近年、人手不足の解消や廃棄ロス削減のために、「ベイクオフ(冷凍生地を店舗で焼成する)」方式を取り入れるベーカリーが増えています。 しかし、自社でパン生地を冷凍しようとすると、「焼いてもボリュームが出ない」「味が落ちる」という壁にぶつかりがちです。
今回は、成形・発酵工程を経て生地温度が29.5℃になった状態から、3Dフリーザーで急速凍結を行い、焼き上がりのクオリティを維持できるか検証しました。
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テスト条件と結果

- サンプル名:焼成前のパン生地(菓子パン・食事パン等)
- 投入温度:29.5℃(※発酵・成形後の生地温)
- 取出温度:-18℃(中心温度)
- 凍結時間:22分
この結果から分かる「3Dフリーザー」3つのメリット

29.5℃から22分。 イースト菌が活発に活動している温度帯から、わずか20分強で活動停止(休眠)レベルまで落とす。このスピードが、パンのおいしさを守ります。
1. 「イースト」を殺さず、発酵力を温存する
パン生地冷凍の最大の失敗は、凍結スピードが遅いことでイースト菌がダメージを受け、死滅してしまうことです。イーストが減ると、解凍して焼いてもパンが膨らまず、岩のように硬くなってしまいます。
今回のテストでは、29.5℃という発酵適温から一気に温度を下げることで、イースト菌を「仮死状態(休眠)」にスムーズに移行させています。 解凍してホイロ(発酵室)に入れれば、再び元気に活動を開始するため、ふっくらとボリュームのあるパンが焼き上がります。
2. 「グルテン」を傷つけず、ふんわり食感をキープ
パンの骨格となるグルテン膜は、氷の結晶によって容易に破壊されます。グルテンが切れるとガスを保持できず、キメの粗いパンになります。
3Dフリーザーは、生地の中の水分を微細な結晶として凍らせるため、グルテンの網目構造を断ち切りません。 焼き上がりは、クラム(中身)がしっとりとしており、指で押すと跳ね返ってくるような弾力が残ります。「冷凍生地=パサパサ」という常識を覆します。
3. 「表面乾燥」を防ぎ、パンの肌を守る
焼く前の生地は赤ちゃんの肌のようにデリケートです。 強い風を当てて凍らせると、表面が乾燥してカピカピの膜(クラスト)ができてしまい、発酵の妨げになったり、焼き上がりの表面が汚くなったりします。
3Dフリーザーの「包み込むような高湿度冷気」は、生地の水分を奪わずに優しく凍結させます。 解凍後も生地がしっとりとしており、そのまま二次発酵・焼成へとスムーズに進めます。
なぜ「デモテスト」が必要なのか?
パン生地は、リッチな配合かリーンな配合かによって凍結条件が激変します。
- 糖分と油分:砂糖やバターが多い菓子パン生地(凍りにくい)か、フランスパンのようなリーンな生地か。
- 大きさ:40g程度の小玉か、食パン用の大きな玉か。
- 発酵状態:一次発酵後すぐか、ホイロ後(焼成直前)か。
「焼成直前の冷凍(ホイロ後冷凍)でも潰れないか?」「クリームを包んだ状態でも大丈夫か?」 デモテストでは、貴社の生地を実際に凍結・解凍・焼成し、「焼き上がりのボリューム(比容積)」や「内相(スダチ)を実食してご確認いただけます。
まとめ
今回のパン生地(焼成前)のテストでは、「29.5℃から22分で急速凍結」することで、イーストの活性とグルテン構造を守り、焼きたてのボリュームと食感を再現できることが実証されました。
「早朝からのパン作り重労働を解消したい」「多店舗展開のために、生地の配送センターを作りたい」とお考えのベーカリーオーナー様、製パンメーカー様。 パンの命である“生きている生地”を守る技術を、ぜひ3Dフリーザーで体感してください。
