ショックフリーザーとは?食品の鮮度を保つ急速冷凍技術の基礎知識と活用法

食品業界で注目を集めるショックフリーザーは、食材を-30℃から-40℃の超低温で急速に凍結させる業務用冷凍機器です。通常の冷凍庫では数時間かかる凍結を30分~90分程度で完了させることで、細胞組織の破壊を最小限に抑え、解凍後も作りたての鮮度と美味しさを保つことができます。

本記事では、ショックフリーザーの基本的な仕組みから、急速冷凍が食品の品質を保つ科学的根拠、業種別の具体的な活用事例、導入時の機器選定ポイントや補助金情報まで、食品事業者が知っておくべき実践的な知識を網羅的に解説します。レストランや食品加工業、製菓店などで食品ロス削減や業務効率化、商品展開の拡大を検討されている方に役立つ情報が得られます。

1. ショックフリーザーとは何か

ショックフリーザーとは、食品を急速に冷凍することで品質劣化を最小限に抑える業務用冷凍機器です。通常の冷凍庫と異なり、強力な冷却能力により短時間で食品を凍結させることができるため、飲食店や食品加工業など幅広い業種で導入が進んでいます。

食品の鮮度や風味を保ったまま長期保存を実現できることから、食品ロスの削減や調理効率の向上にも貢献する機器として注目されています。

1.1 ショックフリーザーの基本概念

ショックフリーザーの「ショック」とは、衝撃や驚きという意味ではなく、急激な温度変化を与えて瞬時に凍結させるという意味を持ちます。通常、-30℃から-40℃程度の低温環境で、強力な送風機能を使って食品の温度を一気に下げます。

一般的な冷凍庫では食品を凍らせるのに数時間かかるところを、ショックフリーザーでは30分から90分程度で凍結を完了させることができます。この冷凍スピードの違いが、食品の品質に大きな影響を与えます。

ショックフリーザーは「ブラストフリーザー」「急速冷凍庫」とも呼ばれ、特に業務用として様々なサイズや機能を持つ製品が開発されています。小規模な飲食店向けのコンパクトなタイプから、食品工場向けの大型設備まで、用途に応じた機器が存在します。

1.2 急速冷凍と緩慢冷凍の違い

食品の冷凍方法は、冷凍速度によって「急速冷凍」と「緩慢冷凍」に分類されます。この違いが食品の品質に決定的な影響を与えるため、理解しておくことが重要です。

項目急速冷凍(ショックフリーザー)緩慢冷凍(通常の冷凍庫)
冷凍時間30分~90分程度数時間~半日以上
温度帯-30℃~-40℃-18℃~-20℃
氷結晶のサイズ微細(5~150μm程度)大きい(数百μm以上)
細胞組織への影響ほとんど破壊されない破壊されやすい
解凍後の品質ドリップが少なく高品質ドリップが多く品質低下

急速冷凍では食品中の水分が一気に凍結するため、氷の結晶が小さくなります。一方、緩慢冷凍では凍結に時間がかかるため、氷の結晶が大きく成長してしまいます。この氷結晶のサイズの違いが、食品の品質を左右する最大の要因となります。

特に重要なのが「最大氷結晶生成帯」と呼ばれる-1℃から-5℃の温度帯です。この温度帯を通過する時間が長いほど、大きな氷結晶が形成されてしまいます。ショックフリーザーは強力な冷却能力でこの温度帯を素早く通過させることができるため、微細な氷結晶を形成し食品の品質を保つことができます。

1.3 食品冷凍における氷結晶の影響

食品中の水分が凍る際に形成される氷結晶のサイズは、解凍後の食品の食感、風味、栄養価に直接的な影響を与えます

緩慢冷凍で形成される大きな氷結晶は、食品の細胞膜や細胞壁を物理的に破壊します。氷は水よりも体積が約9%大きくなるため、大きな氷結晶が形成されると、その膨張圧力で細胞組織が損傷してしまうのです。

細胞が破壊されると、解凍時に以下のような問題が発生します。

  • 細胞内の水分や旨味成分がドリップとして流出する
  • 食感がべちゃべちゃになり、本来の歯ごたえが失われる
  • タンパク質や栄養素が流出し、栄養価が低下する
  • 色や香りが変化し、見た目や風味が劣化する

対して、ショックフリーザーによる急速冷凍で形成される微細な氷結晶は、細胞組織をほとんど傷つけません。氷結晶が細胞の隙間に均一に分散するため、細胞膜の破壊を最小限に抑えられます。

その結果、解凍後も冷凍前とほぼ同じ状態を維持でき、ドリップの量も大幅に減少します。肉や魚であれば弾力のある食感が保たれ、野菜ではシャキシャキ感が残り、調理済み食品でも作りたてに近い品質を再現できます。

このように、氷結晶のサイズをコントロールすることが高品質な冷凍食品を作る鍵であり、それを実現するのがショックフリーザーの最大の特徴といえます。

2. ショックフリーザーが食品の鮮度を保つ理由

ショックフリーザーによる急速冷凍が食品の鮮度を保つ理由は、冷凍過程において食品内部に形成される氷結晶のサイズを極小化できることにあります。通常の冷凍では大きな氷結晶が形成されることで細胞組織が破壊されてしまいますが、ショックフリーザーは-30℃から-40℃の超低温で一気に冷却するため、微細な氷結晶が均一に分散し、食品の細胞構造を損なうことなく冷凍できるのです。

この技術により、解凍時にドリップ(液汁)の流出が抑えられ、食品本来の旨味成分や栄養価、食感、色、香りを維持したまま長期保存が可能になります。食品業界においては、食品ロスの削減や作業効率の向上、品質の均一化といった経営面でのメリットも大きく、飲食店から食品製造業まで幅広く活用されています。

