
トンネル型フリーザーの導入を検討する際、最も気になるのが「価格」ではないでしょうか。「一体いくらかかるのか?」「高価な投資に見合う効果は得られるのか?」といった疑問は、設備導入担当者や経営者にとって重要な課題です。
トンネル型フリーザーの価格は、小型のもので数百万円、大型になれば数千万円と非常に幅広く、一概に「いくら」とは言えません。なぜなら、その価格は処理能力、仕様、オプション機能など、様々な要因によって大きく変動するからです。
本記事では、トンネル型フリーザーの価格に関するあらゆる疑問にお答えします。価格が決まる具体的な要因から、導入費用の目安、見積もりの見方、そして投資を成功に導く「費用対効果」の考え方まで、専門家の視点で徹底的に解説します。さらに、導入コストを大幅に削減できる補助金や税制優遇の活用法もご紹介します。
この記事を読めば、単なる価格の比較に留まらない、長期的視点での最適な投資判断が可能になります。
トンネル型フリーザーの全体像や基本的な仕組みについては、まずこちらの完全ガイドをご覧ください。
▶ トンネル型フリーザー完全ガイド|仕組み・価格・選び方から17の疑問に答えます
Contents
トンネル型フリーザーの価格が決まる5つの要因
トンネル型フリーザーの見積もり価格は、主に以下の5つの要因の組み合わせによって決まります。これらの要因を理解することで、見積もりの妥当性を判断し、自社に不要なオーバースペックを避けることができます。
1. 処理能力(kg/h)
最も価格に影響を与えるのが、1時間あたりに冷凍できる食品の量を示す「処理能力」です。処理能力が高くなるほど、フリーザー本体が大きくなり、より強力な冷凍機が必要になるため、価格は上昇します。
自社の生産計画(将来の増産計画も含む)に合った処理能力を選ぶことが、過剰投資を避けるための第一歩です。
2. ベルトの仕様(幅・材質)
食品を搬送するコンベアベルトの仕様も価格を左右します。
•ベルト幅: 幅が広いほど、一度に多くの製品を搬送でき、処理能力が向上しますが、価格も高くなります。
•材質: ステンレス製のメッシュベルト、プラスチック製のプラベルトなどがあり、対象食品や洗浄方法によって最適な材質が異なります。耐久性や耐熱性が高い特殊な材質は高価になる傾向があります。
3. 冷凍機の種類と冷媒
フリーザーの心臓部である冷凍機と、そこで使用される冷媒の種類は、初期費用とランニングコストの両方に影響します。
| 冷媒の種類 | 初期費用 | ランニングコスト | 特徴 |
|---|---|---|---|
| フロン系冷媒(HFC) | 標準 | 標準 | 多くの機種で採用。オゾン層は破壊しないが地球温暖化係数が高い。 |
| 自然冷媒(アンモニア, CO₂) | 高価 | 高価 | 環境負荷が低い。ただし、アンモニアは毒性、CO₂は高圧ガス対策が必要。 |
| 液体窒素(LN₂) | 安価 | 非常に高価 | -196℃の超低温で瞬間凍結が可能。高品質だが運用コストが高い。 |
4. 本体サイズと材質
フリーザー本体のサイズはもちろん、その構造や材質も価格に影響します。例えば、断熱パネルの厚みや材質、フレームに使用されるステンレスのグレードなどが価格差を生む要因となります。
5. オプション機能
生産性や衛生レベルを向上させるためのオプション機能を追加すると、その分価格は上昇します。
•CIP(自動洗浄)装置: 洗浄の手間を大幅に削減できる人気のオプションです。
•IQF(個別急速冷凍)装置: バラ凍結を実現するための特殊な送風・振動機構です。
•床タンク構造: 庫内の床を一体化させ、洗浄性と排水性を高める構造です。
•ベルト乾燥装置: 洗浄後のベルトを素早く乾燥させ、次の生産に備えます。
【価格帯別】トンネル型フリーザーの導入費用目安
上記の要因を踏まえ、処理能力別の導入費用のおおよその目安をご紹介します。ただし、これはあくまで本体と標準的な冷凍機を含んだ概算であり、付帯工事費などは別途必要になります。
| 価格帯 | 処理能力の目安 | 主な用途・特徴 |
|---|---|---|
| 小型:1,000万円~2,000万円 | ~100kg/h | 小規模な食品工場や、新製品開発のためのテストライン向け。コンパクトな設計が特徴。 |
| 中型:2,000万円~5,000万円 | 100~300kg/h | 多くの食品工場で採用されている標準的なサイズ。生産性と価格のバランスに優れる。 |
| 大型:5,000万円~ | 300kg/h~ | 大規模な生産ライン向け。24時間稼働など、高い生産能力が求められる場合に選択される。 |
KOGASUNでは、お客様の生産規模やご予算に応じて、最適な仕様のトンネル型フリーザーをご提案いたします。詳しくは製品ページをご覧いただくか、お気軽にお問い合わせください。
見積もりに含まれる費用、含まれない費用
メーカーから見積もりを取る際は、どこまでが費用に含まれているのかを正確に把握することが重要です。「本体価格は安かったのに、最終的な総額は高くなってしまった」という事態を避けるため、初期費用と運用費用の両方を理解しておきましょう。
初期費用(イニシャルコスト)の内訳
見積書に記載されることが多い項目です。
•本体価格: フリーザー本体、制御盤など。
•冷凍機ユニット: コンプレッサー、凝縮器など。
•搬入・据付工事費: 工場への搬入、設置、組み立てにかかる費用。
