
食品加工の日々の業務で直面する課題の一つに、製品の品質維持と生産効率の向上があるのではないでしょうか。特に、業務用急速冷凍機の導入を検討されている中で、リキッド方式とエアブラスト方式という主要な2つの冷却方式の違いが分からず、どちらがご自身の工場や製品ラインに最適なのか判断に迷われているかもしれません。
本記事では、急速冷凍機が食品の品質をどのように守るのかという基本から、リキッド方式とエアブラスト方式の仕組み、それぞれのメリット・デメリットを掘り下げて解説します。凍結品質、初期・ランニングコスト、そして日々の運用面といった多角的な視点から両方式を徹底的に比較し、さらに近年注目されている「3Dフリーザー®」といった新しい選択肢もご紹介します。この記事をお読みいただくことで、貴社に最適な一台を選ぶための具体的な判断材料と、経営層を納得させるための情報が得られることをお約束します。
Contents
急速冷凍機とは?通常の冷凍との違いと導入のメリット

食品メーカーの生産現場において、急速冷凍機は品質維持と生産性向上の両面から注目されています。しかし、一言で「冷凍」といっても、ご家庭の冷凍庫で行う「緩慢冷凍」と業務用急速冷凍機による「急速冷凍」では、食品に与える影響が大きく異なります。この違いは、食品の品質を左右する非常に重要な要素です。
緩慢冷凍は、時間をかけてゆっくりと食品を凍らせるため、食品内部の水分が大きな氷結晶を形成しやすくなります。この大きな氷結晶が食品の細胞組織を物理的に破壊し、解凍時にドリップ(うま味成分を含んだ水分)として流出してしまう原因となるのです。結果として、食感の劣化、風味の損失、そして見た目の品質低下を招いてしまいます。
これに対し、業務用急速冷凍機は、非常に低い温度の環境下で食品を瞬時に凍結させます。これにより、食品内部の水分は細胞組織を破壊しない微細な氷結晶として均一に生成されます。この「最大氷結晶生成温度帯」と呼ばれる0℃から-5℃の範囲をいかに素早く通過させるかが、急速冷凍の最大の肝となります。
急速冷凍が食品の品質を保つ仕組み

急速冷凍が食品の品質を保つ上で最も重要なポイントは、「最大氷結晶生成温度帯」をいかに短時間で通過させるかにあります。この温度帯、具体的には約0℃から-5℃の間では、食品中の水分が凍り始め、最も大きな氷結晶が形成されやすいという特性を持っています。家庭用冷凍庫のような緩慢冷凍では、この温度帯を通過するのに時間がかかるため、水分がゆっくりと大きな氷の塊へと成長し、食品の細胞組織を突き破ってしまいます。
細胞が破壊されると、解凍時に細胞内の水分やうま味成分がドリップとして外部に流出してしまいます。これが、解凍した食品がパサついたり、味が落ちたりする原因となるのです。また、細胞が破壊されることで、元の食感が失われ、風味が大きく損なわれることにも繋がります。
一方、急速冷凍では、強力な冷気を食品に直接当てる、液体で包み込むといった方法により、最大氷結晶生成温度帯を非常に速い速度で通過させます。これにより、食品中の水分は細胞を傷つけないごく微細な氷結晶として一瞬のうちに生成されます。この微細な氷結晶は細胞壁を破壊しないため、食品の組織が保たれ、解凍時にもドリップの流出を極限まで抑えることができます。結果として、急速冷凍された食品は、解凍後も冷凍前の状態に近い食感、風味、色合いを維持し、作りたてに近い品質を提供することが可能になるのです。