2.1 細胞組織の破壊を防ぐメカニズム

食品を冷凍する際、最も重要な温度帯が-1℃から-5℃の範囲です。この温度帯は「最大氷結晶生成帯」と呼ばれ、食品内部の水分が氷へと変化する過程で最も大きな氷結晶が形成されやすい温度域となっています。

通常の家庭用冷凍庫や業務用冷凍庫では、この温度帯を通過するのに数時間から数十時間かかるため、食品内の水分がゆっくりと凍結します。このとき、水分子が集まって大きな氷の結晶となり、その体積膨張によって細胞膜や細胞壁が物理的に破壊されてしまいます。細胞組織が破壊されると、解凍時に細胞内の水分や旨味成分が外部に流出し、食品の品質が著しく低下します。

一方、ショックフリーザーは強力な冷却能力により、最大氷結晶生成帯を約30分から90分程度で通過させることができます。この急速冷却により、食品内部の水分は大きな氷結晶に成長する時間がないまま凍結し、微細な氷結晶が細胞内外に均一に分散した状態で固定されます。氷結晶のサイズが小さければ細胞組織への物理的ダメージが最小限に抑えられるため、細胞構造がほぼ損なわれることなく保存できるのです。

冷凍方法最大氷結晶生成帯通過時間氷結晶のサイズ細胞組織への影響
緩慢冷凍(家庭用冷凍庫)数時間~数十時間大きい(50~200μm)細胞破壊が顕著
急速冷凍(ショックフリーザー)30分~90分小さい(10~30μm)細胞破壊が最小限

この細胞組織保護のメカニズムにより、魚の刺身は解凍後も透明感のあるプリッとした食感を保ち、肉類は繊維質が損なわれずジューシーさが維持されます。野菜類でも、シャキシャキとした食感やみずみずしさが保たれ、鮮度の高い状態で提供することが可能になるのです。

2.2 旨味成分の流出防止

食品の美味しさを決定づける要素の一つが旨味成分です。アミノ酸(グルタミン酸、イノシン酸など)、核酸関連物質、有機酸、糖類といった水溶性の旨味成分は、細胞内の細胞質や細胞液中に存在しています。通常の冷凍方法では、前述の通り大きな氷結晶によって細胞組織が破壊されるため、解凍時にこれらの旨味成分が「ドリップ」として細胞外に流出してしまいます。

ドリップには旨味成分だけでなく、ビタミンやミネラルなどの栄養素も含まれているため、その流出は味わいの低下だけでなく栄養価の損失にも直結します。実際、緩慢冷凍された食品では、解凍時に食品重量の5~10%程度がドリップとして失われることもあり、これが食品の乾燥やパサつき、味の劣化の原因となります。

ショックフリーザーによる急速冷凍では、細胞構造がほぼ維持されるため、旨味成分は細胞内に閉じ込められたまま保存されます。解凍後も細胞膜の損傷が少ないため、ドリップの発生量は緩慢冷凍の場合と比較して50~80%程度削減されることが知られています。これにより、食品本来の旨味や風味をしっかりと保つことができるのです。

特に高級食材である魚介類では、この効果が顕著に現れます。マグロやブリなどの刺身用魚は、イノシン酸やグルタミン酸といった旨味成分が豊富に含まれていますが、ショックフリーザーで急速冷凍することで、これらの成分を損なうことなく保存でき、解凍後も生の状態と遜色ない味わいを実現できます。肉類においても、肉汁(肉の旨味成分を含む水分)の保持率が高まり、ジューシーで柔らかい食感が維持されます。

2.3 色や香りの変化を抑える効果

食品の見た目の美しさや香りも、品質評価における重要な要素です。食品の色は、野菜や果物に含まれるクロロフィル(葉緑素)やカロテノイド(色素)、肉類に含まれるミオグロビン、魚介類のアスタキサンチンなどの色素成分によって決まります。また、香りは揮発性の芳香成分によってもたらされます。

通常の冷凍では、長時間の冷却過程で酵素反応や酸化反応が進行しやすく、これらの色素成分や芳香成分が変質・分解してしまいます。例えば、緑色野菜は褐変して茶色くなり、肉類は黒ずんだり灰色がかった色に変化します。また、香り成分は揮発性が高いため、冷凍・解凍の過程で失われやすく、風味の劣化につながります。

ショックフリーザーによる急速冷凍では、食品が最大氷結晶生成帯を短時間で通過するため、酵素活性が急速に停止し、酸化反応も最小限に抑えられます。酵素は温度が下がるにつれて活性が低下しますが、完全に停止するには-18℃以下まで冷却する必要があります。急速冷凍により短時間でこの温度に到達できるため、酵素による色素の分解や香り成分の変質を防ぐことができるのです。

色の保持に関しては、特に緑色野菜やハーブ類で効果が顕著です。ほうれん草やブロッコリーなどの緑色は、ショックフリーザーで冷凍することで鮮やかな緑色を維持でき、解凍後も新鮮な見た目を保ちます。肉類では、鮮やかな赤色やピンク色が保たれ、黒ずみや変色が抑えられます。魚介類でも、エビの赤色やサーモンのオレンジ色が美しく保存されます。

香り成分の保持においても、急速冷凍は有効です。例えば、ハーブや柑橘類の皮に含まれる精油成分、コーヒーやパンの焼き立ての香りなど、揮発しやすい芳香成分も、急速に冷却して固定することで閉じ込められます。解凍時にこれらの香り成分が再び放出されるため、冷凍前の新鮮な香りを再現することができるのです。

さらに、ショックフリーザーでは食品表面も急速に冷却されるため、表面の乾燥や冷凍焼けを防ぐことができます。冷凍焼けは、食品表面の水分が昇華(気化)することで起こる現象で、白っぽく変色し、食感や風味が損なわれます。急速冷凍により表面が素早く凍結されることで、水分の昇華を防ぎ、食品の外観と品質を長期間維持できるのです。

