
毎年100万尾の稚鮎を育て、その90%を川へ放します。残りを養殖して、鮎料理を出す簗場(やなば)や料亭へ届ける漁業協同組合様には、長年の課題がありました。鮎は冷凍すると身質が変わり、出荷できる品質にならないのです。本記事では、市の要請で実施した実機テストから京都の料亭への出荷までの導入事例に加えて、鮎の身質が冷凍で変わる仕組みと、丸のまま凍らせても腹が裂けない理由まで解説します。
結論:鮎は3Dフリーザー®で身質を変えずに冷凍でき、京都の料亭出荷とブランド化につながった
冷凍すると身質が変わるため出荷を断念していた鮎が、3Dフリーザー®ラックインタイプの導入で、品質を保ったまま凍結できるようになりました。高品質の冷凍鮎により遠方への出荷体制が整い、京都の有名料亭からは、冷凍していない鮎と比べても身質に遜色がないと高い評価を受け、注文が今も続いています。導入の概要は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 導入企業 | 漁業協同組合様 |
| 対象食材 | 鮎 |
| 導入目的 | 鮮度維持、販路拡大、ブランド認知向上 |
| 導入機種 | 3Dフリーザー® ラックインタイプ |
| 導入の経緯 | 市の資源販売強化支援事業の一環で実機テストを行い、身質の変化の少なさを確認 |
導入の背景:年100万尾を育てる漁協と、冷凍で変わる鮎の身質
同漁協は毎年100万尾の稚鮎を中間育成し、90%を河川へ放流、残りを養殖しています。250〜300gまで育てた鮎の出荷先は、簗場や料亭です。鮮魚のままでは、届けられる範囲も時期も限られます。
市の資源販売強化支援事業の一環として、同漁協は鮎のブランド化による販路拡大事業を始めました。前提になるのは冷凍です。冷凍できれば出荷先も季節も広げられますが、これまでの冷凍では身質が変わってしまい、出荷できる品質になりませんでした。
なぜ鮎は、冷凍で身がやせ、腹が裂けてしまうのか
鮎の値打ちは、串を打って炭火で焼いたときのふっくらとした身と、わたのほのかな苦みにあります。冷凍でこの二つが損なわれる理由は、それぞれ別のところにあります。
身がやせるのは、氷の粒の育ち方によるものです。魚の身は細い繊維と、その間に抱えられた水分でできています。凍結に時間がかかると、水分は繊維のすき間で少しずつ大きな氷へ育ち、繊維を内側から押し壊してしまいます。壊れた繊維は解凍しても水分を抱え直せず、うま味ごと外へ流れ出します。

水分の抜けた身を焼けば、ふっくらとは仕上がりません。料亭が求める水準に届かなかった「身質の変化」の正体がこれです。氷が育つのは、身の温度が-1〜-5℃の帯を抜けきらない間で、ここで長く止まるほど粒は粗くなります。
腹が裂けるのは、また別の理由です。水は凍ると体積がわずかに増えます。ゆっくり凍らせると、魚の外側から順に固まり、まだ凍っていない内側の水分が逃げ場を失って押し合います。鮎の内臓を包む腹膜はごく薄いため、この押し合いに耐えきれずに破れることがあります。丸のまま凍らせた魚の見た目が崩れるのは、この現象によるものです。
3D凍結®が、鮎の身質を保ち、腹の裂けも防げる理由
凍結を速める装置は珍しくありませんが、多くは強く乾いた風で速さを得るため、身の繊細な川魚には向きません。
3Dフリーザー®では、高湿度の3D冷気がトレーの段のあいだまで行き渡り、魚を包み込みます。この凍らせ方が、二つの問題を同時に抑えます。
身がやせる問題への答えは、凍る速さです。氷が育つ温度帯を一気に通過するため、水分は大きな粒になる時間を与えられません。微細な粒のまま固まれば繊維は壊れず、解凍してもうま味と水分は身の中に残ります。実機テストで確かめられた「身質の変化が非常に少ない」という結果は、この仕組みがもたらしたものです。

一尾ごとの仕上がりをそろえるには、凍る速さが置き場所で変わらないことが必要です。ラックの手前に置いた魚と奥の魚とで冷気の通りが違うと、凍結の進み方に順番が生まれます。後回しになった位置では、氷は大きく歪な形にまで育ち、その角で身の繊維を裂きます。尾数の多い原魚をまとめて凍らせるほど、この差は仕上がりのばらつきとして表れます。冷気が段のあいだを抜けて全体に回れば、どの魚もほぼ同じ速さで凍り、粗い結晶の育つ場所がなくなります。本事例でも、均一な氷結晶が生成される点が評価されました。
腹の破れへの答えは、凍る順番の偏りをなくすことです。冷気が全方向から届くため、魚の外側と内側に大きな温度差が生まれません。凍る順番の偏りが小さければ、逃げ場を失った水分が一点を押す場面も起きにくくなります。丸のままでも内臓の破れがなく美しく凍ったという結果は、包み込む冷気ならではのものでした。内臓が破れなければ、わたのほのかな苦みも損なわれません。
高湿度であることも、川魚には重要です。海水魚に比べて脂の少ない鮎は、乾いた強風に当てれば表面から水分を奪われます。湿り気を保ったまま熱だけを奪う冷気だからこそ、皮の色つやも保たれます。尾数の多い原魚をまとめて入れても冷気が乾かないのは、冷却器への着霜を抑えるKOGASUN独自のACVCS®によるものです。凍らせ方による品質の分かれ目は急速冷凍と通常冷凍の違いで詳しく解説しています。
実機テスト:身質の変化が非常に少ないことを確認
市からの要請を受けて、3Dフリーザー®の実機テストを実施しました。結果は、身質の変化が非常に少ない仕上がりでした。「冷凍すると変わる」という長年の前提が、ここで崩れました。