なぜ今、業務用急速冷凍機が注目されるのか

現代の食品業界において、業務用急速冷凍機は単なる保存技術を超え、ビジネスを成長させるための戦略的ツールとしてその価値を高めています。その最大の理由は、食品の品質を維持したまま長期保存が可能になることで、多岐にわたるビジネスメリットが生まれるためです。
まず、急速冷凍機の導入は、フードロスの削減に大きく貢献します。食品の鮮度を長期間保てることで、製造過多による廃棄や、旬の時期を過ぎてからの販売機会損失を防ぐことができます。これにより、原材料の無駄をなくし、コスト削減に直結します。また、計画的な生産が可能となることで、繁忙期にまとめて製造し、閑散期に充当するといった平準化が図れ、従業員の労働環境改善や生産性の向上にも繋がります。
さらに、急速冷凍技術は、販路拡大と顧客満足度向上にも寄与します。冷凍することで遠隔地への配送が可能になり、これまで地理的な制約で届けられなかった消費者や店舗へ高品質の商品を供給できるようになります。ECサイトを通じた全国販売も容易になり、新たな市場を開拓できます。作りたてと変わらない品質の食品が全国どこでも手に入るようになることで、消費者からの評価も高まり、ブランド価値の向上にも繋がります。
急速冷凍機の主な2つの方式「リキッド方式」と「エアブラスト方式」

食品の品質を維持し、生産性を向上させる業務用急速冷凍機の導入を検討されている食品メーカーのご担当者様にとって、リキッド方式とエアブラスト方式のどちらが自社に最適かという判断は非常に重要です。このセクションでは、これから比較検討を進めるにあたり、業務用急速冷凍機における代表的な2つの凍結方式、すなわち「リキッド方式(液体凍結)」と「エアブラスト方式(空気凍結)」の基本的な原理をご紹介します。
それぞれの方式が、どのような媒体(液体または冷風)を使用して食品を凍結させるのか、その核心に触れることで、続くセクションでの詳細な特徴解説への理解を深めていただけます。これらの基礎知識が、最適な急速冷凍機選びのための確かな土台となるでしょう。
リキッド(液体)方式|アルコール液で高速凍結

リキッド方式は、食品を-30℃前後のアルコールブラインなどの液体に直接浸漬して凍結させる方法です。水よりも熱伝導率が高い液体を冷却媒体として利用するため、熱が食品から効率的に奪われ、高速な凍結を実現します。
この方式の最大のメリットは、凍結速度にあります。食品が最大氷結晶生成温度帯を高速に通過するため、食品細胞の破壊が最小限に抑えられ、解凍時のドリップ流出や食感、風味の劣化を効果的に防ぎます。また、液体が食品全体を均一に包み込むため、凍結ムラが発生しにくいという利点もあります。
一方で、デメリットも存在します。液体に直接触れるため、原則として食品は必ず真空パックなどの包装を施す必要があります。また、アルコール液が食品に付着する可能性も考慮しなければなりません。さらに、アルコール液の蒸発や飛散による補充コスト、濃度管理、定期的な清掃など、液体の維持管理に手間とコストがかかる点も運用上の注意点です。そのため、高付加価値な食材やドリップを極限まで抑えたい製品、あるいは比較的包装済みの製品を多く扱うラインに適しています。
エアブラスト(空気)方式|冷風で多用途に対応