3. ショックフリーザーの種類と特徴

ショックフリーザーは、形状や処理方式、冷却能力などによって様々な種類に分類されます。飲食店や食品製造業など、導入する施設の規模や用途に応じて最適な機種を選択することが重要です。ここでは、主要な分類方法とそれぞれの特徴を詳しく解説します。

3.1 縦型と横型の違い

ショックフリーザーの本体形状は、大きく分けて縦型と横型の2種類があります。縦型は省スペースで設置でき、横型はテーブル上で作業できるため、厨房スペースが限られている飲食店に適しています。用途に応じて食品加工工場や大規模なセントラルキッチンで多く採用されています。

縦型ショックフリーザーは、通常の業務用冷蔵庫と同様に扉を手前に開けるタイプが一般的で、棚段数を調整することで様々なサイズの食材に対応できます。高さがあるため天井高の確認が必要ですが、設置面積は0.5〜1平方メートル程度で済むことが多く、既存厨房への後付け導入もしやすい特徴があります。

3.2 バッチ式と連続式

処理方式による分類では、バッチ式と連続式の2つに大別されます。バッチ式は、トレイやコンテナに食品を入れて庫内に設置し、一定時間をかけて冷凍する方式です。飲食店や小規模な食品製造業で最も一般的に使用されているのがこのバッチ式で、多品種少量生産に適しています

バッチ式ショックフリーザーは、1回の処理サイクルが30分から90分程度で、食品の種類や量、初期温度によって冷凍時間を調整します。タイマー機能や温度センサーを搭載した機種では、食品の芯温が-18℃以下になったことを自動検知して冷凍完了を知らせる機能もあります。

連続式ショックフリーザーは、ベルトコンベアやトンネル構造を持ち、食品を連続的に投入して冷凍する大量生産向けの設備です。冷凍食品製造工場や大規模な食品加工施設で採用され、1時間あたり数百キロから数トンの処理能力を持ちます。初期投資は高額ですが、大量生産における効率性とコスト削減効果が期待できます。

処理方式処理能力生産形態導入コスト
バッチ式小〜中(5〜100kg/回)多品種少量低〜中
連続式大(200kg〜数トン/時)少品種大量

3.3 冷却能力による分類

ショックフリーザーは冷却能力によっても分類され、小型機から大型機まで幅広いラインナップがあります。冷却能力は、一度に処理できる食品の重量や、冷凍にかかる時間に直接影響します。

小型機は冷却能力が5〜25kg程度で、個人経営の飲食店や洋菓子店、テイクアウト専門店などで使用されます。価格帯は100万円前後からあり、比較的導入しやすい価格設定となっています。冷却能力が小さい分、食品の芯温を-5℃から-1℃の最大氷結晶生成帯を素早く通過させる性能も限定的になるため、一度に冷凍する量を適切に管理することが重要です

中型機は50〜100kg程度の処理能力を持ち、複数店舗を展開する飲食チェーンや中規模の食品製造業で採用されています。価格は1000万円から2000万円程度が一般的で、業務拡大に合わせて導入を検討する事業者が多い規模です。

大型機は200kg以上の処理能力を持ち、大規模セントラルキッチンや食品加工工場で使用されます。冷凍能力が高いほど庫内の温度を-35℃から-40℃といった極低温に維持でき、より短時間で急速冷凍を実現できます。投資額は4000万円以上となることも多いですが、生産効率と品質維持の両面でメリットがあります。

また、冷却方式としてはエアブラスト方式が主流で、強力なファンで冷気を循環させて食品を冷やします。より高性能な機種では、液体窒素や液体二酸化炭素を使用した極低温冷凍システムもあり、-60℃以下での超急速冷凍が可能ですが、ランニングコストが高くなる傾向があります。

規模処理能力庫内温度価格帯適した事業規模
小型5〜25kg-30〜-40℃100〜500万円個人店舗
中型50〜100kg-35〜-45℃1000〜2000万円中小企業
大型200kg以上-35〜-45℃4000万円以上大規模工場

ショックフリーザーを選定する際には、現在の処理量だけでなく将来的な事業拡大も見据えて、適切な冷却能力を持つ機種を選ぶことが推奨されます。過剰なスペックは初期投資とランニングコストの無駄につながりますが、能力不足では品質低下や処理時間の延長を招くため、専門業者との相談のもと最適な機種を選定することが重要です。

4. 業種別ショックフリーザーの活用法

ショックフリーザーは業種や用途によって活用方法が大きく異なります。それぞれの業態に合わせた最適な使い方を理解することで、食材の鮮度保持や業務効率化、コスト削減などの効果を最大限に引き出すことができます。ここでは主要な業種における具体的な活用事例と導入効果について詳しく解説します。

4.1 レストランやホテルでの活用事例

レストランやホテルでは、仕込み作業の効率化と品質の均一化を実現する手段としてショックフリーザーが広く活用されています。特に高級レストランでは、季節の食材を最盛期に仕入れて急速冷凍することで、年間を通じて安定した品質の料理を提供できるようになります。

具体的な活用方法としては、ソースやフォン、出汁などの仕込み品を大量に作って小分け冷凍することで、営業時の調理時間を大幅に短縮できます。また、魚介類を活け締めした直後に急速冷凍することで、刺身の鮮度を長期間維持することも可能です。

ホテルの宴会部門では、複数の婚礼やパーティーが重なる繁忙期に備えて、事前に料理の一部を調理・冷凍しておくことで、当日の厨房オペレーションを円滑にする用途で導入されています。冷製前菜やデザート類は特にショックフリーザーとの相性が良く、解凍後も作りたての品質を保つことができます。

活用シーン対象食材・料理主な効果
日常営業ソース、フォン、出汁、魚介類仕込み効率化、調理時間短縮
季節食材の保存筍、松茸、ジビエなど通年提供、仕入れコスト削減
宴会対応前菜、デザート、付け合わせ繁忙期対応、品質均一化

