IQF(個別急速冷凍)とは?その仕組みとメリット、活用法を解説

冷凍食品のパッケージで「IQF」という表記を見たことはありませんか?

IQFとは “Individual Quick Freezing” の略で、日本語では「個別急速冷凍」または「バラ凍結」と呼ばれます。これは、カット野菜やフルーツ、ひき肉、むきエビといった小さな食品を、一つひとつがくっつかずにバラバラの状態で急速冷凍する技術のことです。

IQF技術で凍結された食品は、使いたい分だけを簡単に取り出せるため、消費者の利便性を大きく向上させます。また、食品一つひとつの品質を高く保つことができるため、フードサービス業界や食品製造業においても、品質向上、作業効率化、フードロス削減といった多くのメリットをもたらします。

この記事では、IQFの基本的な仕組みから、従来の凍結方法(ブロック凍結)との違い、導入によるメリット、そしてどのようなフリーザーで実現できるのかまで、専門家の視点で詳しく解説していきます。

IQFを実現するトンネル型フリーザーの全体像については、まずこちらの完全ガイドをご覧ください。

トンネル型フリーザー完全ガイド|仕組み・価格・選び方から17の疑問に答えます

IQF(個別急速冷凍)の仕組み

なぜ、食品同士がくっつかずにバラバラに凍結できるのでしょうか。その秘密は、食品を「浮遊」させながら凍結させる特殊な技術にあります。

最も一般的なIQFフリーザー(特にトンネル型)では、「流動層(Fluidized Bed)」と呼ばれる原理が用いられます。

1.製品投入: カットされた野菜や果物などが、フリーザー内のコンベアベルトに投入されます。

2.強力な冷風: ベルトの下から、-30℃~-40℃の強力な冷風が上向きに吹き付けられます。

3.浮遊・攪拌: この強力な冷風によって、食品はベルトの上でまるで沸騰しているかのように浮き上がり、攪拌されます。この浮遊・攪拌状態を「流動層」と呼びます。

4.表面凍結: 食品が浮遊し、互いに接触しない状態で冷風に晒されるため、まずそれぞれの表面が一瞬で凍結(表面硬化)します。

5.完全凍結: 表面が凍結してしまえば、その後は食品同士が接触してもくっつくことはありません。コンベアで搬送されながら、中心部まで完全に凍結されます。

この「浮き上がらせて、表面を固める」というステップが、IQFの最も重要なポイントです。

IQF vs ブロック凍結|その違いとメリット

IQFが登場する以前は、食品を大きな塊(ブロック)のまま凍結する「ブロック凍結」が一般的でした。IQFは、このブロック凍結が抱えていた多くの課題を解決します。

比較項目 IQF(個別急速冷凍) ブロック凍結
凍結状態 一つひとつがバラバラ 全てがくっついた塊(ブロック)
利便性 使いたい分だけ取り出せる(◎) 解凍しないと使えない(△)
凍結速度 非常に速い(◎) 遅い(×)
品質 細胞破壊が少なく高品質(◎) 氷結晶が大きく、ドリップが多い(△)
フードロス 少ない(○) 解凍後の再凍結が難しく、ロスが多い(△)

メリット1:圧倒的な利便性

IQFの最大のメリットは、必要な分だけを取り出して使えることです。例えば、ブロック凍結されたひき肉は、一度全てを解凍しないと使えませんが、IQFのパラパラミンチなら、スプーン一杯分だけを料理に加えることができます。これにより、家庭での調理時間の短縮や、レストランでのオペレーション効率化に大きく貢献します。

メリット2:高い凍結品質

IQFは非常に速いスピードで凍結するため、食品の細胞内にある水分が大きな氷の結晶に成長する時間を与えません。氷結晶が小さいと、細胞膜の破壊を最小限に抑えることができます。その結果、解凍時のドリップ(旨味や栄養成分の流出)が少なく、食感や風味、色合いといった「採れたて」「作りたて」の品質を限りなく維持できます。

メリット3:フードロスの削減

ブロック凍結では、一度解凍したものを使い切れずに廃棄してしまうケースが多くありました。IQFであれば、必要な量だけを使えるため、使い残しによるフードロスを大幅に削減できます。これは、SDGsの観点からも非常に重要なメリットです。

IQFにはどんな食品が向いている?

IQFは、比較的小さく、形状がある程度揃っている食品に適しています。具体的には、以下のような製品で広く活用されています。

•農産品: カット野菜(ブロッコリー、ほうれん草、コーン)、ミックスベジタブル、枝豆、フライドポテト、カットフルーツ(ベリー類、マンゴー、パイナップル)

•水産品: むきエビ、ベビーホタテ、アサリ、イカリング、しらす

•畜産品: パラパラミンチ(牛・豚・鶏)、鶏の唐揚げ、ミートボール、ダイスカットした肉

•その他: チーズ、パン生地、餃子、たこ焼き

IQFを実現するフリーザーの選び方

IQFを実現するためには、前述した「流動層」を効率的に作り出せるフリーザーが必要です。この点で、トンネル型フリーザーはIQFに最も適した構造を持っています。

なぜトンネル型フリーザーがIQFに向いているのか?

トンネル型フリーザーは、直線的なコンベア構造を持つため、以下のようなIQF向けの特殊な機構を組み込みやすいという特徴があります。

•強力な送風機構: ベルト下から強力な冷風を吹き上げるための専用ファンやノズルを設置しやすい。

•振動機構: ベルト自体を細かく振動させ、製品同士の固着を物理的に防ぐ機構を追加できる。

•ゾーニング: フリーザーの入口(第1ゾーン)で集中的に表面凍結(クラストフリーズ)を行い、後半のゾーンでじっくりと芯温まで凍結させる、といった効率的な運転が可能。

IQFに最適なフリーザーの選び方については、こちらの記事もご覧ください。

トンネル型フリーザーの選び方|失敗しないための5つの重要ポイント

まとめ:IQFは、食品の価値を高める未来の技術

IQF(個別急速冷凍)は、単なる凍結方法の一つではありません。それは、食品に「利便性」と「高品質」という新たな付加価値を与え、フードロスという社会課題の解決にも貢献する、非常に重要な技術です。

【IQF導入のメリットまとめ】

•消費者・使用者: 必要な分だけ使える利便性。

•品質: ドリップが少なく、作りたての美味しさを維持。

•効率: 作業効率の向上とフードロスの削減。

もし、あなたの工場で扱っている製品がIQFに向いているなら、その導入は大きなビジネスチャンスに繋がる可能性があります。

KOGASUNでは、長年の経験と独自の技術(3Dフリーザー®など)を活かし、お客様の製品に最適なIQF対応トンネル型フリーザーをご提案します。IQFが可能かどうか、どの程度の品質が実現できるかを確認するための無料凍結テストも随時受け付けております。

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そんなご要望がありましたら、ぜひお気軽にKOGASUNにご相談ください。

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