エアブラスト方式は、-30℃から-40℃といった強力な冷風を食品に吹き付けて凍結させる方法です。この方式は、高速な空気の流れによって食品表面の熱を効率的に奪い、食品の中心部まで冷気を送り込むことで凍結を促進します。
この方式の大きなメリットは、その汎用性の高さにあります。肉や魚のブロックから、パンやケーキ、惣菜、カット野菜など、多種多様な食材に対応できるため、幅広い食品加工現場で導入されています。特に、包装されていない食材を個別に凍結させる「バラ凍結(IQF: Individual Quick Freezing)」が可能である点は、生産効率の向上や製品の利便性向上に大きく貢献します。また、冷風を媒体とするため、リキッド方式に比べてランニングコストが比較的低い傾向にあります。
しかし、エアブラスト方式にはいくつかのデメリットも存在します。リキッド方式と比較すると凍結速度は遅くなる傾向があり、食品の表面から水分が奪われやすいという「乾燥(目減り)」のリスクがあります。これは、冷風が食品表面の水分を昇華させることで、製品の重量減少や品質劣化に繋がる可能性があるため、対策が必要です。多品種少量生産やバラ凍結を多用する現場、あるいは包装なしで凍結したい食品が多い場合に適していると言えるでしょう。
【徹底比較】リキッド方式 vs エアブラスト方式 6つの違い
急速冷凍機の導入を検討されている食品メーカーのご担当者様にとって、リキッド方式とエアブラスト方式のどちらが自社に最適かを見極めることは、非常に重要な課題ではないでしょうか。ここからは、両方式を判断する上で不可欠な「品質」「コスト」「運用」という3つの観点から、それぞれの方式が持つ具体的な違いを6つのポイントに絞り込み、徹底的に比較していきます。
ご自身の生産ラインや冷凍したい食材、そして将来的な事業戦略と照らし合わせながら、最適な一台を選ぶための具体的な判断材料として、ぜひ参考にしてください。
比較ポイント1:凍結速度と品質
急速冷凍機の性能を測る上で最も重要な要素の一つが「凍結速度」です。一般的に、熱伝導率が空気の約20倍とされる液体を媒体とするリキッド方式は、食材の中心部まで熱を奪うスピードが非常に速いという特徴があります。この圧倒的な凍結速度は、食品の細胞組織の破壊を最小限に抑え、解凍時のドリップ流出を極限まで抑制することに貢献します。特に、水分含有量が多い鮮魚や、高価な肉、繊細な寿司ネタといった高級食材において、リキッド方式はその真価を発揮し、獲れたてや作りたてに近い高品質を保つことが可能です。
一方、冷風を媒体とするエアブラスト方式は、リキッド方式に比べて凍結速度が緩やかになる傾向があります。しかし、近年では送風技術や冷却効率の向上により、最大氷結晶生成温度帯を短時間で通過できる高性能なエアブラスト方式も登場しています。そのため、一概にエアブラスト方式の品質が劣るとは言えません。むしろ、食材の種類や形状、求める品質レベルによっては、エアブラスト方式でも十分に高品質な凍結が実現できる場合が多く、単純な凍結速度の数値だけで優劣を判断するのではなく、実際に凍結後の品質を評価することが重要です。
比較ポイント2:導入コスト(初期費用)
急速冷凍機の導入において、初期費用は経営判断に大きく影響する要素です。一般的に、同程度の処理能力を持つ機種を比較した場合、エアブラスト方式の方がリキッド方式よりも安価に導入できる傾向にあります。これは、リキッド方式がアルコールブラインなどの特殊な液体を使用し、液体の管理システムや、液漏れ防止、安全対策のための追加設備が必要となることが多いためです。
ただし、急速冷凍機の価格は、凍結能力(1時間あたりに凍結できる食品の量)、本体サイズ、搭載されている機能、そして付帯する搬送システムや予冷・予熱設備などによって大きく変動します。例えば、小型の卓上タイプであれば数百万円から導入可能ですが、大規模な生産ラインに組み込むトンネルフリーザーのような大型機では数千万円を超えることも珍しくありません。そのため、具体的な導入費用については、複数のメーカーから見積もりを取り、自社のニーズに合った機種で比較検討することが不可欠です。
比較ポイント3:ランニングコスト
