「急速冷凍機で凍らせると、なぜ食品の味が落ちないの?」 「普通の冷凍庫と、一体何が違うのだろう?」
急速冷凍機の導入を検討している方なら、誰もが一度は抱く疑問ではないでしょうか。急速冷凍が食品の品質を保つことは知っていても、その「仕組み」や「原理」までを深く理解している方は少ないかもしれません。
この仕組みを理解することは、自社に最適な冷凍機を選定し、その性能を最大限に引き出すために非常に重要です。なぜなら、冷凍する食品の特性によって、最適な「凍らせ方」は異なるからです。
この記事では、業務用急速冷凍機の専門メーカーであるKOGASUNが、急速冷凍の科学的な原理から、代表的な冷凍方式ごとの仕組みまで、図解を交えながら分かりやすく解説します。この知識が、あなたのビジネスに最適な一機を見つけるための羅針盤となれば幸いです。
Contents
すべての鍵は「氷の結晶」の大きさにあり
急速冷凍と、家庭用冷蔵庫などで行われる「緩慢冷凍」。両者を分ける決定的な違いは、食品内部にできる「氷の結晶の大きさ」です。
食品の主成分は「水」です。水は0℃で凍り始め、-1℃から-5℃の温度帯で最も氷の結晶が大きくなります。この温度帯を「最大氷結晶生成温度帯」と呼びます。
•緩慢冷凍の場合: 最大氷結晶生成温度帯をゆっくりと通過するため、水分が徐々に集まり、大きく鋭い氷の結晶が成長します。この大きな氷結晶が、食品の細胞膜を突き破り、破壊してしまいます。
•急速冷凍の場合: 最大氷結晶生成温度帯を非常に速く通過するため、水分が集まる時間がなく、食品の細胞内外に無数の微細な氷の結晶が生成されます。これにより、細胞膜の破壊を最小限に抑えることができます。
解凍時に流れ出る「ドリップ」の正体は、この破壊された細胞から流れ出た水分と、そこに含まれる旨味成分や栄養素なのです。つまり、氷の結晶をいかに小さく抑えるか、これが急速冷凍の品質を決定づける最も重要な原理です。

業務用急速冷凍機の基本的な仕組み
では、どうすれば「速く」凍らせることができるのでしょうか。業務用急速冷凍機は、その目的を達成するために、大きく分けて3つの要素をコントロールしています。
1.温度 (Temperature): より低い温度の冷気を当てることで、熱交換の効率を高めます。
2.風速 (Velocity): 強い風を当てることで、食材の表面にある熱の層(温度境界層)を吹き飛ばし、熱を奪うスピードを加速させます。
3.熱伝達媒体 (Medium): 空気だけでなく、液体や磁場など、より熱を伝えやすい媒体を利用します。
業務用急速冷凍機は、これらの要素をどのように組み合わせるかによって、いくつかの方式に分類されます。次に、代表的な3つの方式の仕組みを見ていきましょう。
【方式別】急速冷凍機の仕組みと特徴
1. エアブラスト方式(気体凍結)
仕組み: -30℃〜-40℃程度の非常に冷たい空気を、強力なファンで庫内に循環させ、食材に吹き付けることで急速に凍結させる方式です。最も一般的で、多くの急速冷凍機がこの方式を採用しています。
•メリット:
•比較的安価で、導入しやすい。
•様々な形状・大きさの食材に対応できる汎用性の高さ。
•メンテナンスが容易。
•デメリット:
•強い風を直接当てるため、食材の表面が乾燥しやすい(冷凍焼けの原因)。
•包装されていない食材や、デリケートな食材には不向きな場合がある。
代表例: ブラストチラー、トンネル型フリーザーなど
2. リキッド式(液体凍結)
仕組み: -30℃前後に冷却したアルコールや塩化カルシウムなどの液体(ブライン液)の中に、真空包装した食材を直接浸漬させて凍結させる方式です。気体よりも熱伝達率が高い液体の特性を利用するため、非常に速い凍結速度を誇ります。
•メリット:
•凍結速度が非常に速く、品質維持に優れる。
•熱伝達にムラがなく、均一な凍結が可能。
•乾燥の心配がない。
•デメリット:
•食材を真空包装する手間とコストがかかる。
•ブライン液の管理(濃度、衛生)が必要。
•装置が高価になる傾向がある。
代表例: リキッドフリーザー
3. KOGASUNが採用する「3Dフリーザー®」(特殊エアブラスト方式)
KOGASUNが提供する「3Dフリーザー®」は、エアブラスト方式に分類されますが、従来のものとは一線を画す独自の仕組みを持っています。
仕組み: 一般的なエアブラスト方式が「一方向からの強い風」を当てるのに対し、3Dフリーザー®は、庫内のファンを特殊な形状に設計し、多方向から高湿度の冷気を食材にまとわせるように、優しく包み込みながら凍結させます。これを「非貫流熱交換方式」と呼びます。

【3Dフリーザー®のメリット】
•乾燥を防ぐ: 高湿度の冷気で包み込むため、食材の水分蒸発を極限まで抑え、冷凍焼けを防ぎます。パンやスポンジケーキ、葉物野菜など、乾燥に弱い食材の冷凍に絶大な効果を発揮します。
•均一な凍結: 多方向からの冷気により、庫内のどこに置いても凍結ムラが起こりにくい構造です。
•高い汎用性: エアブラスト方式の利便性を持ちながら、リキッド式に迫る品質を実現します。
その他の特殊な凍結技術
•コンタクト式(接触凍結): 金属板で食材を挟み込み、金属の熱伝導率の高さを利用して凍結させる方式。魚のフィレなど、平らで均一な形状のものを大量に処理するのに適しています。
•液体窒素・炭酸ガス式: -196℃の液体窒素や-79℃の炭酸ガス(ドライアイス)を直接食材に噴射する方式。極めて速い凍結速度を誇りますが、ランニングコストが非常に高いのが特徴です。
まとめ
急速冷凍の品質は、「いかに速く最大氷結晶生成温度帯を通過させるか」で決まります。そして、そのための「速く凍らせる仕組み」には、様々なアプローチがあることをご理解いただけたかと思います。
•エアブラスト方式: 風の力で凍らせる、最もポピュラーな方法。
•リキッド式: 液体の高い熱伝達率を利用する、超高速な方法。
•3Dフリーザー®: 風の当て方を工夫し、乾燥を防ぎながら高品質な凍結を実現する方法。
どの方式が最適かは、「何を、どのような状態で、どれくらいの量」冷凍したいかによって異なります。例えば、包装された弁当ならエアブラスト式、高価なマグロのサクならリキッド式、繊細なケーキやパンなら3Dフリーザー®が適している、といった具合です。
自社の製品特性と、それぞれの冷凍方式の仕組み・メリット・デメリットを正しく理解し、比較検討することが、急速冷凍機選びの成功への第一歩です。
KOGASUNでは、お客様が冷凍したい食材を実際にお持ち込みいただき、3Dフリーザー®での凍結品質をその場でご確認いただける**無料の冷凍テスト**を実施しています。百聞は一見に如かず。ぜひ、その驚きの品質をご自身の目と舌でお確かめください。