•付帯工事費: 電源工事、給排水配管工事、ダクト工事、基礎工事など。(※別途見積もりとなることが多いので要注意)
•試運転・調整費: 設置後の動作確認やオペレーターへのトレーニング費用。
運用費用(ランニングコスト)の内訳
導入後に継続的に発生する費用です。長期的な視点ではこちらの方が重要になることもあります。
•電気代: フリーザーと冷凍機の運転にかかる電力。省エネ性能が大きく影響します。
•水道代・洗浄剤費: 庫内の洗浄にかかる費用。
•消耗品費: ベルトやモーターのオイルなど。
•保守・メンテナンス費: 定期点検や修理にかかる費用。メーカーとの保守契約料など。
•人件費: 洗浄やメンテナンス作業にかかる時間。
費用対効果(ROI)の考え方と計算方法
トンネル型フリーザーは高価な投資ですが、それによって得られるメリットを金額換算することで、投資の妥当性を評価できます。これが費用対効果(ROI: Return on Investment)の考え方です。
生産性向上による人件費削減効果
これまで手作業やバッチ式で行っていた冷凍工程を自動化することで、作業人員を削減したり、夜間運転による残業代を削減したりできます。
例:作業員2名(年収400万円×2 = 800万円)を他部署へ配置転換できた場合 → 年間800万円のコスト削減効果
食品ロス削減による原価低減効果
急速冷凍により品質が向上し、これまで廃棄していた製品の歩留まりが改善されることで、材料費のロスを削減できます。
例:廃棄率が3%改善(月間売上1,000万円の場合) → 月間30万円、年間360万円のコスト削減効果
品質向上による付加価値向上効果
高品質な冷凍食品を製造できるようになることで、製品の販売単価を上げたり、新たな販路を開拓したりすることが可能になります。
例:付加価値向上により、製品単価を10%アップできた場合 → 売上増加に直結
価格だけでなく、自社に最適な機種を選ぶことも重要です。詳しい選定方法は、こちらの記事で解説しています。
▶ トンネル型フリーザーの選び方|失敗しないための5つの重要ポイント
補助金・税制優遇を活用して導入コストを抑える方法
トンネル型フリーザーのような生産性向上に繋がる設備投資には、国や自治体が提供する補助金や税制優遇制度が利用できる可能性があります。これらを活用すれば、実質的な負担を大幅に軽減できます。
中小企業経営強化税制
中小企業が経営力向上計画の認定を受けることで、対象設備について「即時償却」または「最大10%の税額控除」のいずれかを選択適用できる制度です。キャッシュフローの改善に大きく貢献します。
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
中小企業等が行う革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善のための設備投資等を支援する、非常に人気の高い補助金です。最大で数百万円~数千万円の補助が受けられる可能性があります。
事業再構築補助金
ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、新分野展開、業態転換、事業・業種転換等の思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する補助金です。
補助金活用の専門家にご相談を: これらの制度は公募期間や要件が複雑です。KOGASUNでは、補助金申請の専門家と連携し、お客様の設備投資に最適な制度のご提案から申請サポートまで行っております。詳しくは補助金に関するご案内ページをご覧いただくか、お気軽にご相談ください。
まとめ:長期的な視点で最適な投資判断を
トンネル型フリーザーの価格は、様々な要因によって決まるため、単純な価格比較だけでは最適な一台を選ぶことはできません。
【本記事のポイント】
•価格は処理能力、ベルト、冷媒、材質、オプションで決まる。
•コストは初期費用だけでなく、ランニングコストを含めたTCOで評価する。
•人件費削減や食品ロス削減といった費用対効果(ROI)を試算する。
•補助金や税制優遇を最大限に活用し、導入負担を軽減する。
高価な設備投資だからこそ、目先の価格に捉われず、長期的な視点で自社の生産性と収益性を最大化する選択をすることが重要です。
KOGASUNでは、お客様の製品、生産計画、ご予算に合わせた最適なトンネル型フリーザーをご提案いたします。お見積もりや費用対効果のシミュレーション、補助金に関するご相談など、コストに関するあらゆるご相談を承ります。
まずはお気軽にお問い合わせください。
全17記事へのクイックリンク集
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- No.2 IQF(個別急速冷凍)とは?
- No.3 選び方|失敗しないための5つの重要ポイント
- No.4 価格相場は?費用対効果と補助金活用法
- No.5 省エネ術|電気代とランニングコストを削減
- No.6 導入に使える補助金・税制優遇ガイド
- No.7 サイズ・容量の選び方|生産量に合わせた計算方法
- No.8 【食品別】最適設定|惣菜・水産・畜肉・製菓
- No.9 設置スペースと工場レイアウトの注意点
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