「お店の味を、もっと多くの人に届けたい」 「コロナ禍を機に、店舗売上だけに依存しない収益の柱が欲しい」 「自慢の食材や料理を、全国の食卓に直接届けたい」
そんな想いを抱く飲食店経営者や食品生産者にとって、「冷凍食品のEC・通販」は、今最も注目されているビジネスモデルの一つです。
インターネットとスマートフォンの普及により、消費者はいつでもどこでも手軽に商品を購入できるようになりました。特に、高品質な冷凍技術の登場によって、これまでお店でしか味わえなかった専門店の味を、家庭で手軽に再現できる「お取り寄せグルメ」の市場は、急速に拡大しています。
しかし、その一方で、「何から手をつけていいか分からない」「許可や法律が難しそう」「配送はどうすれば?」といった不安から、一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、業務用急速冷凍機の専門メーカーとして数多くのEC事業立ち上げを支援してきたKOGASUNが、冷凍食品のEC・通販を成功に導くための5つの重要ポイントを、具体的なステップに沿って解説します。
Contents
ポイント1:事業の根幹!「高品質な冷凍技術」を確立する
冷凍通販事業の成否は、「解凍後も、お店で食べる味と遜色ない品質を再現できるか」という一点にかかっています。これができなければ、リピーターは生まれず、事業は絶対に成功しません。
そして、その鍵を握るのが「急速冷凍機」です。
家庭用の冷凍庫などでゆっくり凍らせた食品は、解凍時にドリップ(旨味成分を含んだ水分)が大量に流出し、味も食感も大きく損なわれます。これでは、お客様をがっかりさせてしまいます。
食品の細胞を破壊しない急速冷凍機で凍結させることで初めて、調理直後の美味しさを閉じ込め、全国のお客様のご家庭へ届けることが可能になるのです。特に高湿度冷気で優しく包み込むように凍結する3Dフリーザーは、デリケートな料理の品質を保つ上で非常に有効です。
ECサイトを作る前に、まず自社の製品に最適な冷凍・解凍テストを繰り返し、品質に絶対の自信を持つこと。 これが、すべての始まりです。

ポイント2:法律をクリア!必要な許可・資格を把握する
冷凍食品を製造し、インターネットで販売するには、食品衛生法に基づく許可が必要です。無許可で営業すると、重い罰則が科せられるため、必ず事前に管轄の保健所に相談し、適切な許可を取得してください。
必要となる主な許可は以下の通りです。
•食品製造業の許可:
•そうざい製造業: 煮物、焼き物、揚げ物などの一般的な惣菜を製造する場合。
•菓子製造業: ケーキ、パン、クッキーなどを製造する場合。
•食肉製品製造業: ハム、ソーセージ、ベーコンなどを製造する場合。
•水産製品製造業: 干物、魚の燻製、練り物などを製造する場合。 ※製造する品目によって必要な業種が異なります。
•食品冷凍・冷蔵業: 他の事業者から仕入れた食品を、自社で冷凍・冷蔵して保管し、販売する場合に必要となることがあります。
•食品表示ラベルの作成: 販売する商品には、食品表示法で定められた事項(名称、原材料名、アレルギー、賞味期限、保存方法、製造者など)を記載したラベルを貼付する義務があります。
これらの許可を取得するには、施設の衛生基準(手洗いの設置、床の材質など)を満たす必要があります。施設の工事を始める前に、必ず設計図を持って保健所に事前相談に行くことが、手戻りを防ぐ上で非常に重要です。
ポイント3:どう届ける?「配送方法と梱包」を設計する
冷凍食品を安全にお客様の手元に届けるためには、配送中の温度管理が生命線です。
•配送業者: ヤマト運輸や佐川急便などの大手配送業者が提供する「クール宅急便(冷凍タイプ)」を利用するのが一般的です。各社で料金やサービス内容が異なるため、比較検討しましょう。
•梱包資材:
•段ボール: 専用の保冷段ボールが理想ですが、コストがかかるため、通常の段ボールでも問題ありません。
•断熱材: 発泡スチロールの箱や、プチプチなどの緩衝材を兼ねたアルミシートなどで、商品が外気温の影響を受けにくくします。
•保冷剤: 配送中の万が一の温度上昇に備え、保冷剤を同梱するとより安心です。
梱包の目的は、「商品を安全に届けること」と「ブランドイメージを伝えること」の2つです。商品にぴったり合ったサイズの箱を選び、配送中に商品が動かないように緩衝材を詰めることが基本です。また、オリジナルのロゴを入れた箱や、サンクスカードを同梱するなど、開封した時にお客様がワクワクするような工夫(開封体験の演出)も、リピートに繋がる重要な要素です。
ポイント4:どう売る?「ECサイトと集客方法」を構築する
ECサイトは、あなたのネット上の「お店」です。主に以下の3つの方法があります。
1.ECモールに出店する:
•例: 楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなど。
•メリット: モール自体の集客力があるため、初期からアクセスが見込める。
•デメリット: 販売手数料などのコストが高い。デザインの自由度が低く、価格競争に陥りやすい。
2.ASPカートで自社サイトを構築する:
•例: BASE、STORES、Shopifyなど。
•メリット: 手数料が比較的安く、専門知識がなくても簡単にデザイン性の高いサイトが作れる。
•デメリット: モールのような集客力はないため、自力で集客する必要がある。
3.オープンソースやフルスクラッチで構築する:
•メリット: デザインや機能を完全に自由に設計できる。
•デメリット: 莫大な開発コストと専門知識が必要。中小企業には非現実的。
おすすめは、まずはBASEやShopifyなどのASPカートで自社サイトを立ち上げることです。そして、サイトを作っただけでは誰も来てくれないので、「集客」が重要になります。
•SNSの活用: InstagramやX(旧Twitter)で、調理風景や商品のこだわり、お客様の声などを発信し、ファンを作る。
•Web広告: Google広告やSNS広告で、商品に興味を持ちそうなターゲットに直接アプローチする。
•インフルエンサーマーケティング: 料理系のインフルエンサーに商品を試してもらい、紹介してもらう。
ポイント5:利益は出るか?「価格設定と原価計算」を徹底する
見落としがちですが、最も重要なのが「儲かる仕組み」を作ることです。
EC販売では、店舗販売にはない様々なコストが発生します。
•変動費: 材料費、パッケージ代、梱包資材費、配送料、決済手数料、ECモール販売手数料など。
•固定費: ECサイト月額利用料、広告宣伝費、急速冷凍機の減価償却費、人件費、家賃など。
これらのコストをすべて洗い出し、1商品あたりの原価を正確に計算します。その上で、競合商品の価格なども参考にしながら、しっかりと利益が確保できる販売価格を設定しなければなりません。特に、送料を無料にする場合は、そのコストを価格に上乗せすることを忘れないようにしましょう。
まとめ
冷凍食品のEC・通販事業は、あなたのビジネスの可能性を大きく広げる魅力的な挑戦です。成功のためには、勢いだけでなく、しっかりとした準備と戦略が不可欠です。
5つの重要ポイントを再確認しましょう。
1.品質の確立: 急速冷凍機を導入し、解凍後も美味しい品質を実現する。
2.許可の取得: 保健所に相談し、必要な製造許可や表示義務をクリアする。
3.配送の設計: クール宅急便と適切な梱包で、安全に商品を届ける。
4.販売網の構築: ASPカートでサイトを作り、SNSなどで集客する。
5.利益の確保: すべてのコストを計算し、儲かる価格設定を行う。
あなたの情熱とこだわりが詰まった一皿を、全国のお客様に届ける。その夢の実現を、私たちがお手伝いします。
