
職人の後継者不足、日持ちしない生菓子の廃棄(食品ロス)、早朝からの仕込み作業、そして原材料費の高騰——。和菓子店・工房の経営者の皆様が直面する課題は、ますます深刻化しています。
特に和菓子は、「餅の柔らかさ」や「あんこの瑞々しさ」といった繊細な食感が命。「冷凍すると餅が硬くなる」「解凍時に水っぽくなる」といった過去の経験から、冷凍技術にネガティブなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし今、業界で注目を集めているのが「急速冷凍技術」です。従来の緩慢な冷凍とは異なり、和菓子の命である食感と風味をほぼ完璧に保ったまま長期保存が可能になりました。
この記事では、業務用急速冷凍機が、和菓子店の伝統と経営をどのように守り、発展させるのか。具体的なメリットを徹底解説します。
Contents
急速冷凍とは?従来の冷凍との決定的な違い

「最大氷結晶生成帯」を最速で通過する技術
急速冷凍の最大の特徴は、食品内部の水分が凍る温度帯(-1℃~-5℃)を非常に速く通過する技術です。この温度帯を素早く通過することで、食品内部の水分が微細な氷の結晶となり、細胞組織の破壊を最小限に抑えます。
和菓子における従来冷凍(緩慢冷凍)の問題点
和菓子の主原料である餅や団子は、デンプンでできています。このデンプンは「0℃~-7℃」の温度帯をゆっくり通過すると、「白老化(β化)」と呼ばれる現象が起き、硬くパサパサになってしまいます。これが「冷凍した餅は美味しくない」最大の理由です。
- デンプンが老化し、餅や求肥が硬くなる
- 大きな氷の結晶が細胞を壊し、解凍時にあんこから水分が抜ける(離水)
- 風味が損なわれ、作りたての食感が失われる
急速冷凍のメカニズム
- マイナス30℃以下の超低温で一気に凍結
- デンプンが老化する温度帯を一瞬で通過
- 微細な氷結晶が均一に形成され、細胞を傷つけない
- 解凍後も、作りたてのもちもち感とあんこの滑らかな舌触りを維持
この技術革新により、「和菓子は冷凍に不向き」という常識が覆されたのです。
メリット①:作りたての食感(餅・あんこ)と風味を完全再現
「職人の技」をそのまま閉じ込める冷凍技術
急速冷凍機を導入する最大のメリットは、和菓子の命である食感・風味・見た目を、作りたてとほぼ同じレベルで保持できることです。
品質保持が実現する理由
①デンプンの老化(硬化)防止
餅や求肥が硬くなる原因「デンプンの老化」が起こる温度帯を高速で通過。解凍後も、つきたてのような柔らかさ(もちもち感)を維持します。
②あんこの離水・パサつき防止
あんこ内部の水分を微細な氷結晶で凍結。細胞を壊さないため、解凍時の離水(水分が抜ける)がなく、滑らかな舌触りと瑞々しい風味を保持します。
③色と香りの維持
抹茶の色褪せや、よもぎ・桜葉といった季節素材の繊細な香りを長期間キープ。練り切りなどの美しい意匠も損ないません。
具体例
生菓子(大福・団子):餅や求肥の柔らかさと、あんこの瑞々しさをそのまま保存。
練り切り:繊細なデザインと滑らかな口当たりを維持。
季節菓子:桜餅、柏餅、栗きんとんなど、旬の風味を閉じ込める。
羊羹・水ようかん:離水を防ぎ、つるんとした食感を保つ。
これにより、「いつ食べても美味しい」という顧客の信頼を獲得し、職人の技を最高の状態でお客様に届けることができます。
メリット②:生菓子の廃棄ロスをゼロに
「本日中にお召し上がりください」の呪縛から解放
消費期限が当日~翌日という生菓子の宿命は、和菓子店経営における最大の課題の一つです。
急速冷凍による食品ロス削減効果
①売れ残り廃棄の撲滅
「本日中」の生菓子も、売れ残る前に急速冷凍すれば、品質を落とさず「在庫」に変えられます。
②天候不順による需要減に対応
雨天や猛暑などで客足が鈍った日も、製造した商品を無駄にしません。廃棄コストと食材費の二重削減が実現します。
③催事・イベント販売の最適化
百貨店催事やイベント出店時も、需要予測のズレによる売れ残りを心配する必要がありません。余った商品は持ち帰り、冷凍保存して次の機会に販売できます。
コスト削減の例
小規模和菓子店(売上月150万円):生菓子の廃棄ロスを50%削減し、年間60万円以上のコストカットに成功
メリット③:人手不足・後継者問題を緩和し、労働環境を改革
「職人の技」を冷凍保存し、働き方を変える
2025年現在、菓子製造業もまた、深刻な人手不足と職人の高齢化に直面しています。急速冷凍機は、この構造的な課題に対する強力な解決策となります。
人手不足解消のメカニズム
①技術の標準化と継承
熟練職人が最高の状態で作った和菓子を急速冷凍。販売スタッフや新人でも、解凍・包装だけで最高品質の商品を提供可能になります。
②属人化の解消
「あの職人さんがいないと作れない」という状況を解消。職人の休日確保や急な欠勤にも柔軟に対応できます。
③労働環境の大幅改善
過酷な早朝作業を削減し、計画的な生産スケジュールを組むことが可能に。ワークライフバランスが改善し、スタッフの定着率向上や、若手の採用にも好影響を与えます。
導入効果の例
和菓子工房A店:早朝4時出勤だった製造を7時出勤に変更。週休2日制を実現し、若手職人の採用に成功。
メリット④:「まとめ製造」で生産性を劇的に向上
