急速冷凍と普通の冷凍の違いとは?知っておきたい基礎知識まとめ

急速冷凍とは、食材を短時間で一気に凍らせることで、細胞へのダメージを最小限に抑え、解凍後も鮮度や風味を保てる冷凍方法です。普通の冷凍との大きな違いは、最大氷結晶生成帯と呼ばれる温度帯を素早く通過できるかどうかにあります。この記事では、急速冷凍の仕組みや定義をはじめ、普通の冷凍との具体的な違い、メリット・デメリット、適した食材と適さない食材について詳しく解説します。さらに、家庭でアルミトレーや金属バットを使って急速冷凍を実践する方法や、業務用急速冷凍機の種類と特徴まで網羅的にご紹介します。急速冷凍を正しく理解することで、食材の栄養素を損なわず、ドリップを抑えた高品質な冷凍保存が可能になります。ぜひ最後までお読みいただき、日々の食材保存にお役立てください。

1. 急速冷凍とは何か

急速冷凍は、食品の品質を維持しながら長期保存を可能にする冷凍技術です。一般家庭の冷凍庫で行う緩慢冷凍とは異なり、専用の機器や特殊な環境を用いて短時間で食品を凍結させることが特徴です。この章では、急速冷凍の基本的な仕組みと、なぜ食品の品質保持に優れているのかを解説します。

1.1 急速冷凍の定義と仕組み

急速冷凍とは、食品を極めて短い時間で凍結させる冷凍方法のことです。一般的には、食品の中心温度が30分以内に-5℃以下に達する冷凍を指します。この急速な温度低下により、食品内部に生成される氷の結晶を微細な状態に保つことができます。

通常の冷凍では、食品がゆっくりと凍結する過程で大きな氷結晶が形成されます。この大きな氷結晶は食品の細胞壁を破壊し、解凍時にドリップとして旨味や栄養素が流出する原因となります。一方、急速冷凍では氷結晶が小さいまま凍結が完了するため、細胞へのダメージを最小限に抑えられます。

急速冷凍の主な方式には以下のものがあります。

冷凍方式特徴主な用途
エアブラスト式冷風を強制的に当てて冷凍水産物・畜肉・調理済み食品
リキッド式液体窒素やブライン液に浸漬小型の水産物・果実
コンタクト式冷却された金属板で挟んで冷凍ブロック状の食品・水産物

1.2 急速冷凍で使用される温度帯

急速冷凍では、一般的に-30℃から-40℃程度の極低温環境が使用されます。業務用の急速冷凍機では、さらに低い-60℃以下の温度帯を使用する機種も存在します。

家庭用冷凍庫の温度が通常-18℃前後であるのに対し、急速冷凍ではより低い温度を使用することで、食品表面から中心部までを素早く凍結させます。温度が低いほど凍結速度が速くなり、食品の品質保持効果も高まります。

冷凍方法使用温度帯凍結時間の目安
家庭用冷凍庫(緩慢冷凍)-18℃前後数時間〜半日
業務用急速冷凍機-30℃〜-40℃30分〜1時間程度
液体窒素式急速冷凍-196℃数分〜数十分

1.3 最大氷結晶生成帯を素早く通過する重要性

最大氷結晶生成帯とは、食品内の水分が氷結晶へと変化する温度帯のことで、一般的に-1℃から-5℃の範囲を指します。この温度帯を通過する時間が、冷凍食品の品質を左右する最も重要な要素です。

緩慢冷凍の場合、最大氷結晶生成帯を通過するのに長い時間がかかります。その間に氷結晶は成長を続け、大きな結晶となって細胞組織を傷つけます。結果として、解凍時に細胞内の水分や栄養素がドリップとして流出し、食感や風味が損なわれてしまいます。

一方、急速冷凍では最大氷結晶生成帯を30分以内という短時間で通過させます。これにより、氷結晶が成長する前に凍結が完了し、微細な氷結晶のまま食品全体が凍結されます。細胞壁へのダメージが最小限に抑えられるため、解凍後も冷凍前に近い品質を維持できるのです。

最大氷結晶生成帯の通過時間と品質の関係は以下の通りです。

通過時間氷結晶の状態解凍後の品質
30分以内(急速冷凍)微細な結晶ドリップが少なく鮮度を維持
1〜3時間中程度の結晶やや品質低下
3時間以上(緩慢冷凍)大きな結晶ドリップが多く食感・風味が低下