4.2 食品加工工場での導入効果

食品加工工場におけるショックフリーザーの導入は、生産性向上と製品ロス削減の両面で大きな効果をもたらします。大規模な製造ラインでは連続式のショックフリーザーが採用され、製造した食品を連続的に急速冷凍することで、大量生産と高品質維持を両立させています。

冷凍食品メーカーでは、調理済みの惣菜や麺類、米飯製品などをショックフリーザーで処理することで、家庭で解凍・加熱した際にも作りたてに近い食感や風味を再現できる製品を提供しています。特にIQF(Individual Quick Freezing)技術と組み合わせることで、野菜や果物を一粒ずつバラバラの状態で冷凍し、必要な分量だけを取り出せる利便性の高い製品開発が可能になります。

また、水産加工業では漁獲した魚介類を船上や水揚げ直後に急速冷凍することで、鮮度を最高の状態を維持し、輸送や保管中の品質劣化を防いでいます。これにより遠隔地への出荷や輸出にも対応できるようになり、販路拡大につながっています。

食品加工工場でのショックフリーザー導入によるコスト削減効果も見逃せません。計画的な生産と冷凍保存により、需要の変動に柔軟に対応でき、過剰生産や製品廃棄を最小限に抑えられます。また、原材料価格が安い時期にまとめて加工・冷凍することで、仕入れコストの最適化も実現できます。

4.3 洋菓子店や和菓子店での利用方法

洋菓子店や和菓子店では、生産計画の平準化と販売機会の拡大を目的としてショックフリーザーが活用されています。特にケーキやタルト、焼き菓子などは急速冷凍することで、解凍後も食感や風味をほとんど損なわずに提供できます。

洋菓子店での具体的な活用例として、スポンジケーキやタルト生地を事前に焼成して急速冷凍しておくことで、注文に応じて迅速にデコレーションケーキを仕上げることができます。また、生クリームやムース類も適切に急速冷凍すれば、解凍後も滑らかな食感を保つことが可能です。季節限定商品やクリスマスケーキなどの繁忙期商品も、計画的に製造して冷凍保存することで、当日の製造負荷を分散できます。

和菓子店では、生菓子や餅類の鮮度保持が課題となりますが、ショックフリーザーを使用することで賞味期限を大幅に延長できます。大福や団子などの餅製品は通常数日で硬化してしまいますが、急速冷凍することで1ヶ月以上の保存が可能となり、製造頻度の削減や計画生産が実現できます。

菓子種類冷凍対象保存期間の目安活用メリット
ケーキ類スポンジ、タルト生地、完成品1〜3ヶ月注文対応の迅速化、繁忙期対策
焼き菓子クッキー、フィナンシェ、マドレーヌ2〜4ヶ月計画生産、品質安定化
和菓子大福、団子、どら焼き1〜2ヶ月製造頻度削減、硬化防止
アイスケーキセミフレッド、ジェラート3〜6ヶ月新商品開発、通販対応

さらに、ショックフリーザーの導入により通信販売への参入も容易になります。急速冷凍した菓子を冷凍宅配便で発送することで、全国のお客様に店舗と同品質の商品を届けることができ、販路拡大と売上増加につながります。

4.4 仕出し弁当業での応用

仕出し弁当業界では、大量の注文に対する対応力強化と食品ロスの削減を実現する手段としてショックフリーザーが重要な役割を果たしています。学校給食や企業向け弁当、イベント用ケータリングなどでは、短時間で大量の弁当を製造する必要があり、事前準備と計画生産が成功の鍵となります。

具体的な活用方法として、煮物や焼き物、揚げ物などの主菜・副菜を事前に調理し、小分けにして急速冷凍しておくことで、注文に応じて必要な量だけを解凍・盛り付けることができます。これにより調理時間の短縮だけでなく、味付けの均一化や調理スタッフの作業負担軽減も実現できます。

季節による需要変動が大きい仕出し弁当業では、閑散期に仕込みを行い冷凍保存することで、繁忙期の製造キャパシティ不足を解消できます。また、急な大口注文や予約キャンセルにも柔軟に対応できるため、ビジネス機会の損失を防ぐことができます。

食材の有効活用という観点でも、ショックフリーザーは大きな効果を発揮します。仕入れた食材を使い切れずに廃棄するロスを防ぎ、賞味期限が近づいた食材を加工・冷凍することで無駄なく活用できます。食品廃棄削減は環境負荷低減にも貢献し、企業の社会的責任を果たす取り組みとしても評価されます。

近年では、冷凍弁当専門のサブスクリプションサービスや高齢者向け配食サービスなど、新たなビジネスモデルにおいてもショックフリーザーが不可欠な設備となっています。栄養バランスの取れた食事を計画的に製造・配送するこれらのサービスでは、急速冷凍技術により品質と安全性を確保しながら効率的な運営を実現しています。

5. ショックフリーザーで冷凍できる食品

ショックフリーザーは、急速冷凍技術により様々な食品の品質を保ちながら冷凍保存することができます。通常の冷凍方法では品質が劣化しやすい食材も、ショックフリーザーを使用することで細胞組織の破壊を最小限に抑え、解凍後も鮮度や食感を維持できます。ここでは食品カテゴリー別に、ショックフリーザーでの冷凍方法と注意点を詳しく解説します。

5.1 肉類や魚介類の冷凍

肉類や魚介類は、ショックフリーザーの効果を最も実感できる食材です。生肉や鮮魚は水分含有量が多いため、通常の冷凍では氷結晶が大きくなり、細胞膜を破壊してドリップの流出を招きます。

牛肉、豚肉、鶏肉などの食肉類は、マイナス30度からマイナス40度の環境で90分以内に中心温度をマイナス18度以下まで下げることで、肉の繊維組織を損なわず冷凍できます。ステーキ用の厚切り肉やローストビーフ用のブロック肉も、適切に急速冷凍すれば解凍後の食感や肉汁の保持率が大幅に向上します。