急速冷凍機を導入した後、日々の運転にかかるランニングコストも長期的な視点で考慮すべき重要なポイントです。エアブラスト方式の主なランニングコストは、冷却に必要な電気代が中心となります。近年の機種は省エネ性能も向上しており、1時間あたりの電気代は比較的安価に抑えられる傾向にあります。
これに対し、リキッド方式では電気代に加えて、アルコールブラインなどの凍結液に関するコストが発生します。運用中に蒸発や飛散、食材への付着などにより凍結液が減少するため、定期的な補充が必要です。この凍結液自体の費用に加え、液の濃度管理や衛生的な状態を保つための濾過・交換作業、そして定期的な清掃にかかる人件費などもランニングコストとして計上する必要があります。したがって、リキッド方式を検討する際は、初期費用だけでなく、これらの液体管理にかかる手間と費用を含めたトータルコストで評価することが肝心です。
比較ポイント4:得意な食材・苦手な食材
急速冷凍機を選ぶ際、自社が冷凍したい食材との相性は最も重要な判断基準の一つと言えるでしょう。リキッド方式は、液体に直接浸漬することで急速凍結するため、真空パックされた肉や魚のブロック、カレーやスープなどの液体状の食品など、形状が比較的単純で、水分の多い食材の凍結に非常に高い効果を発揮します。食材全体を均一に冷やせるため、凍結ムラが少ないのも特徴です。
一方、エアブラスト方式は、強力な冷風を吹き付けることで凍結するため、多種多様な食材に対応できる汎用性の高さが最大の強みです。パンやケーキ、調理済みの惣菜、カット野菜や果物など、形状が複雑なものや液体に触れさせたくない製品、あるいは一つずつバラバラに凍結したいIQF(Individual Quick Freezing)製品に特に適しています。例えば、冷凍のまま袋詰めして販売するフローズンフルーツや冷凍野菜などは、エアブラスト方式が適しています。したがって、自社の製品ラインナップと将来的な展開を考慮し、どの方式が最も幅広いニーズに対応できるかを検討することが重要です。
比較ポイント5:設置スペースと安全性
急速冷凍機の導入を検討する際には、工場内の設置スペースと、安全に運用できるかどうかの確認も不可欠です。リキッド方式の機種は、比較的コンパクトな設計のものが多く、限られたスペースにも導入しやすいというメリットがあります。しかし、アルコールブラインなどの可燃性の液体を使用する機種の場合、消防法に定められた設置基準をクリアする必要があり、適切な換気設備や消火設備の設置、防火区画の確保などが求められることがあります。これにより、導入計画が複雑になったり、追加の費用が発生したりする可能性も考慮しておく必要があります。
対してエアブラスト方式の急速冷凍機は、冷却能力や処理量によっては大型の装置となる傾向があり、十分な設置スペースの確保が必要です。特にトンネルフリーザーのような大型機は、搬入経路や工場のレイアウトを綿密に計画する必要があります。しかし、可燃性の液体を使用しないため、安全性に関する法的な制約はリキッド方式に比べて少なく、比較的自由に設置しやすいという利点があります。現場のスペース的な制約と、安全運用に関する社内規定や法的要件を事前に十分に確認し、適切な方式を選択することが重要です。
比較ポイント6:メンテナンス性
急速冷凍機は導入後の長期的な運用を視野に入れるため、メンテナンスのしやすさも重要な選定基準となります。リキッド方式の場合、凍結液の衛生管理が特に重要になります。定期的に液の濃度を測定・調整したり、異物混入を防ぐための濾過作業を行ったり、時には凍結液そのものを交換したりといった手間が発生します。これらは専門的な知識や技術を要する場合もあり、メンテナンスにかかる時間と人件費も考慮に入れる必要があります。
一方、エアブラスト方式の急速冷凍機は、定期的な霜取り(デフロスト)作業と、庫内や冷却フィンの清掃が主なメンテナンスとなります。特に、冷却フィンに付着した霜は効率低下の原因となるため、定期的なデフロストは欠かせません。しかし、凍結液の管理のような複雑な作業は少なく、比較的日々の運用におけるメンテナンスは容易と言えるでしょう。現場の作業負荷や、メンテナンス担当者の育成コストなども含めて、長期的な運用コストとして評価することが大切ですいです。
第3の選択肢:3Dフリーザー®(3D凍結®)とは?エアブラストの弱点にどう向き合うか