「時間の貯金」で繁忙期を乗り越える
和菓子店は、季節のイベントや天候によって需要が大きく変動します。急速冷凍機があれば、時間を「貯金」して、必要な時に「引き出す」ことができます。
仕込み効率化の具体策
①閑散期の有効活用
手が空く時期に、あんこや生地、季節商品をまとめて製造し、急速冷凍ストック。
②繁忙期への事前準備
お彼岸、お盆、年末年始など、需要が集中する繁忙期に向けて計画的に生産。当日の作業は仕上げと販売に集中できます。
③早朝作業の大幅削減
従来は当日早朝に行っていた製造作業を、前日や数日前の空き時間に行うことが可能に。スタッフの肉体的・精神的負担を大幅に軽減します。
時間削減の例
和菓子店B店:お彼岸の「おはぎ」の製造ピークを分散。当日の製造作業時間を50%削減し、行列による品切れも防止。
メリット⑤:全国への販路拡大(EC・通販)が実現
「日持ちしない」弱点を「冷凍」で克服
「うちの生菓子を遠方のお客様にも届けたい」——そんな想いを実現できるのが急速冷凍です。
販路拡大の新しい可能性
①EC・通販事業の実現
これまで日持ちの問題で不可能だった「生菓子の全国発送」が可能に。新たな収益の柱を確立できます。
②ふるさと納税返礼品・お取り寄せ
「冷凍和菓子」として商品化し、地域の特産品として全国にアピール。店舗の認知度向上にも繋がります。
③卸売・BtoB展開
地域のカフェ、レストラン、ホテル、旅館のデザートとして、品質を保ったまま卸売が可能になります。
④新商品の開発
冷凍を前提とした新しい和菓子(アイス大福、冷凍くず餅、半解凍で楽しむ練り切りなど)の開発も可能になります。
成功例
地方の和菓子店C店:「冷凍生大福」をオンライン販売し、月商200万円の第二の収益源に。
メリット⑥:旬の素材を確保し、原価管理を最適化
「旬」の美味しさと価格を一年中キープ
和菓子に欠かせない季節の素材は、価格変動が大きいのが悩みです。急速冷凍機は、戦略的な仕入れを可能にします。
原価管理の最適化手法
①旬の素材を最安値で大量仕入れ
栗、いちご、よもぎ、梅など、価格が最も安く品質が最も良い「旬」の時期に大量仕入れ。
②自家製素材の冷凍ストック
旬の素材をペーストやコンポートに加工し、急速冷凍。通年で高品質な「自家製」の素材を使用でき、他店との差別化にも繋がります。
③原材料高騰リスクの回避
小豆や砂糖、米粉などの価格高騰時でも、冷凍ストックを活用することで影響を最小限に抑え、原価率を安定させられます。
メリット⑦:衛生管理レベルの向上とHACCP対応
「食の安全・安心」を提供する冷凍技術
食品衛生は経営の生命線です。特に水分と糖分を多く含む生菓子は、衛生管理が重要です。
衛生管理の向上ポイント
①細菌の繁殖を完全停止
マイナス30℃以下で急速冷凍することで、細菌の活動を完全に停止。食中毒の原因となる微生物の増殖を防止し、長期保存でも安全性を維持します。
②添加物不要での長期保存
保存料や酸化防止剤を使わずに日持ちさせることが可能に。「無添加」「素材本来の味」を求める健康志向の顧客に強くアピールできます。
③HACCPへの対応
製造・冷凍・保管のプロセス(温度管理)を明確化できるため、HACCPに準拠した衛生管理体制の構築が容易になります。
補助金・助成金の活用方法
利用可能な主な支援制度
項目 | 内容 |
---|---|
補助上限額 |
通常枠:750万円〜2,500万円
(従業員数により異なる) グローバル枠:3,000万円 |
補助率 |
中小企業:1/2 小規模企業者:2/3 |
項目 | 内容 |
---|---|
補助額(従業員数別) |
|
補助率 | 1/2 |
補助下限額 | 750万円 |
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 従業員20人以下の小規模事業者 (商業・サービス業は5人以下) |
補助上限額 |
通常枠:50万円 特例適用後:最大250万円 |
補助率 | 2/3 |
より詳しい情報については以下のページをご参照ください。
まとめ:急速冷凍機導入がもたらす7つの経営改革
本記事でご紹介した通り、業務用急速冷凍機の導入は、和菓子店・工房の経営に以下のような変革をもたらします。
メリット 総まとめ
- 品質維持:餅のもちもち感、あんこの滑らかさを完全再現
- コスト削減:生菓子の廃棄ロスを大幅に削減
- 人手不足解消:職人技を冷凍保存し、労働環境を改善
- 業務効率化:「まとめ製造」で生産性向上と早朝作業削減
- 販路拡大:EC・通販で全国に生菓子を発送可能
- 原価安定化:旬の素材を最安値で確保
- 衛生管理向上:HACCP対応と食中毒リスク低減
導入を検討すべき要素
- 生菓子の廃棄ロス(食品ロス)に悩んでいる
- 職人の高齢化や後継者不足が課題だ
- 早朝からの仕込み作業を改善したい
- 通販(EC)で全国に販路を広げたい
- お彼岸や年末年始の製造が追いつかない
- HACCPに対応し、衛生管理を徹底したい
一つでも当てはまる方は、ぜひ急速冷凍機の導入をご検討されてみてはいかがでしょうか。
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