魚介類については、刺身用の鮮魚、切り身、エビ、イカ、貝類など幅広い食材に対応できます。特に脂ののった青魚や白身魚は、急速冷凍することで酸化を防ぎ、鮮度を長期間保つことが可能です。マグロやサーモンなどの刺身用魚は、購入直後にショックフリーザーで処理することで、数週間から数ヶ月間品質を維持できます。

食材冷凍前の処理推奨冷凍時間保存期間の目安
牛肉(ステーキ)水気を拭き取る、真空包装60〜90分3〜6ヶ月
鶏肉(もも肉)余分な脂を除去、小分け包装60〜90分3〜4ヶ月
刺身用マグロ水気を完全に拭き取る、ラップ密着45〜60分2〜3ヶ月
エビ(殻付き)背わたを取る、水洗い後水気除去30〜45分2〜3ヶ月

5.2 野菜や果物の処理方法

野菜や果物は水分含有量が高く、細胞壁が比較的脆弱なため、冷凍方法によって品質に大きな差が出る食材です。ショックフリーザーを使用することで、栄養価や色味、食感を最大限保持したまま冷凍することができます。

葉物野菜であるほうれん草や小松菜は、ブランチング(軽く茹でる下処理)をした後に急速冷凍することで、色の変色を防ぎビタミン類の損失を最小限に抑えられます。ブロッコリーやカリフラワーなども同様の処理が効果的です。

根菜類のにんじん、大根、じゃがいもなどは、用途に応じてカットしてから冷凍すると使い勝手が向上します。じゃがいもは生のまま冷凍すると食感が変わるため、茹でるかマッシュ状にしてから冷凍するのが推奨されます。

果物については、ベリー類(イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー)やマンゴー、桃などが特にショックフリーザーに適しています。洗浄後に水気を完全に除去し、重ならないようにトレーに並べて冷凍することで、個々の果実が分離した状態で保存できます。バナナはスライスしてから冷凍すると、スムージーなどに使いやすくなります。

きのこ類は洗わずに汚れを拭き取り、用途に応じてカットしてから冷凍します。しいたけ、えのき、しめじなどは冷凍することで旨味成分が増すという利点もあります。

5.3 調理済み食品の冷凍保存

調理済み食品のショックフリーザー冷凍は、飲食店や食品加工業において作業効率と品質管理の両面で大きなメリットをもたらします。調理後の急速冷凍により、味や食感を保ちながら計画的な生産と提供が可能になります。

煮物やカレー、シチューなどの汁物料理は、調理後に粗熱を取り、適切な容器に小分けしてから急速冷凍します。この際、空気に触れる面積を最小限にし、できるだけ平らにして冷凍することで、均一に素早く冷却できます。解凍後も風味が保たれ、作りたての味に近い状態で提供できます。

ハンバーグやミートボール、餃子などの成形食品は、焼成前または焼成後のどちらでも冷凍可能です。焼成前に冷凍する場合は、形を整えてから個別に急速冷凍し、凍結後にまとめて保存します。焼成後に冷凍する場合は、調理後すぐに粗熱を取り、できるだけ早く冷凍処理することで品質劣化を防ぎます。

パスタソースやグラタン、ラザニアなどの洋食メニューも急速冷凍に適しています。特にクリームソースやチーズを使用した料理は、通常の冷凍では分離しやすいですが、ショックフリーザーなら分離を最小限に抑えられます。

調理済み食品冷凍前の温度容器の選択解凍方法
カレー・シチュー20度以下密閉容器、厚さ3cm以下冷蔵庫解凍後再加熱
ハンバーグ(焼成後)20度以下個別ラップ包装電子レンジまたはオーブン
餃子(焼成前)常温トレーで個別冷凍凍ったまま調理
グラタン20度以下アルミ容器オーブンで直接加熱

揚げ物については、フライドチキンや唐揚げ、コロッケなどを揚げた後に急速冷凍することで、再加熱時のサクサク感をある程度保つことができます。ただし、衣の食感は若干劣化するため、提供前の再加熱方法を工夫する必要があります。

5.4 スイーツやパンの冷凍技術

スイーツやパン類の冷凍は、パティシエやブーランジェにとって計画生産と品質維持を両立させる重要な技術となっています。ショックフリーザーを使用することで、デリケートな食感や風味を保ちながら保存期間を延ばすことができます。

ケーキ類では、スポンジケーキ、チーズケーキ、ムースケーキなどが急速冷凍に適しています。デコレーションケーキは、クリームやフルーツを飾った完成状態で冷凍でき、解凍後もほぼ作りたての状態を再現できます。特に生クリームのデコレーションケーキは、マイナス35度以下で急速冷凍することで、クリームの分離や氷結晶の発生を防ぎます。

タルトやパイ生地は、焼成前の生地状態または焼成後のどちらでも冷凍可能です。焼成前に冷凍する場合は型に敷いた状態で急速冷凍し、焼成時は凍ったまま焼き上げることで、サクサクとした食感を実現できます。フルーツタルトは、カスタードクリームとフルーツを組み合わせた完成品も急速冷凍により品質を保てます。

パン類については、食パン、菓子パン、惣菜パン、クロワッサンなど様々な種類が冷凍可能です。焼きたてのパンを粗熱が取れたらすぐに急速冷凍することで、水分と風味を閉じ込め、解凍後も焼きたてに近い食感と香りを楽しめます。クロワッサンやデニッシュなどの層状構造を持つパンは、特に急速冷凍の効果が顕著で、サクサク感の保持率が高くなります。

和菓子では、大福やどら焼き、饅頭などが冷凍に適しています。餡子は冷凍しても品質変化が少なく、もち生地も急速冷凍することで固くなりにくい特性があります。ただし、解凍方法によって食感が変わるため、自然解凍または短時間の常温放置が推奨されます。