これまでリキッド方式とエアブラスト方式の二つの主要な急速冷凍方式について詳しく見てきましたが、食品メーカーの皆様が抱える課題は多岐にわたります。特にエアブラスト方式は汎用性が高い一方で、「乾燥による品質劣化や目減り」という共通の懸念点があります。この課題を克服し、リキッド方式を超える高品質な凍結を、エアブラスト方式の利点を維持しながら実現する新しい選択肢として注目されているのが「3Dフリーザー®」です。
3Dフリーザー®は、単に冷風を吹き付けるだけでなく、特許技術ACVCS技術を用いることで、従来のエアブラスト方式では難しかった乾燥抑制と高品質な凍結を両立させます。これにより、どちらの方式を選ぶべきか悩んでいた皆様に、新たな解決策を提供し、製品の付加価値向上と歩留まり改善に貢献できる可能性を秘めています。
高湿度3D冷気で乾燥(目減り)とドリップを抑え、高品質を安定化

3Dフリーザー®の最大の技術的優位性は、その独特な「3D冷気」の生成方法にあります。従来のエアブラスト方式では、冷却器(フィン)を通して冷風を生成するため、冷風が乾燥しやすく、これが食品の表面から水分を奪い、乾燥や目減りの原因となっていました。しかし、3Dフリーザー®はフィンを介さずに庫内全体を包み込むように冷気を対流させることで、高湿度を保ったまま食品を凍結させることが可能です。
この高湿度な3D冷気は、食品表面からの水分蒸発を極限まで抑制します。結果として、凍結時における食品の目減りを大幅に削減でき、歩留まりの向上に直結します。例えば、水分量の多い精肉や魚介類、あるいはデリケートなケーキや惣菜などでも、凍結前と変わらない重量と瑞々しさを保つことが期待できます。
さらに、高湿度下での急速凍結は、食品内部の氷結晶を微細かつ均一に生成するため、解凍時のドリップ流出も抑制します。ドリップは食品の風味や栄養素、うま味成分を一緒に流出させてしまうため、これを抑えることは食品の品質維持において非常に重要です。3Dフリーザー®は、乾燥とドリップという二つの品質劣化要因に同時にアプローチすることで、解凍後も「作りたて」に近い高品質を安定的に供給することを可能にします。
向いている商材・向いている運用(多品目/解凍後提供/歩留まり重視)

3Dフリーザー®はその特性から、乾燥を嫌うデリケートな製品、例えばケーキや和菓子、調理済み惣菜、さらにはパンなど、見た目や食感が重要な商品に最適です。表面のパサつきやひび割れを防ぎ、しっとりとした状態を保ったまま冷凍保存が可能になります。
次に、多品種少量生産を行っており、1台の冷凍機で様々な食材を扱いたい場合にも3Dフリーザー®は有効です。汎用性の高いエアブラスト方式の利点を引き継ぎつつ、品質面での妥協を最小限に抑えることができます。また、レストランやセントラルキッチンなど、解凍後の品質が顧客満足度に直結する業態では、ドリップの少なさや風味の保持が顧客のリピート率向上に貢献するでしょう。
さらに、原料コストが高く、少しの目減りも利益に響くため歩留まりを最重視する場合にも3Dフリーザー®は有力な選択肢となります。凍結時の目減り抑制によるコスト削減効果は、特に高価な食材を扱う事業者にとって、無視できないメリットです。このように、3Dフリーザー®は品質、コスト、運用の三つの側面から、幅広い食品ビジネスの課題解決に貢献できる可能性を秘めているのです。

自社に最適な急速冷凍機を選ぶ4つのステップ
急速冷凍機の導入は、単なる設備投資ではなく、事業の品質向上や生産性改善、新たな販路開拓を実現するための戦略的な一手となりえます。しかし、リキッド方式とエアブラスト方式、さらには高機能な3Dフリーザーなど、多様な選択肢の中から自社に最適な一台を見極めるのは容易ではありません。
このセクションでは、これまでご紹介してきた各方式の特性やメリット・デメリットを踏まえ、貴社が最適な急速冷凍機を選定し、導入を成功させるための具体的な4つのステップをご紹介します。これらのステップに沿って検討を進めることで、導入の目的を明確にし、社内の合意形成を図りながら、後悔のない設備投資へと繋げることができるでしょう。
Step1: 導入目的(品質・生産性など)と冷凍する食材を明確にする

急速冷凍機選定の最初のステップは、導入の目的を明確にすることです。単に「冷凍機が欲しい」という漠然としたニーズではなく、「新商品の開発で冷凍保存を可能にしたい」「既存商品の解凍時のドリップを減らしたい」「生産ラインの効率を上げて残業時間を削減したい」「ECサイトでの販路を拡大し、遠隔地にも高品質な製品を届けたい」といった“狙い”を具体的に整理します。
次に、その目的達成のために「何を」「どのように」冷凍するのか、対象となる食材を具体的に洗い出します。食材の特性、たとえば水分量が多い肉や魚、形状が複雑な調理済み惣菜、乾燥を避けたいパンやケーキなど、それぞれに適した凍結方式が異なります。また、ブロック凍結するのか、バラ凍結(IQF)が必要なのかといった冷凍形態も重要な検討事項です。これらの前提条件を揃えておくことが、後続のステップで適切な方式や機種を選定するための確かな土台になります。
Step2: 予算(初期・ランニング)と設置場所の条件を確認する

