福井県の郷土料理や、駅弁・空弁として全国的な人気を誇る「焼き鯖寿司」。 しかし、この商品を冷凍販売するには、通常の握り寿司以上に高いハードルがあります。 それは、「厚みのあるシャリ(酢飯)」をどう凍らせるか、という問題です。 「中心まで凍るのに時間がかかりすぎて、解凍すると真ん中のご飯がボソボソする(白ロウ化)」「鯖は美味しいのに、ご飯が硬くて崩れてしまう」。 棒寿司のような塊の状態では、冷気が中心に届くまでに時間がかかり、その間にデンプンの老化が進んでしまうのです。
今回は、脂の乗った鯖と酢飯を押し固めた、厚みのある焼き鯖寿司を使用し、ご飯のモチモチ感と鯖のジューシーさを両立できるか検証しました。
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テスト条件と結果

今回は、製造後に放冷し、常温(25.3℃)に落ち着いた状態からのスタートです。
- サンプル名:焼き鯖寿司(棒寿司形状)
- 投入温度:25.3℃(※常温)
- 取出温度:-18℃(中心温度)
- 凍結時間:80分
この結果から分かる「3Dフリーザー」3つのメリット

常温から80分で芯まで凍結完了。厚みのある棒寿司において、品質を落とさずにこのタイムで凍結しきれるかどうかが、商品化の分かれ目となります。
1. 「魔の温度帯」を突破し、厚みのあるご飯を「白ロウ化」させない
お米(デンプン)は、0℃〜4℃の温度帯をゆっくり通過すると劣化(白ロウ化)し、解凍しても二度と元の柔らかさには戻りません。焼き鯖寿司のような分厚い形状は、中心部がこの温度帯に長く留まりがちです。 今回のテストでは、3Dフリーザーの立体的な冷気で包み込むことで、中心部まで着実に温度を下げ切りました。解凍後も、外側から中心までムラなく「ふっくら・モチモチ」した酢飯の食感が蘇ります。
2. 脂の乗った鯖の「酸化」を防ぎ、臭みを出さない
焼き鯖寿司の醍醐味は、皮目を香ばしく焼いた鯖の、溢れ出る脂の旨味です。しかし、凍結に時間がかかると、この脂が酸化して「油粘土のような臭い」や「生臭さ」に変わってしまいます。 80分でしっかりと温度を落とし切ることで、脂の鮮度をキープします。レンジアップした際に、焼きたての鯖のような香ばしい香りが立ち、臭みを感じさせません。
3. シャリとネタの「一体感」を守り、ボロボロ崩れない
冷凍でお米の粘りが失われると、解凍して箸で持ち上げた瞬間に、シャリがバラバラと崩れたり、鯖とご飯が剥がれたりしてしまいます。 急速凍結でデンプンの粘りを維持することで、押し寿司特有の「ギュッ」と詰まった一体感を保てます。口に入れた時に、鯖の身とご飯が同時にほぐれる、理想的な食バランスを楽しめます。
なぜ「デモテスト」が必要なのか?
焼き鯖寿司は、お店や工場によって製法が異なります。
- シャリの密度:機械でプレスした硬めのシャリか、手押しのふんわり系か。
- 鯖の厚み:肉厚な鯖か、間に具材(生姜や椎茸)を挟んでいるか。
- 包装形態:竹皮で包んでいるか、真空パックか、脱気包装か。
「竹皮に包んだままでも中まで凍るか?」「解凍はレンジか、湯煎か?」 デモテストでは、貴社のパッケージ形態のまま凍結を行い、最適な解凍方法(例えば、レンジ加熱の時間設定など)を含めて、一番美味しく食べていただけるフローをご提案します。
まとめ
今回の焼き鯖寿司のテストでは、「25.3℃から80分」で処理することで、厚みのあるご飯の老化を防ぎ、鯖の脂の旨味をそのまま閉じ込められることが実証されました。
「名物の焼き鯖寿司を、お土産として全国発送したい」「駅弁の廃棄ロスをなくすために、冷凍在庫を持ちたい」とお考えの水産加工業者様、弁当製造業者様。 難易度の高い「厚みのある米飯」の冷凍こそ、3Dフリーザーの実力が試される分野です。ぜひ一度、その仕上がりをお試しください。