アイスクリームやジェラートの製造過程でも、ショックフリーザーは重要な役割を果たします。製造直後に急速冷凍することで、氷結晶を微細に保ち、なめらかな食感を実現できます。ソルベやシャーベットも同様に、急速冷凍により理想的なテクスチャーを作り出せます。

スイーツ・パン冷凍タイミング保存期間解凍のコツ
デコレーションケーキ完成後すぐ1〜2ヶ月冷蔵庫で3〜4時間
チーズケーキ焼成後粗熱除去後2〜3ヶ月冷蔵庫で一晩
クロワッサン焼成後30分以内2〜3週間オーブンで再加熱
食パン焼成後1時間以内1〜2ヶ月トースターで加熱
大福製造後すぐ1〜2ヶ月常温で30分〜1時間

マカロンやクッキー、焼き菓子類も急速冷凍により長期保存が可能です。特にマカロンは冷凍することで生地が落ち着き、味がなじむというメリットもあります。チョコレート製品は温度変化によるブルーム(白い粉状の結晶)が発生しやすいため、急速冷凍後は一定温度で保管することが重要です。

6. ショックフリーザーの導入ガイド

ショックフリーザーを導入する際には、自社の事業規模や冷凍する食品の種類、予算などを総合的に判断する必要があります。この章では、機器選定から補助金の活用まで、導入に必要な情報を詳しく解説します。

6.1 機器選定のポイント

ショックフリーザーを選定する際には、まず1日あたりの冷凍処理量を正確に把握することが最も重要です。処理量に対して能力が不足していると、冷凍に時間がかかり急速冷凍の効果が得られません。逆に過剰な能力は初期投資の無駄につながります。

設置スペースも重要な選定基準です。縦型は省スペースですが一度に処理できる量が限られます。横型は広いスペースが必要ですが、大量処理に適しています。厨房や作業場のレイアウトを測定し、搬入経路や扉の幅も確認しておきましょう。

冷凍する食品の種類によっても最適な機種は異なります。液体やソース類を扱う場合はブラストチラーとの複合機能を持つ機種が便利です。焼き菓子や生菓子を扱う洋菓子店では、形状を崩さずに冷凍できる風量調整機能があると理想的です。

ランニングコストも見落とせません。電気代は機種によって大きく異なり、年間で数十万円の差が生じることもあります。エネルギー効率を示す「COP(成績係数)」が高い機種を選ぶことで、長期的なコスト削減が可能です。

選定基準確認事項注意点
処理能力1日の冷凍量、ピーク時の処理量繁忙期を基準に余裕を持った能力を選ぶ
設置スペース機器寸法、搬入経路、扉幅放熱スペースも含めて確保が必要
冷凍方式エアブラスト式、液体窒素式など食品の種類や形状に合わせて選択
温度範囲到達温度、冷凍速度-35℃以下まで冷却できる機種が理想的
操作性タッチパネル、プログラム設定機能スタッフの習熟度も考慮する
メンテナンス清掃のしやすさ、部品供給体制定期メンテナンスの費用も確認

6.2 補助金や助成金の活用

ショックフリーザーの導入には数百万円の投資が必要ですが、各種補助金や助成金を活用することで導入コストを大幅に削減できます。タイミングや要件を事前に確認して、計画的に申請を進めましょう。

代表的なのが「ものづくり補助金」です。生産性向上や革新的なサービス開発を目指す中小企業が対象で、機械装置費の一部が補助されます。補助率は通常2分の1、小規模事業者は3分の2で、補助上限は申請枠によって異なりますが1,000万円から数千万円まであります。年に数回の公募があり、事業計画書の提出が必要です。

「事業再構築補助金」も活用できる可能性があります。新分野展開や業態転換を行う事業者が対象で、例えば店内飲食中心だった飲食店が冷凍食品のEC販売を始める場合などに該当します。補助額が大きいため、大型のショックフリーザー導入にも対応できます。

都道府県や市区町村が独自に実施する補助金制度も見逃せません。食品事業者向けの設備投資補助や、地域経済活性化を目的とした助成金など、地域によって様々な制度があります。所在地の自治体ホームページや商工会議所で情報を確認しましょう。

補助金申請では事業計画の説得力が重要です。ショックフリーザー導入による売上増加や生産性向上を具体的な数値で示す必要があります。フードロス削減や労働時間短縮など、社会的意義も併せてアピールすると採択率が高まります。

なお、補助金は後払いが基本です。一旦全額を自己資金で支払い、事業完了後に補助金が入金されます。資金繰りには十分注意し、必要に応じて金融機関の融資も検討しましょう。

7. ショックフリーザー使用時のコツと注意事項

ショックフリーザーは高性能な機器ですが、その能力を最大限に引き出すためには適切な使用方法を理解することが不可欠です。食品の種類や状態に応じた前処理、包装方法、そして解凍時の配慮によって、冷凍品質は大きく変わります。ここでは実務で役立つ具体的なコツと注意すべきポイントを詳しく解説します。

7.1 効果的な冷凍のための前処理

ショックフリーザーで冷凍する前の食品処理は、最終的な品質を左右する重要な工程です。食品の温度を事前に下げておくことで、ショックフリーザーの冷凍効率が高まり、より微細な氷結晶を形成できます

調理済み食品を冷凍する場合は、粗熱を取った後、冷蔵庫で十分に冷却してからショックフリーザーに投入することが基本です。熱いまま冷凍すると庫内温度が上昇し、他の食品にも悪影響を及ぼします。目安としては中心温度が20℃以下になってから冷凍を開始するのが理想的です。

7.1.1 食品別の前処理ポイント

食品カテゴリ前処理方法注意点
肉類ドリップを拭き取り、空気を抜いて真空包装筋や脂肪の多い部位は薄く切ると冷凍ムラを防げる
魚介類内臓を取り除き、血合いを洗浄してから水気を完全に拭き取る生臭さの原因となる水分や血液は徹底的に除去する
野菜ブランチング処理を施し、急冷してから水分を切る酵素による変色や栄養損失を防ぐため、短時間の加熱処理が有効
スイーツデコレーションを固定し、形が崩れないようトレイに並べるクリームやフルーツの配置が変わらないよう慎重に扱う
調理済み食品小分けにして浅い容器に入れ、表面積を大きくする厚みは3cm以下にすると冷凍時間を短縮できる

