
本記事では、スパイラルフリーザーとトンネルフリーザーの違いを、占有面積・処理量・品質(ドリップ/歩留まり)・洗浄(CIP)・導入/運用コストの5軸で実務目線に徹底比較します。結論から言えば、限られたスペースで大量処理と品質安定を両立したい食品工場では、スパイラル構成が第一候補になりやすい一方、直線搬送や短尺ラインで十分な場合はトンネルも有効です。
Contents
60秒でわかる要点
- 省スペース:縦積み搬送のスパイラルは床面積あたりの処理量が高い。レイアウト制約が厳しい工場で有利。
- 品質・歩留まり:均一な気流/滞留時間の確保で製品温度ムラやドリップ悪化を抑制しやすい。
- 洗浄CIP:近年はスパイラルでもCIP対応・オープンフレームで洗浄性を高水準で確保可能。
- コスト:初期費は用途により拮抗。電力/冷媒/人件の通期コストまで含めてTCOで判断。
- 適用領域:スパイラル=成形食品・ベーカリー・畜産加工・惣菜などの大量連続処理。トンネル=直列ラインや短距離搬送を活かしたシンプル用途。
スパイラル/トンネルの基本
スパイラルフリーザーは螺旋状のベルトで製品を縦方向に多段搬送し、単一筐体で長時間の滞留と均一な冷気分布を実現します。トンネルフリーザーは直線ベルトで筐体内を一方向に搬送する構造で、ライン直結やシンプル配列に適します。
主要比較(ひと目で分かる表)
| 項目 | スパイラルフリーザー | トンネルフリーザー |
|---|---|---|
| 占有面積 | 縦積みで床面積あたり処理量が大。既存建屋でも導入しやすい。 | 直線のため設置長が伸びやすい。広い床面積を確保したい。 |
| 処理量/スループット | 長い滞留を単一筐体で確保。大量・連続生産に強い。 | 搬送長で滞留を確保。ライン構成次第で十分な処理量も可能。 |
| 品質(温度ムラ/歩留まり) | 気流設計により均一化しやすい。ドリップや乾燥を抑制しやすい。 | 均一性は装置長/風配/ガイド次第。設定チューニングが鍵。 |
| 洗浄・衛生(CIP) | CIP/自動洗浄・オープン構造で洗浄時間を短縮可能。 | 構造が単純で手洗いしやすい利点。 |
| 導入コスト | 仕様次第で拮抗。省スペースで付帯工事が軽くなるケースも。 | 筐体が単純な分、初期費が抑えられる場合あり。 |
| 運用コスト | 気流効率と滞留一体化で冷却効率の最適化余地が大。 | 装置長・熱負荷設計に依存。適正設計で十分に最適化可能。 |
| 拡張性・将来性 | 段数/ベルト幅の最適化で増産に対応しやすい。 | 搬送長の延伸や複線化で対応。 |
| 適した製品例 | 成形肉、唐揚げ、コロッケ、ベーカリー、ピザ、米飯、惣菜 等 | 魚片、野菜、簡便食品、直線ライン一体の軽加工 等 |
省スペースで差が出る理由
スパイラルは縦方向に搬送路を重ねるため、同じ滞留時間でも床面を最小化できます。既設設備の間や冷機械室と干渉しがちな現場でも、配管・ダクト・通路を確保しつつ導入できるのが実務上の強みです。
品質と歩留まり:温度ムラ・ドリップをどう抑えるか
凍結品質は冷却速度と気流均一性で決まります。スパイラルは筐体内での均一な風量分布と滞留の一体設計がしやすく、製品厚みがバラつく現場でも温度ムラを抑制しやすいのが利点です。トンネルでも、風配・ガイド・ノズル最適化で十分な品質は確保可能です。
洗浄(CIP)・メンテナンス
- CIP対応(洗浄ノズル配置・洗剤/リンス回収)で洗浄時間の短縮と再現性を確保。
- オープンフレーム設計/着脱点検口で日常点検と異物対策を容易に。
- ベルト・駆動部は工具レスでの点検・交換が可能だと段取りが速い。
選定フロー(失敗しないための3ステップ)
- 製品・処理条件の定義:投入温度、最終中心温度、製品サイズ/厚み、表面状態(衣/油/水分)
- 必要スループットと滞留時間:kg/h、ピーク時、切替頻度
- 設置制約とTCO:床面積・天井高・既存配管、電力/冷媒、清掃人数、保守体制
モデルケース(考え方の例)
たとえば1,000kg/hクラスで既設建屋の空きが限られる場合、スパイラルで床面積を抑えつつ所要滞留を確保し、冷機械室や通路を圧迫しないレイアウトを構築しやすくなります。逆に、床面に十分な直線長が取れ、構造をシンプルに保ちたい場合はトンネルが合理的です。
導入チェックリスト
- 目標スループット(平常/ピーク)と滞留時間を明文化したか
- 設置条件(床面、天井高、動線、既設配管)を図面化したか
- 洗浄(CIP/手洗い)、切替頻度、人員計画を織り込んだか
- 消費電力・冷媒負荷・メンテ費を含むTCOで比較したか
- 将来増産/製品拡張の余地を見込んだか
まずは凍結テスト・レイアウト相談を
実機に近い条件での凍結テストと、現場制約を踏まえたレイアウト検討で最短の最適解を提案します。
お問い合わせからご相談ください。
関連ページ: 製品情報|スパイラルフリーザー / 製品情報|トンネルフリーザー / 導入事例
よくある質問(FAQ)
A. 仕様・処理量・付帯工事で変動します。床面積制約が厳しい場合はスパイラルの総コスト優位が出やすく、広い直線スペースが取れる場合はトンネルが有利なこともあります。
A. CIPやオープン構造により短縮と再現性の確保が可能です。現場の人員計画・切替頻度と合わせて試算します。
A. 通路・配管・機械室を含む三面図/天伏図から最適レイアウトを設計します。縦積みのスパイラルは特に有利です。
