冷凍保存した食材は、解凍方法によって味わいや食感が大きく変わります。特に急速冷凍した食材の場合、鮮度やうまみをしっかり閉じ込めているため、適切な解凍を行えば、冷凍前に近いおいしさを楽しむことができます。しかし、解凍にはいくつかの種類があり、食品の性質や冷凍前の状態によって異なります。解凍方法を誤ると、せっかくのおいしい状態が損なわれてしまうこともあるため、どの方法が最適かを知ることが大切です。
「どの方法なら短時間で解凍できるの」「急速冷凍をした食材を解凍したいけれど、どの方法がいいか分からない」という疑問を持っている方もいるでしょう。解凍方法を間違えると、せっかくのおいしい状態で急速冷凍した食材のうまみを逃がしてしまうことがあります。
この記事では、6つの解凍方法と特徴、おススメ解凍方法、避けたい解凍方法など紹介します。
Contents
代表的な6つの解凍方法
自然解凍
食材を冷凍庫から取り出し常温で解凍するシンプルな方法です。
簡単な方法ですが、暖かい時期に長時間放置すると菌が繁殖する可能性があり、食中毒を起こす危険性があります。また表面と内部の温度差が大きいとドリップが出やすくなるので注意しましょう。
ドリップの原因や対処法ついて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
冷凍した肉や魚を解凍すると、赤い水分が出ていたり、調理するとパサついて美味しくないなと感じた経験はないでしょうか? その水分はドリップと呼ばれるもので、肉や魚を解凍した後に出やすく、調理時に味を落とす原因のひとつです。 今回は「解凍時に食材から出る液体はなに?」「出たらどう...
上手な解凍方法
温度が高い場所で長時間置いておくと菌が増殖するため注意が必要です。
解凍時間
おおむね3~4時間程度。(食品の大きさ や厚さにもよる)
自然解凍に適している食材
すでに加熱調理済みの食材、常温で置いておいても品質劣化のおそれが少ない食品。
(塩辛、五目寿司の具材、にんにく、しょうがなど)
冷蔵庫解凍
冷蔵庫内で食材・食品を解凍する方法です。
低温でじっくり時間をかけて解凍する方法のため時間がかかりますが、少しずつ解凍できるためドリップが出にくく、細菌の繁殖が起こりにくいので衛生的で品質を落とさずに解凍することができます。
上手な解凍方法
冷蔵庫やチルド室で解凍。低温でゆっくりと時間をかけて解凍する。
解凍時間
半日~1日程度。(食品の大きさ厚さにもよる)
冷蔵庫解凍に適している食材
鮮度や品質が落ちやすい食品・肉。
(肉・魚・ケーキ・おせちなど)
流水解凍
ボウルに水を入れ、冷凍した食品を、水を流しながら解凍する方法です。
食品を水に沈め、水を流すことで解凍するため熱伝導がよく短時間で解凍できます。
食材の量が多い場合、効率よく解凍できます。一方、冷蔵庫解凍よりもドリップが出やすく、ドリップがたくさん出るとうまみ成分を失ってしまうので注意が必要です。
上手な解凍方法
水が入らない保存袋に入れた食材をボウルに入れ、水道の蛇口から水を流しかける。食材が浮いてこないように重しをしておくと良い。
解凍時間
おおむね30分以内。(食品の大きさ厚さにもよる)
流水解凍に適している食材
冷たいままや半解凍状態で加工・食べたい食品。
(冷凍枝豆・原料・スープ・刺身用エビ・イカ・カツオのタタキなど)
氷水解凍
容器に水と氷をいれ、氷水を張り、冷凍した食品を袋ごと沈めて解凍する方法です。
氷を入れることで水温を0℃前後に保つことができるため、ドリップも少なくうまみを逃さず解凍できます。
また液体は空気の熱伝導率が良いため冷蔵庫解凍よりも解凍時間が早く、氷水につけることで低温でムラなく解凍できるため流水解凍よりもドリップの量が少なく解凍できます。
上手な解凍方法
たっぷりの氷水の中に水が入らない保存袋に入れた食材を入れ、浮いてこないように重しをする。氷が解けたら追加し水温を0度前後の温度を保つ。