野菜のブランチング処理は、沸騰したお湯に30秒から2分程度浸けることで、酵素の働きを止めて変色や風味の劣化を防ぎます。処理後はすぐに氷水で冷やし、水気をしっかり切ることが重要です。

また、食品の厚みや大きさを均一にすることで、冷凍ムラを防ぎ、全体を均等に急速冷凍できます。特に肉や魚は厚みのある部分と薄い部分で冷凍速度が異なるため、できるだけ均一な厚さに調整するか、厚みに応じて冷凍時間を調整する必要があります。

7.2 適切な包装方法

包装は冷凍品質の保持に直結する要素です。不適切な包装は冷凍焼けや乾燥、臭い移りの原因となり、せっかくのショックフリーザーの効果を損なってしまいます。

7.2.1 真空包装のメリットと実施方法

真空包装は空気を遮断することで酸化を防ぎ、冷凍焼けを大幅に軽減します。真空パック機を使用して食品と袋の間の空気を99%以上除去することで、保存期間を通常の1.5倍から2倍に延長できます

真空包装の手順は以下の通りです。まず食品を専用の真空袋に入れ、開口部を真空パック機にセットします。機械が自動的に空気を吸引し、最後に熱シールで袋を密閉します。この際、液体や水分が多い食品は吸引時に液漏れする可能性があるため、事前に冷凍して固めるか、袋の端を折り返してから真空にするなどの工夫が必要です。

7.2.2 包装材料の選び方

ショックフリーザーでの使用に適した包装材料を選ぶことも重要です。耐冷性があり、水分や空気を通しにくい素材が理想的です。

包装材料適した用途特徴
真空包装袋肉類、魚介類、調理済み食品酸素を遮断し長期保存に最適、密着性が高い
ジッパー付き冷凍袋野菜、小分け食材再利用可能で小分けに便利、空気を手で抜きやすい
アルミトレイ+ラップスイーツ、形を保ちたい食品熱伝導率が高く急速冷凍に有利、形状維持に優れる
プラスチック密閉容器液体やソース類液漏れを防ぎ、積み重ね保管が可能

包装時は食品同士が重ならないように平らに並べ、空気が入らないよう密着させることがポイントです。また、包装前に食品名と冷凍日を記載したラベルを貼ることで、在庫管理がしやすくなり、先入れ先出しを徹底できます

液体やソースを冷凍する場合は、膨張を考慮して容器の8割程度までにとどめます。完全に満たすと凍結時の体積増加で容器が破損する可能性があります。

7.3 解凍時の注意点

ショックフリーザーで急速冷凍した食品も、解凍方法を誤ると品質が大きく低下します。解凍プロセスは冷凍と同じくらい重要であり、適切な方法を選択することで食品本来の味や食感を最大限に保つことができます。

7.3.1 推奨される解凍方法

最も品質を保てる解凍方法は冷蔵庫での緩慢解凍です。冷蔵庫内で時間をかけてゆっくり解凍することで、ドリップの流出を最小限に抑え、旨味成分の損失を防ぎます。解凍時間の目安は食品の大きさや厚みによりますが、500gの肉であれば8時間から12時間程度を見込むとよいでしょう。

急ぎの場合は流水解凍も有効です。密閉した状態のまま流水にさらすことで、冷蔵庫解凍よりも短時間で解凍できます。ただし、水温は15℃以下を保つことが重要で、常温の水では細菌繁殖のリスクが高まります。

7.3.2 避けるべき解凍方法

常温解凍は表面と内部の温度差が大きくなり、表面だけが細菌繁殖の危険温度帯に入ってしまうため避けるべきです。特に夏場は室温が高く、食中毒のリスクが急激に高まります。

電子レンジでの解凍は便利ですが、部分的な加熱ムラが生じやすく、一部が調理されてしまうことがあります。どうしても電子レンジを使う場合は、解凍モードを使用し、途中で向きを変えるなどして均一に解凍するよう心がけます。

7.3.3 食品別の解凍ポイント

食品推奨解凍方法調理時のコツ
肉類冷蔵庫で8〜12時間かけて解凍完全に解凍せず、半解凍状態でカットすると扱いやすい
魚介類冷蔵庫解凍または氷水解凍刺身用は半解凍で切り分け、加熱用は完全解凍してから調理
野菜多くは解凍せず凍ったまま調理可能炒め物や煮物は冷凍のまま投入することで食感を保てる
パン・スイーツ常温で30分〜1時間自然解凍オーブンやトースターで軽く温めると焼きたての食感が復活
調理済み食品冷蔵庫解凍後に再加熱中心温度75℃以上で1分間以上加熱して殺菌

再冷凍は品質劣化と食中毒リスクの観点から原則として避けるべきです。一度解凍した食品は細胞組織が破壊され、再び凍らせると更なるダメージを受けます。やむを得ず再冷凍する場合は、加熱調理してから冷凍する方法を選びましょう。

また、解凍した食品から出るドリップには旨味成分が含まれているため、スープや煮込み料理に活用すると無駄なく使えます。ただし、生の肉や魚のドリップには細菌が含まれる可能性があるため、必ず加熱調理に使用することが前提です。

8. まとめ

ショックフリーザーは、-30℃から-40℃の超低温で食品を急速冷凍する業務用冷凍機器です。通常の冷凍庫と比較して、約30分から90分という短時間で食品の中心温度を-18℃以下まで下げることができます。

