トンネル型フリーザーの電気容量と電源工事の注意点

トンネル型フリーザーは、食品工場の中でも特に多くの電力を消費する設備の一つです。そのため、導入計画において電気容量の確認と、適切な電源工事は、設置スペースの確保と並んで極めて重要な要素となります。

「フリーザーを動かすには、どのくらいの電気が必要?」 「今の工場の契約電力で足りるだろうか?」 「電源工事では、どんなことに注意すればいい?」

もし、工場の受電設備(キュービクルなど)の容量が不足している場合、フリーザーを稼働させた途端にブレーカーが落ち、工場全体の生産がストップしてしまいます。最悪の場合、受電設備の増設という大規模な工事が必要となり、想定外のコストと時間がかかってしまうことも少なくありません。

この記事では、トンネル型フリーザーの導入に際して、事前に必ず確認すべき「必要電力の計算方法」と「電源工事の注意点」について、専門家の視点から解説します。電気に関する問題をクリアにし、スムーズな導入を実現しましょう。

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1. 必要な電気容量(kW)を計算する方法

まず、導入したいトンネル型フリーザーが、どのくらいの電力を必要とするのかを把握します。これは通常、仕様書の「電気容量」や「消費電力」の項目にkW(キロワット)という単位で記載されています。

トンネル型フリーザーの総電気容量は、主に以下の3つの要素の合計で決まります。

総電気容量(kW) = ①冷凍機 + ②庫内ファンモーター + ③コンベアモーター

項目 電気容量の目安(処理能力100kg/hクラス)
① 冷凍機(コンプレッサー) 15.0 ~ 22.0 kW
② 庫内ファンモーター 1.5 ~ 3.0 kW
③ コンベアモーター 0.4 ~ 0.75 kW
合計 約 17.0 ~ 26.0 kW

※上記はあくまで目安です。実際の数値は、機械のサイズ、設定温度、使用する冷媒などによって大きく変動します。

【確認のポイント】 メーカーから見積もりを取る際には、必ず「最大消費電力(kW)」と「定格消費電力(kW)」の両方を確認しましょう。特に、工場の契約電力が足りるかどうかの判断には、瞬間的に最も電力を使う「最大消費電力」を基に検討する必要があります。

2. 工場の契約電力は足りているか?

必要な電気容量が分かったら、次に自社の工場の「契約電力」を確認します。契約電力は、電力会社との契約で定められた、同時に使用できる電力の上限値です。

高圧電力 vs 低圧電力

多くの食品工場では、動力として「三相200V」の電源を使用します。契約形態は、契約電力の大きさによって「低圧電力」と「高圧電力」に分かれます。

契約種別 契約電力 受電設備
低圧電力 50kW未満 不要(電柱から直接引き込み)
高圧電力 50kW以上 必要(キュービクル式高圧受電設備)

【確認のポイント】

1.現在の契約電力(kW)を確認する: 電力会社からの請求書(検針票)に記載されています。

2.現在の最大使用電力を確認する: 同じく請求書に記載されています。

3.容量の余裕を計算する: 契約電力 – 最大使用電力 = 余裕電力

この「余裕電力」が、導入したいフリーザーの「最大消費電力」よりも大きいかが、一つの判断基準となります。

もし余裕がない場合は、電力会社との契約電力を見直す(上げる)必要があります。高圧電力の場合は、キュービクルの変圧器(トランス)の増設や交換といった、大規模な工事が必要になる可能性も出てきます。

3. 電源工事における3つの注意点

電気容量に問題がないことが確認できたら、次は具体的な電源工事の計画です。

① フリーザー専用の一次側電源を確保する

トンネル型フリーザーは、他の機械と電源を共有(タコ足配線)するのではなく、工場の主幹分電盤から専用の配線とブレーカーを設けるのが鉄則です。これにより、万が一フリーザーに電気的なトラブルが発生しても、他の生産ラインへの影響を最小限に食い止めることができます。

② 適切なケーブルサイズを選定する

フリーザーの消費電力と、分電盤からの距離に応じて、適切な太さの電気ケーブルを選定する必要があります。ケーブルが細すぎると、発熱して火災の原因となったり、電圧降下によってフリーザーの性能が十分に発揮できなかったりします。これは、電気工事の専門家が計算して選定します。

③ 接地(アース)工事を確実に行う

漏電による感電事故や、ノイズによる制御盤の誤作動を防ぐために、確実な接地(アース)工事が法律で義務付けられています。D種接地工事(100Ω以下)が一般的です。

まとめ:電気の問題は、必ず専門家を交えて計画的に

トンネル型フリーザーの電源計画は、後から変更するのが非常に困難なため、初期段階での慎重な検討が不可欠です。

【電源計画のステップ】

1.必要電力の把握: メーカーにフリーザーの最大消費電力(kW)を確認する。

2.自社電力状況の確認: 契約電力と最大使用電力(デマンド値)を確認し、余裕があるか判断する。

3.電力会社・電気工事業者との相談: 容量が不足する場合は、契約電力の変更や受電設備の改修について、電力会社や専門の電気工事業者と相談する。

4.電源工事の計画: フリーザー専用の電源確保、適切なケーブル選定、接地工事など、メーカーの指示に従って工事計画を立てる。

電気に関する判断は、一歩間違えると大きな事故に繋がります。決して自社だけで判断せず、必ずメーカー、電気主任技術者、そして信頼できる電気工事業者を交えて、安全かつ計画的に進めてください。

スムーズで安全なフリーザー導入のために、ぜひ私たち専門家をご活用ください。

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