解凍時間
おおむね2~3時間。(食品の大きさ厚さにもよる)
氷水解凍に適している食材
すでに加熱調理済みの食材、常温で置いておいても品質劣化のおそれが少ない食品。
(塩辛、五目寿司の具材、にんにく、しょうがなど)
レンジ解凍
レンジを使って解凍する方法です。
解凍スピードが速いので、時間がないときに向いている解凍方法で、すぐに調理する予定のある食材にもおススメです。
電子レンジの機種によって解凍・調理時間は多少異なりますが、解凍モードがある場合は解凍モードで、ない場合は100W~200W程度のワット数で様子を見ながら加熱しましょう。
急激に温めすぎてしまうと加熱ムラを起こしやすいため、食品を取り出してみて、冷たい場合は 10秒ずつ再加熱したり、ワット数を弱めにするなどをおススメします。
上手な解凍方法
解凍モードか100W~200Wで加熱。必要に応じて10秒ずつ再加熱する。
解凍時間
1~8分程度。(食品の大きさ厚さにもよる)
レンジ解凍に適している食材
加熱調理してある食品や、解凍から加熱まで行いたい食品。
(ご飯、パン、煮物、炒め物、ハンバーグ、コーンなど)
加熱解凍
凍った食材をそのまま加熱調理する方法です。
あらかじめ調理や加工された食材を凍ったまま炒める、蒸す、煮る、揚げるなどして解凍と調理を同時に行えます。解凍する手間や解凍によるダメージがなく調理できます。
上手な解凍方法
凍ったまま調理する。
解凍時間
食材の調理時間。(例えば餃子の場合5~10分程度)
レンジ解凍に適している食材
解凍してすぐに加熱調理する食品。
(しゅうまい、餃子、コーン、ピラフ、バラ凍結された肉類、鍋類)
おススメ解凍方法、避けたい解凍方法
安全でおいしいおススメの解凍方法
一番のおススメは「冷蔵庫解凍」です。
低温状態を維持することで、肉・魚の旨みであるドリップをほとんど出さずに品質を保ったまま解凍できます。また細菌の発生を抑え品質劣化もふせぎます。時間はかかりますが、外側と中心部の温度差が少ない状態で解凍されるため旨味が逃げにくく、おいしく召し上がれます。
短い時間で解凍するおススメの解凍方法
「氷水解凍」です。液体は空気よりも熱伝導率が高いため、短時間で解凍ができます。流水解凍より時間はかかりますがムラなく均一に解凍でき、美味しさが保てます。低温のためドリップも出にくく、大量に解凍したいときにもおススメの方法です。
また、解凍と調理を同時に行いたいときは「加熱解凍」がおススメです。
熱を加えて解凍し調理するので時間が短縮できます。
避けたい解凍方法
自然解凍です。内部と表面との温度差が大きくドリップが多く出てしまいます。夏場や、温度が高い場所に長時間置き続けていると細菌が繁殖してしまい食中毒を起こす危険性があります。
まとめ
冷凍保存した食材の旨みを引き出すには、適切な解凍方法を選ぶことが大切です。急速冷凍は、食材の鮮度やうまみを保ちながら品質を維持できる優れた方法ですが、解凍方法次第でそのおいしさが失われたり、細菌の繁殖リスクが高まることもあります。
特に自然解凍は、室温で放置することで菌が増殖しやすく、避けた方が良い方法です。一方で、冷蔵庫解凍や氷水解凍は、時間をかけることでドリップを抑え、鮮度や風味をしっかり保ちます。
冷凍で閉じ込めたおいしさを活かすためにも、食材や目的に合わせた正しい解凍方法を知り、安全でおいしい食事を楽しみましょう。
急速冷凍や他の冷凍方法について知りたい方は、こちらをご覧ください。
今回は、一般的な冷凍(緩慢冷凍)と急速冷凍の違いについて説明していきます。 緩慢冷凍と急速冷凍の違い 急速冷凍とは? 食品の品温を低下させる過程において、最大氷結晶生成温度帯(通常の場合-1℃~-5℃の間)を短時間のうちに通過させて氷結晶を肥大化を抑えて品質低下を防ぎます。 緩慢冷凍...