このように、急速冷凍の品質保持効果は、最大氷結晶生成帯をいかに素早く通過させるかにかかっています。食品業界では、この原理を活用して鮮魚や精肉、調理済み食品などの品質を維持しながら流通させています。

2. 急速冷凍と普通の冷凍の違いを徹底比較

急速冷凍と普通の冷凍(緩慢冷凍)は、どちらも食品を凍らせる方法ですが、その過程と結果には大きな違いがあります。ここでは、冷凍スピード、氷結晶の形成、そして解凍後の品質という3つの観点から、両者の違いを詳しく比較していきます。

2.1 冷凍スピードの違い

急速冷凍と普通の冷凍の最も基本的な違いは、食品が凍結するまでの時間です。一般的な家庭用冷凍庫で行う普通の冷凍では、食品の中心部まで完全に凍結するのに数時間から半日以上かかることがあります。一方、急速冷凍では30分から1時間程度で食品全体を凍結させることが可能です。

この冷凍スピードの違いは、使用する温度帯と冷却方式によって生まれます。家庭用冷凍庫は通常マイナス18℃前後で運転されますが、業務用の急速冷凍機ではマイナス30℃からマイナス40℃、場合によってはさらに低い温度で冷凍を行います。

項目急速冷凍普通の冷凍(緩慢冷凍)
凍結時間30分〜1時間程度数時間〜半日以上
使用温度帯マイナス30℃〜マイナス40℃以下マイナス18℃前後
最大氷結晶生成帯の通過時間短時間で通過長時間滞留

2.2 氷結晶の大きさと細胞へのダメージ

冷凍スピードの違いは、食品内部に形成される氷結晶の大きさに直接影響を与えます。食品に含まれる水分は凍結する際に氷の結晶となりますが、普通の冷凍では氷結晶が大きく成長し、食品の細胞膜や組織を破壊してしまいます

これに対して急速冷凍では、水分が凍る時間が短いため、氷結晶が大きく成長する前に凍結が完了します。その結果、形成される氷結晶は非常に細かく、細胞組織へのダメージを最小限に抑えることができます。

特に重要なのが、0℃からマイナス5℃付近の温度帯です。この範囲は「最大氷結晶生成帯」と呼ばれ、食品中の水分が最も活発に氷結晶を形成する領域です。普通の冷凍ではこの温度帯をゆっくり通過するため、氷結晶が時間をかけて大きく成長してしまいます。急速冷凍ではこの帯域を素早く通過することで、氷結晶の肥大化を防いでいるのです。

比較項目急速冷凍普通の冷凍(緩慢冷凍)
氷結晶の大きさ微細大きい
細胞組織への影響ダメージが少ない細胞膜が破壊されやすい
食品の構造元の状態を維持しやすい組織が崩れやすい

2.3 解凍後の品質と鮮度の差

氷結晶の大きさと細胞へのダメージの違いは、解凍後の食品品質に明確な差となって現れます。普通の冷凍で凍らせた食品を解凍すると、破壊された細胞から水分や旨味成分が流れ出し、「ドリップ」と呼ばれる液体が発生します。このドリップには、タンパク質やアミノ酸などの栄養素や旨味成分が含まれているため、食品の味や栄養価が低下する原因となります

急速冷凍された食品は細胞組織が保たれているため、解凍時のドリップ量が大幅に少なくなります。これにより、冷凍前に近い食感、風味、色合いを維持することが可能です。例えば、刺身用の魚を急速冷凍した場合、解凍後も身の弾力や透明感が保たれ、冷凍前とほとんど変わらない状態で食べることができます。

また、急速冷凍は食品の酸化も抑制します。凍結までの時間が短いことで、空気に触れて酸化が進む時間も短縮されるため、変色や風味の劣化を防ぐ効果があります。特に脂質を多く含む食品では、この酸化抑制効果が品質維持に大きく貢献します。

品質項目急速冷凍普通の冷凍(緩慢冷凍)
ドリップ量少ない多い
食感冷凍前に近い状態を維持水っぽくなりやすい
風味・旨味保持されやすい流出しやすい
色合い鮮やかさを維持変色しやすい
栄養価損失が少ないドリップとともに流出

3. 急速冷凍のメリットとデメリット

急速冷凍には多くの利点がありますが、導入にあたっては注意すべき点も存在します。ここでは、急速冷凍のメリットとデメリットを詳しく解説し、導入を検討する際の判断材料をご紹介します。