川魚で初めての導入:丸のままでも美しく凍る
3Dフリーザー®は海水魚で多くの実績を持ちますが、川魚への導入はこの事例が初めてでした。テストの結果は海水魚と同様で、ドリップの流出はほとんどありませんでした。丸のまま凍らせても内臓の破れがなく、美しい状態で凍結できました。

実際の出荷では内臓処理をしてから凍結します。それでも、丸のまま美しく凍るという事実には実務上の意味があります。獲れた鮎を処理前の原魚のまま凍結してストックし、品質劣化を防ぎながら加工のタイミングを選べるからです。
導入機種:原魚をまとめて凍結できるラックインタイプ
導入機種は、3Dフリーザー®のラックインタイプです。トレーを並べたラックを台車ごと庫内へ入れる構造で、尾数の多い原魚の凍結をまとめて処理できます。急速冷却と急速凍結は1台で完結します。ラックイン・カートインからトンネル型まで、処理量や工程に応じたオーダーメイド設計にも対応します。構造と仕組みは3Dフリーザーの特徴で確認できます。

導入後の成果:料亭への出荷と、地域ぐるみの商品づくり
高品質の冷凍鮎が実現したことで、遠方への出荷体制が整いました。京都の料亭への出荷は、その体制が生んだ成果の第一歩です。さらに、高品質な鮎原料を確保できるようになり、地元の農業協同組合と連携し、「鮎の甘露煮」「うるか」などの加工・販売へ商品を広げています。導入前後の変化をまとめます。

| 観点 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 冷凍出荷 | 身質が変わるため断念 | 身質を保ったまま凍結し出荷 |
| 販路 | 簗場や料亭への鮮魚出荷 | 京都の有名料亭など遠方へ拡大 |
| 商品 | 生鮮の取り扱いが前提 | 甘露煮・うるかなど加工品へ展開 |
| 原料 | 鮮魚の時期に縛られる | 原魚凍結でストックし、加工に回せる |
魚介類のほかの実例は魚介類の導入事例一覧にまとまっています。
鮎を丸のまま凍らせ、身質とドリップの変化を測る:無料の凍結テスト
川魚と海水魚では、脂ののり方も身の水分量も違います。自社で扱う魚がどう仕上がるかは、KOGASUNの無料凍結テストで確かめるのが確実です。いつも出荷している状態の魚を持ち込めば、次の項目を比較できます。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 焼き上がり | 塩焼きにしたときに身がふっくら仕上がるかを実食で確かめる |
| 解凍後のドリップ | トレーにたまる量を、いつもの凍結品と同じ条件で比べる |
| 丸のままの姿 | 腹が裂けていないか、形が崩れていないかを見る |
| 皮の色つや | 乾いてくすんでいないか、生の状態と見比べる |
| 凍結工程の位置(原魚か下処理後か) | 原魚と下処理後の両方を凍らせ、どちらが自社に合うかを比べる |
凍結から解凍までを実機で行い、身質・ドリップ・見た目を導入前に比較できます。申し込みの流れは食品を持ち込める凍結テストをご覧ください。
鮎・川魚の冷凍でよくある質問
落ちるかどうかは凍らせ方で決まります。時間をかけた冷凍は身の繊維を壊し、うま味を水分ごと逃がします。3Dフリーザー®で微細な氷結晶のまま急速凍結すれば、塩焼きにしたときのふっくらとした身を保ちやすくなります。
凍らせ方しだいで防げます。ゆっくり凍ると外側から先に固まり、逃げ場を失った内側の水分が薄い腹の膜を押して破ります。全方向から均一に凍らせる3D凍結®なら、凍る順番の偏りが小さく抑えられます。本事例の実機テストでも、丸のまま凍らせて内臓の破れがなく美しく凍結できました。獲れた鮎を原魚のままストックし、加工の時期を選ぶ運用にも役立ちます。
本事例のように、自治体の支援事業がきっかけになることがあります。国の制度では、ものづくり補助金や中小企業省力化投資補助金が候補です。公募条件は回ごとに変わるため、KOGASUNの導入相談で最新情報をご確認ください。
川魚は脂が少なく表面が乾きやすい点が課題になりますが、凍結品質は魚種よりも設備の実力で決まります。3Dフリーザー®は海水魚で多くの実績を持ち、川魚への導入は本事例が初めてでしたが、結果は海水魚と同様にドリップの流出がほとんどない仕上がりでした。脂ののりや水分量は魚種ごとに違うため、最終判断は自社の魚での確認が確実です。
凍結前後の見た目、解凍後のドリップ量、身質、焼いたときの仕上がりを、3Dフリーザー®の実機と自社の魚そのもので確認できます。原魚と下処理後の両方を持ち込み、凍結工程をどこに置くかを比べる使い方もできます。
まとめ:身質を保つ冷凍が、鮎の販路を地域の外へ広げた
同漁協は、市の支援事業をきっかけに3Dフリーザー®ラックインタイプを導入し、「冷凍すると身質が変わる」という鮎の課題を解決しました。身がやせるのも腹が裂けるのも、凍る速さと凍る順番の問題です。京都の料亭への出荷、甘露煮やうるかへの商品展開と、販路は地域の外へ広がり続けています。魚の冷凍で同じ課題に向き合う漁協や水産加工の現場にとって、確かめる価値のある事例です。自社の魚がどう仕上がるかは、無料の凍結テストで導入前に確認できます。機種や設置のご相談は、以下からお問い合わせください。







