
トンネル型フリーザーは食品工場の生産性を飛躍的に向上させる一方、そのランニングコスト、特に電気代は経営上の大きな課題となり得ます。24時間稼働も珍しくないフリーザーは、工場全体の消費電力の中でも大きな割合を占めるためです。
「毎月の電気代の請求額に頭を悩ませている」「CO2排出量を削減し、環境経営にも取り組みたい」「最新の省エネ技術にはどんなものがあるのか知りたい」
このような課題意識をお持ちの経営者様、工場長様、設備担当者様は多いのではないでしょうか。
この記事では、トンネル型フリーザーのランニングコストを削減するための具体的な省エネ技術と、日々の運用で実践できるノウハウを、ハード(技術)とソフト(運用)の両面から徹底的に解説します。最新の省エネ技術を搭載したフリーザーを選ぶことはもちろん、今お使いのフリーザーでも実践できるコスト削減のヒントが満載です。
この記事を読めば、電気代を削減し、収益性を改善し、さらには環境負荷の低減にも貢献するための具体的な道筋が見えてきます。
フリーザーの価格や導入コストについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶ トンネル型フリーザー完全ガイド|仕組み・価格・選び方から17の疑問に答えます
Contents
なぜフリーザーは電力を大量に消費するのか?
まず、トンネル型フリーザーのどこで電力が消費されているのかを理解しましょう。主な電力消費源は以下の3つです。
1.冷凍機(コンプレッサー): 冷媒を圧縮し、気化熱を利用して冷気を作り出す、フリーザーの心臓部です。最も多くの電力を消費します。
2.ファンモーター: 作られた冷気を庫内に循環させ、食品に吹き付けるためのファンを動かします。これも大きな電力消費源です。
3.デフロストヒーター: 冷却器(クーラー)に付着した霜を溶かすためのヒーターです。定期的に作動し、電力を消費します。
省エネとは、これら3つの要素の電力消費をいかに効率化するか、という取り組みに他なりません。
【ハード編】省エネを実現する4つのキーテクノロジー
フリーザー自体の省エネ性能は、導入する機械の技術仕様によって大きく左右されます。ここでは、ランニングコストを劇的に削減する4つの重要な技術をご紹介します。
1. インバータ制御(コンプレッサー&ファン)
インバータは、モーターの回転数を自在に制御する技術です。これを冷凍機のコンプレッサーやファンモーターに搭載することで、生産量や負荷状況に応じて出力を最適化し、無駄な電力消費を徹底的に排除します。
•従来のON/OFF制御: 常に100%のフルパワーで稼働し、設定温度になると停止、温度が上がると再びフルパワーで稼働、という運転を繰り返します。このON/OFFの繰り返しは、大きな電力ロスを生みます。
•インバータ制御: 常に最適な出力(例: 30%~80%)で連続的に運転します。これにより、ON/OFF制御に比べて30%以上の省エネ効果が期待できるケースもあります。
2. 高効率な冷凍機
フリーザーの心臓部である冷凍機自体の効率も、省エネ性能を大きく左右します。最新の冷凍機は、高効率なコンプレッサーの採用や制御の最適化により、従来型に比べて大幅にエネルギー消費効率(COP)が向上しています。
3. ダクトレス構造
従来のフリーザーは、庫内に冷気を送るための「ダクト」がありましたが、このダクトが空気抵抗となり、ファンモーターの負荷を増大させる一因となっていました。
ダクトレス構造は、このダクトをなくし、庫内の空気の流れを最適化することで、ファンモーターの消費電力を大幅に削減します。また、ダクトがないことで庫内構造がシンプルになり、洗浄性が向上するというメリットもあります。
ダクトレス構造の洗浄性については、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶ トンネル型フリーザーの洗浄・衛生管理マニュアル|HACCP対応の実践ガイド
4. 高性能断熱パネル
フリーザーの省エネは、「いかに効率よく冷やすか」と同時に、「いかに外部からの熱の侵入(熱侵入)を防ぐか」が重要です。庫内の壁や天井、床に使われる断熱パネルの性能が低いと、外部の熱が庫内に伝わり、それを打ち消すために余計な冷却エネルギーが必要になります。
厚みがあり、断熱性能の高い硬質ウレタンフォームなどを使用したパネルを選ぶことが、ランニングコストの削減に直結します。
【ソフト編】日々の運用で実践できる3つの省エネ術
最新の省エネフリーザーを導入しなくても、日々の運用方法を見直すだけで、ランニングコストは削減できます。
1. 適切な運転計画
フリーザーは、起動時に最も多くのエネルギーを消費します。そのため、少量生産のために頻繁に起動・停止を繰り返すのは非効率です。可能な限り生産計画をまとめ、一度起動したら連続して長時間運転する方が、トータルの消費電力を抑えられます。
2. 計画的なメンテナンス
メンテナンスは、省エネの観点からも非常に重要です。
•冷却器の霜取り(デフロスト): 冷却器のフィンに霜が厚く付着すると、熱交換率が著しく低下し、冷却効率が悪化します。適切なタイミングと時間でデフロストを行うことが重要です。
•冷却器の清掃: フィンに汚れや油が付着しても同様に効率が落ちます。定期的な清掃を心がけましょう。
•冷媒の管理: 冷媒が漏れて量が減ると、冷却能力が低下し、コンプレッサーに余計な負荷がかかります。定期的な点検で、適正量を維持しましょう。
メンテナンスの具体的な方法については、こちらの完全ガイドをご覧ください。
▶ トンネル型フリーザーのメンテナンス完全ガイド|点検・保守・トラブル対応
3. 投入品温の管理
フリーザーに入れる食品の温度(投入品温)は、消費電力に直接影響します。例えば、90℃の調理済み食品をそのまま投入するのと、30℃まで予冷してから投入するのとでは、フリーザーが奪わなければならない熱量が大きく異なります。
可能な限り、フリーザーに入れる前に製品の粗熱を取る工程を設けることで、フリーザーの負荷を軽減し、消費電力を削減できます。
まとめ:省エネは、コスト削減と環境貢献の両立
トンネル型フリーザーのランニングコスト削減は、一朝一夕に実現できるものではありません。しかし、最新の省エネ技術(ハード)と、日々の効率的な運用(ソフト)を組み合わせることで、着実に成果を出すことができます。
【省エネ実現の7つの方法】
1.インバータ制御で無駄な電力をカット
2.高効率冷凍機で心臓部の性能を上げる
3.ダクトレス構造でファンの負荷を減らす
4.高性能断熱パネルで熱の侵入を防ぐ
5.適切な運転計画で起動エネルギーを削減
6.計画的なメンテナンスで冷却効率を維持
7.投入品温の管理でフリーザーの負荷を軽減
省エネへの取り組みは、電気代という直接的なコストを削減するだけでなく、CO2排出量を削減し、企業の社会的責任(CSR)やSDGsへの貢献にも繋がります。それは、企業のブランドイメージ向上にも寄与する、未来への投資です。
KOGASUNでは、インバータ制御やダクトレス構造などを標準採用した省エネ性能を誇るトンネル型フリーザーをご提案しています。お客様の現在のランニングコストを分析し、導入によってどの程度のコスト削減が見込めるかのシミュレーションも可能です。
フリーザーの電気代にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
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