導入の目的と対象食材が明確になったら、次に現実的な制約条件を確認します。まずは、設備投資に充てられる初期費用の予算上限を設定しましょう。急速冷凍機は機種や能力によって数百万円から数千万円と幅広い価格帯があります。同時に、導入後の電気代、消耗品(リキッド方式であればアルコール液など)、メンテナンス費用といった長期的なランニングコストについても、許容できる範囲を把握しておくことが重要です。
また、設置場所の確認も必須です。工場内のどこに設置するのか、そのスペースの寸法は十分に確保できるか、必要な電源容量は確保されているか、搬入経路に問題はないかなどを事前に確認しておきましょう。特にリキッド方式の場合、可燃物であるアルコールを使用するため、消防法に基づく設置基準や換気設備、消火設備の設置も考慮に入れる必要があります。現場の制約条件を洗い出すことで、選定できる機種が絞り込まれ、無駄のない検討が可能になります。
Step3: 【重要】凍結テストで品質・歩留まりを実証する

急速冷凍機選定において最も重要なステップは、実際の食材を用いた「凍結テスト」を行うことです。カタログスペックや他社の事例だけでは、自社製品での凍結品質を正確に判断することはできません。選定候補となるメーカーに依頼し、実際に貴社の製品をテスト凍結してもらいましょう。
テストでは、凍結後の品質(食感、風味、色、ドリップ量など)を多角的に評価し、解凍後の状態も必ず確認してください。さらに、凍結前後の重量変化(歩留まり)も重要な指標です。これらの実証データは、機種選定の客観的な根拠となるだけでなく、社内での合意形成や経営層への稟議を通す際の強力な材料となります。凍結テストを実施し、その結果を詳細に説明してくれるメーカーを選ぶことを強くお勧めします。
Step4: メーカーのサポート体制や導入実績を比較する

最終的な機種選定の段階では、機器の性能や価格だけでなく、メーカーのサポート体制も重要な比較検討項目となります。急速冷凍機は導入して終わりではなく、長期にわたって安定稼働させるための運用やメンテナンスが不可欠だからです。
具体的には、設置工事の対応範囲、導入後の操作トレーニング、万が一のトラブル発生時の対応スピード、定期的なメンテナンスメニューの有無などを確認しましょう。手厚いサポート体制が整っているメーカーであれば、導入後も安心して運用を続けることができます。また、自社と同業種や同規模の企業への導入実績が豊富であるかどうかも、メーカーの信頼性を判断する上で参考になります。実績のあるメーカーであれば、貴社の抱える課題に対する理解も深く、より的確な提案やサポートが期待できるでしょう。
急速冷凍機の導入事例
ここからは、急速冷凍機の導入によって実際にどのような課題が解決され、どのような成果が生まれたのかを、方式別に具体的な事例としてご紹介します。ご自身の状況と近い事例を見つけることで、導入後のイメージをより具体的に描いていただくことができます。
魚介・寿司の導入事例: “シャリがそのまま”で全国へ(通販・販路拡大)

寿司や刺身は、冷凍の難易度が高い代表格です。酢飯は冷凍で白くなり(白蝋化)やすく、ネタは解凍時のドリップが価値を左右します。福岡県久留米市の鮮魚店(魚政)様は、全国発送を目指す中でこの壁に直面していましたが、3Dフリーザー®で「酢飯の乾燥を抑え、ネタの瑞々しさを保つ」冷凍品質を実現。
ギフト需要の高い「デコ寿司」を、冷凍で全国へ届けられる体制を作りました。さらに、水揚げ量に左右される魚介を旬のときにまとめて加工・冷凍できるようになり、ロス削減と利益率改善、商品ラインナップ拡充にもつながっています。
米飯・惣菜の導入事例: 計画生産で「早朝労働」と「廃棄ロス」を同時に解消

米飯系(お弁当・寿司・海苔巻き)は、冷凍するとご飯がパサつきやすく、商品化が難しいアイテムです。
楽天市場で人気の「冷凍キンパ」を手掛けるアゴラキッチン様は、日持ちしないことによる廃棄ロスと、当日製造前提の早朝出勤の負担に悩んでいました。
3Dフリーザー®導入後は、冷凍ストックによって前日や日中の空き時間に製造→必要分を出荷という計画生産に切り替え。結果として、早朝労働の負担が下がり、廃棄も抑制。しかも、ご飯の白蝋化やパサつきの課題に対して、「もちもち感が残る」品質を実現し、評価(口コミ)にもつながっています。
麺類の導入事例: “茹でたて熱々”のまま冷凍して、生産効率と品質を両立

