合を前提にしているため、保存試験は表示する保存温度で行い、その温度を保存方法として表示します。日本冷凍食品協会の実施要領は−18℃や−23℃を例示しており、自社で設定した温度で試験を設計します。食品衛生法の保存基準(−15℃以下)と協会の自主基準(−18℃以下)の違いは、保管設備のページにあります。

出典

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導入ガイドの項目

  1. 導入ガイド
  2. 01 冷凍機と冷却機の違い
  3. 02 積載数と処理量
  4. 03 商品形態と製造工程
  5. 04 包装の種類と荷姿
  6. 05 保管設備と温度帯
  7. 06 賞味期限の設定
  8. 07 解凍設計と表示
  9. 08 販路と凍結条件
  10. 09 高付加価値の商品化
  11. 10 凍結時間の目安
  12. 11 解凍方法の種類
  13. 12 導入費用と補助金

最終更新: 2026年9月2日。数値は製品ページ、テスト記事、一次資料に基づきます。3Dフリーザー®、3D凍結®、ACVCS®は株式会社コガサンの登録商標です。

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