この急速冷凍技術が食品の鮮度を保つ理由は、氷結晶の大きさにあります。緩慢冷凍では大きな氷結晶が形成され、食品の細胞組織を破壊してしまいますが、ショックフリーザーによる急速冷凍では微細な氷結晶が均一に生成されるため、細胞の損傷を最小限に抑えられます。その結果、解凍後も旨味成分の流出が少なく、色や香り、食感を冷凍前に近い状態で保つことができます。

ショックフリーザーには縦型・横型などの形状の違いや、バッチ式・連続式といった処理方式の違いがあり、業務内容や処理量に応じて最適な機種を選定することが重要です。レストラン、ホテル、食品加工工場、洋菓子店、仕出し弁当業など、幅広い業種で食品ロスの削減、計画的な仕込み、品質の均一化に活用されています。

肉類、魚介類、野菜、果物、調理済み食品、スイーツ、パンなど、ほとんどの食品がショックフリーザーで冷凍可能ですが、食品ごとに適切な前処理や包装方法を実施することが、冷凍品質を高めるポイントとなります。

導入を検討する際は、処理能力、設置スペース、予算を考慮して機器を選定し、自治体や国の補助金・助成金制度を活用することで、初期投資の負担を軽減できます。適切な使用方法と注意事項を守ることで、ショックフリーザーは食品ビジネスにおける強力な品質管理ツールとなります。

9. 【もう「風」で食材を乾かさない】ワンランク上の急速冷凍なら「3Dフリーザー®」

一般的なショックフリーザー(エアブラスト方式)は、強力な冷風を直接吹き付けることで急速冷凍を実現しています。しかし、その「風」が食材から水分を奪い、「乾燥(冷凍焼け)」や「目減り」を引き起こしてしまうことがあるのをご存知でしょうか?

「急速冷凍しているのに、解凍するとパサつく」 「ラップや真空パックの手間を減らしたい」 「生クリームやスポンジのしっとり感をそのまま残したい」

もし、このような課題をお持ちなら、KOGASUNの「3Dフリーザー®」が最適解です。

9.1 3Dフリーザーが一般的なショックフリーザーと違う点

3Dフリーザーは、従来の「一方向から強い風を当てる」方式ではなく、「高湿度の冷気で包み込む」独自の特許冷却技術を採用しています。

  • 乾燥知らずの高湿度冷却: 庫内の湿度を保ちながら冷やすため、食材の水分を奪いません。デリケートなケーキや、乾燥しやすいパン生地も、裸のままで高品質に冷凍可能です。
  • 「包み込む」からムラがない: 3D冷気が食材を全方向から包み込むため、トレーの場所による冷凍ムラが発生しません。
  • 予冷不要でアツアツのまま冷凍: 90℃までの高温食材をそのまま投入可能。菌が繁殖しやすい温度帯を一気に通過させるため、衛生面でも非常に優れています。

ただ凍らせるだけでなく、「解凍後の品質」に徹底的にこだわるシェフやパティシエ、食品工場長から選ばれています。

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よくある質問(FAQ)

ショックフリーザーは家庭用冷凍庫と何が違いますか?

ショックフリーザーは-30℃から-40℃の超低温で30分から90分という短時間で食品を凍結させるのに対し、家庭用冷凍庫は-18℃程度で数時間から半日以上かけてゆっくり凍結します。
この冷凍速度の違いにより、ショックフリーザーでは微細な氷結晶が形成されて細胞組織の破壊を最小限に抑えられ、解凍後も食品の食感や旨味をしっかり保てます。

急速冷凍した食品はどのくらいの期間保存できますか?

食品の種類によって保存期間は異なりますが、牛肉や鶏肉は3ヶ月から6ヶ月、刺身用の魚介類は2ヶ月から3ヶ月、野菜類は2ヶ月から4ヶ月程度が目安です。
ケーキやパンなどのスイーツ類は1ヶ月から3ヶ月、調理済み食品は1ヶ月から2ヶ月ほど品質を維持できます。
ただし真空包装などの適切な包装をしていることが前提となります。

ショックフリーザーの導入にはどのくらいの費用がかかりますか?

機器の規模や性能によって価格帯は大きく異なります。
小型機は100万円から500万円程度、中型機は1000万円から2000万円程度、大型機は4000万円以上となることもあります。
初期投資に加えて電気代などのランニングコストも考慮する必要がありますが、ものづくり補助金や事業再構築補助金などの公的支援を活用することで導入コストを大幅に抑えられます。

どんな食品でも急速冷凍できますか?

肉類、魚介類、野菜、果物、調理済み食品、スイーツ、パンなど、ほとんどの食品が急速冷凍に対応できます。
ただし、レタスやキュウリなど水分含有量が非常に多い生野菜の一部は、冷凍すると細胞が壊れて食感が大きく変わってしまうため不向きです。
また、マヨネーズや生クリームなどの乳化食品は冷凍により分離する可能性があるため、用途や処理方法に工夫が必要になります。

急速冷凍した食品を解凍するときのコツはありますか?

最も品質を保てるのは冷蔵庫でゆっくり解凍する方法で、500gの肉なら8時間から12時間程度かけて解凍するのが理想的です。
急ぐ場合は密閉した状態で15℃以下の流水にさらす方法も有効です。
常温解凍は細菌繁殖のリスクが高いため避けるべきで、電子レンジ解凍も加熱ムラが生じやすいため注意が必要です。
野菜類の多くは解凍せずに凍ったまま調理に使うことで食感を保てます。

ショックフリーザーを導入すると食品ロスを減らせますか?

店舗や工場でショックフリーザーを導入すると、食品ロスの大幅な削減が期待できます。
仕入れた食材を使い切れずに廃棄する問題を解消し、季節食材を最盛期にまとめて仕入れて急速冷凍することで通年活用できるようになります。
また、仕込み品を計画的に製造して保存できるため、需要変動にも柔軟に対応でき、過剰生産や製品廃棄を最小限に抑えられます。
飲食店では売れ残りを翌日以降に提供できるため、経済的にも環境的にもメリットが大きい設備投資といえます。

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