
出典:みなと新聞(2009年7月24日掲載)
※本記事は当時の新聞記事をもとに、現在の読者向けに構成しています。
「西京はも」ブランド化への挑戦
山口県下関市の水産加工メーカー ふく晴 は、県内で水揚げされた活ハモ(西京はも)を高鮮度のまま加工することで、地域ブランド化を目指しています。
本プロジェクトは3カ年のLLP(有限責任事業組合)事業の一環としてスタート。
最終年度となる2009年には、最新急速冷凍機「3Dフリーザー®」の導入によって、鮮度保持と付加価値向上を実現しました。
高鮮度を保つ「浜締め」加工体制
ふく晴では、早朝に瀬戸内海沿岸で水揚げされた活ハモを、浜ですぐに締めて内臓を除去。
その後、氷で上下から魚体を急冷し、高い鮮度を維持したまま陸送しています。
午前中に漁港を出たハモは、午後1時までに工場へ到着。
このスピード輸送と処理体制が、ハモ特有の繊細な味わいを守る鍵です。
骨切り・すり身加工による付加価値化
搬入後のハモは、体表のぬめりを取り、職人の手で開かれます。
その後、有限会社サンテクノ久我 と エフビック が共同開発した自動骨切り機で処理。
また、規格外サイズのものはすり身加工に回され、無駄のない製品化を実現しています。
「フグ加工が主力だった当社にとって、ハモ加工は夏場の稼働率を支える救世主でした」と、米村社長。
3カ年LLP事業の成果と3Dフリーザー導入
ふく晴は、LLP制度を活用し、段階的な設備投資を行いました。
| 年度 | 主な取り組み | 導入設備 |
|---|---|---|
| 1年目 | 設備投資開始 | 骨切り・すり身機械、金属探知器 |
| 2年目 | 生産・販売の本格化 | – |
| 3年目(最終年度) | 付加価値向上・高鮮度化 | 3Dフリーザー®(エアオペレーションテクノロジーズ製) |
導入効果として、従来の冷凍機では解凍時に約15%のドリップ(液漏れ)が発生していましたが、
3Dフリーザー®ではドリップがほぼゼロに抑えられ、生鮮出荷と遜色のない品質が実現しています。
「納入先からも“まるで獲れたてのよう”と高い評価をいただいています」と米村社長は語ります。
ブランド化と今後の展望
現在(2009年時点)は、主に最終加工メーカー向けの一次加工品を中心に出荷。
今後は、自社ブランド商品やギフト用商材、量販店向け製品の開発にも注力していく計画です。
「高級魚であるハモは、規格や季節を外れると価格がつきにくい特殊な魚。
3Dフリーザーを活かし、旬の味を年中届ける“西京はもブランド”として広めたい」と米村社長。
年間100トンの生産体制へ
3Dフリーザー®の導入により、年間最大100トン(原料ベース)の加工が可能になりました。
地域漁業と連携しながら、山口県産ハモの価値を再定義する取り組みは、
「地域資源の再生モデル」としても注目されています。
技術と情熱が生む“持続可能なブランド
- 3Dフリーザー®導入によりドリップゼロを実現
- 季節格差の解消で通年稼働を可能に
- 地域資源のブランド化による経済循環の創出
ふく晴社の取り組みは、単なる設備導入に留まらず、
「技術 × 地域 × 食文化」が融合した地方創生の好例です。