麺は乾燥や食感変化が起きやすく、「冷凍=味が落ちる」という先入観が強い分、品質差がそのまま差別化になります。老舗製麺所・山和製麺様は、「打ちたて・茹でたて品質を遠方へ届けたい」という狙いで導入。従来の冷凍では乾燥や工程負担が課題でした。
3Dフリーザー®導入後は、予冷の手間なく“茹で上げ直後の熱々”の状態で投入でき、約40分で芯まで冷凍。ラインを止めずに回せるため、生産効率が上がりつつ、解凍後もコシ・瑞々しさを維持し、全国への販路拡大につながっています。
ホテル・外販の導入事例: “ホテルの味”をそのまま通販し、新規事業の柱に

千草ホテル様はコロナ禍を機に外販(冷凍惣菜・スイーツ)を強化する中で、解凍時の味・食感劣化や、大量調理と長期保存の両立が課題でした。3Dフリーザー®のテストで「冷凍前後で劣化に気づかないレベル」を確認できたことが決め手となり、導入後は通販で全国へ、さらに食品ロス削減と計画生産にもつながっています。

創業110年の老舗・千草ホテルが急速冷凍機「3Dフリーザー」を導入。ホテルの繊細な料理を品質そのままに全国通販へ!コロナ禍のピンチをチャンスに変え、商圏拡大と食品ロス削減に成功した導入事例をご紹介します。
気になる導入コストと補助金活用術
急速冷凍機の導入は、製品の品質向上や生産性改善に直結するため、食品メーカーにとって非常に魅力的な投資です。しかし、導入にあたっては、そのコストが大きな懸念材料となることでしょう。このセクションでは、急速冷凍機の価格相場や費用対効果の考え方、さらに初期投資の負担を軽減するための公的な補助金制度について詳しく解説します。自社の予算計画を立て、経営層を納得させるための実用的な情報を提供することで、導入検討をスムーズに進める手助けをいたします。
急速冷凍機の価格相場と費用対効果

業務用急速冷凍機の価格は、凍結能力(1時間あたりの処理量)や採用されている凍結方式、機器のサイズやオプション機能によって大きく変動します。例えば、比較的小型の機器であれば数百万円から導入可能ですが、大規模な生産ラインに対応するトンネルフリーザー、スパイラルフリーザーのような大型機になると、数千万円以上の投資が必要になるケースも少なくありません。
導入を検討する際には、単に初期費用だけを見るのではなく、その機器がもたらす長期的な費用対効果(ROI)を算出することが極めて重要です。急速冷凍機の導入によって、「廃棄ロスの削減」「人件費の削減」「新商品開発による売上向上」「販路拡大」といった様々なメリットが期待できます。これらの効果を金額に換算し、初期投資額に対して何年で費用を回収できるのかを具体的に試算することで、投資の正当性を経営層に示すことができます。多くの企業では、急速冷凍機の導入費用を2年以内に回収できているというデータもあり、長期的視点で見れば非常にコストパフォーマンスの高い投資と言えるでしょう。
導入コストを抑える「ものづくり補助金」などの活用

高額な急速冷凍機の導入コストは、特に中小企業にとって大きな負担となりがちです。しかし、国や地方自治体は、企業の生産性向上や革新的な取り組みを支援するための様々な補助金制度を提供しています。中でも「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」は、急速冷凍機のような生産設備への投資を強力に後押しする制度として広く活用されています。
ものづくり補助金は、革新的な製品開発やサービス提供、または生産プロセス改善のための設備投資の一部を補助するものであり、急速冷凍機の導入がこれらに該当する場合、補助対象となる可能性が高いです。補助金が適用されれば、初期投資の負担を大幅に軽減できるため、より高性能な機種の導入や、複数の設備導入も視野に入れることができるでしょう。多くの急速冷凍機メーカーや販売代理店では、補助金申請のサポートも行っていますので、積極的に相談してみることをお勧めします。自社だけで複雑な申請手続きを進めるよりも、専門家の知見を借りることで、採択の可能性を高めることができます。
急速冷凍機に関するよくある質問
急速冷凍機の導入を検討する際、さまざまな疑問が浮かぶことと思います。ここでは、これまでの記事内容で触れきれなかった点や、多くの方が疑問に感じるであろう点について、Q&A形式で解説していきます。具体的な疑問を解消し、最適な急速冷凍機選びの一助となれば幸いです。
「急速冷凍機」「瞬間冷凍機」「ショックフリーザー」といった用語は、食品を素早く凍結させる機械を指す言葉として、しばしば同義語のように使われます。基本的にこれらは、食品の品質を維持しながら凍結を行うという目的において共通しています。
しかし、厳密にはメーカーや業界によって若干のニュアンスが異なる場合があります。「瞬間冷凍機」は、極めて短時間で凍結が完了するという、速度を強調する際に用いられることがあります。また「ショックフリーザー」は、特にヨーロッパ製の調理済み食品冷却・凍結機を指すケースが多く見られます。これは、調理直後の食品を衛生的に素早く冷却・凍結させることで、食中毒菌の増殖を抑え、食品安全性を高める役割も担っています。どの用語が使われるかは、その機械の主な用途や技術的な特性、あるいは販売戦略によって変わることがありますが、本質的には同じ急速凍結技術を指していると理解していただいて問題ありません。
これまでリキッド(液体)方式やエアブラスト(空気)方式を主に説明してきましたが、急速冷凍には液体窒素や炭酸ガスを噴射する「ガス方式」も存在します。
ガス方式は、液体窒素の-196℃という超低温や炭酸ガスの急激な冷却効果を利用するため、極めて速い凍結が可能です。この圧倒的な凍結速度は、非常にデリケートな食材や、ドリップや細胞破壊を極限まで抑えたい高付加価値な製品の凍結に適していると言えます。
しかし、最大の課題はランニングコストの高さです。液体窒素や炭酸ガスは高価であり、継続的に消費されるため、運用コストが他の方式と比較して大幅に高くなります。このため、ガス方式は一般的な食品加工現場で幅広く導入されることは少なく、主に研究用途や、ごく一部の超高付加価値な食材、または一時的な少量生産などに限定的に用いられる傾向にあります。
高額な設備投資となる急速冷凍機は、初期費用が大きなハードルとなることがあります。このような課題に対応するため、多くの急速冷凍機メーカーや販売代理店では、リース契約やレンタルプランを提供しています。
リース契約の最大のメリットは、まとまった初期費用が不要で、月々の定額支払いで最新の急速冷凍機を導入できる点です。設備はリース会社の所有となるため、固定資産税の負担がなく、経理処理も簡素化される利点があります。一方、レンタルはリースよりも短期間の契約が可能で、食品の繁忙期に一時的に凍結能力を増強したい場合や、本格導入前に効果を検証するためのお試しとして活用できる点が魅力です。どちらの方式も、資金計画に合わせて柔軟な導入を可能にし、導入検討の選択肢を広げる有効な手段と言えるでしょう。
まとめ:自社の目的に合った急速冷凍機を選び、事業を成長へ
本記事では、食品の品質保持と生産性向上に不可欠な急速冷凍機について、リキッド方式とエアブラスト方式という主要な2つのタイプを中心に、その仕組み、メリット・デメリット、そして比較ポイントを詳しく解説しました。どちらの方式も一長一短があり、一概にどちらが優れていると言い切ることはできません。
最も重要なのは、お客様自身の「導入目的」を明確にすることです。どのような食材を冷凍したいのか、どの程度の凍結品質を求めるのか、初期投資とランニングコストのバランスをどう考えるのか、そして日々の運用体制をどのように構築したいのかを具体的に検討することが、最適な一台を見つけるための第一歩となります。
貴社の課題に合わせた最適な急速冷凍ソリューションをご提案します
この記事を通じて急速冷凍機に興味を持たれたものの、「どの冷凍機が自社の製品に最適なのか」「具体的な投資対効果はどれくらいになるのか」「まずは自社製品でテストをしてみたい」といった疑問やご要望をお持ちではありませんか?貴社の製品や生産規模、目指すビジネスモデルに合わせて、最適な機種の選定から導入後の運用サポートまで、一貫して支援させていただきます。
まずはお客様の現状を詳しくお伺いし、具体的なシミュレーションや、凍結テストの機会をご提供することも可能です。カタログだけでは分からない、実際の品質変化や導入効果を、ぜひご自身の目でお確かめください。急速冷凍機の導入は、貴社の事業を次のステージへと押し上げる強力な一手となるでしょう。まずはお気軽にお問い合わせフォームまたはお電話にてご連絡ください。貴社からのお問い合わせを心よりお待ちしております。