3.1 急速冷凍のメリット

急速冷凍を活用することで得られる主なメリットは以下のとおりです。食品の品質維持から経済的なメリットまで、幅広い利点があります。

3.1.1 食材の栄養素や風味を保持できる

急速冷凍の最大のメリットは、食材本来の栄養素や風味をほぼそのまま保持できる点にあります。通常の冷凍では、凍結に時間がかかることで食材内部の酵素活性が進み、ビタミンCなどの水溶性ビタミンが失われやすくなります。

一方、急速冷凍では短時間で凍結が完了するため、酵素の働きが抑制され、栄養素の損失を最小限に抑えられます。また、香り成分や旨味成分も逃げにくく、解凍後も新鮮な状態に近い風味を楽しむことが可能です。

3.1.2 ドリップが少なく食感が損なわれにくい

急速冷凍では、食材内部に生成される氷結晶が非常に小さくなるため、細胞壁や細胞膜へのダメージが最小限に抑えられます。その結果、解凍時に発生するドリップ(水分や旨味成分が流出したもの)の量が大幅に減少します。

ドリップが少ないということは、食材の水分が保たれ、みずみずしい食感が維持されることを意味します。特に刺身や果物など、食感が重要な食材において、その違いは顕著に表れます。

比較項目急速冷凍緩慢冷凍(通常冷凍)
氷結晶の大きさ小さい(微細)大きい(粗大)
細胞へのダメージ少ない多い
ドリップ量少ない多い
解凍後の食感良好劣化しやすい

3.1.3 長期保存が可能になる

急速冷凍によって品質を維持したまま保存できるため、食材の賞味期限を大幅に延長することが可能です。適切な温度管理のもとで保存すれば、数か月から1年以上の長期保存も実現できます。

これにより、旬の食材を大量に仕入れて保存し、年間を通じて安定的に提供することができます。飲食店や食品製造業においては、食材の廃棄ロス削減やコスト管理の面でも大きなメリットとなります。家庭においても、まとめ買いした食材を無駄なく使い切ることができるため、食品ロスの削減に貢献します。

3.2 急速冷凍のデメリット

多くのメリットがある急速冷凍ですが、導入や運用にあたってはいくつかの課題も存在します。事前にデメリットを把握しておくことで、より適切な判断が可能になります。

3.2.1 専用機器が必要になる場合がある

本格的な急速冷凍を行うためには、専用の急速冷凍機が必要となるケースが多くあります。家庭用冷凍庫の急速冷凍機能では限界があり、業務レベルの品質を求める場合は業務用機器の導入が不可欠です。

業務用急速冷凍機は、設置スペースの確保も必要となります。特に小規模な飲食店や加工場では、機器の設置場所を確保することが課題となる場合があります。また、機器の選定にあたっては、処理する食材の種類や量に応じた適切な機種を選ぶ必要があり、専門的な知識が求められることもあります。

3.2.2 電気代などのコストがかかる

急速冷凍機は、短時間で食材を凍結させるために大きな冷却能力を必要とします。そのため、通常の冷凍庫と比較して消費電力が高くなる傾向があります。特に大型の業務用機器では、月々の電気代が無視できないコストとなることがあります。

また、業務用急速冷凍機の導入費用は数十万円から数百万円と高額になることが一般的です。初期投資を回収するまでには一定の期間が必要となるため、導入前に費用対効果を十分に検討することが重要です。ただし、食品ロスの削減や品質向上による付加価値の創出を考慮すると、長期的にはコストメリットが生まれるケースも少なくありません。

コスト項目内容目安
初期導入費用機器本体・設置工事費数十万円〜数百万円
ランニングコスト電気代・メンテナンス費用月数千円〜数万円
消耗品費フィルター・冷媒補充など年数千円〜数万円

4. 急速冷凍に適した食品と適さない食品

急速冷凍は多くの食材の品質を維持するのに優れた方法ですが、すべての食品に適しているわけではありません。食材の特性によって、急速冷凍の効果が発揮されるものとそうでないものがあります。ここでは、急速冷凍に向いている食材と不向きな食材を詳しく解説します。

4.1 急速冷凍に向いている食材

急速冷凍は、細胞組織がしっかりしている食材や水分含有量が適度な食品に特に効果を発揮します。これらの食材は、急速冷凍によって氷結晶が小さく抑えられるため、解凍後も本来の食感や風味を保ちやすいという特徴があります。

食材カテゴリ具体例急速冷凍のポイント
肉類牛肉、豚肉、鶏肉、ラム肉ドリップを抑え、旨味成分を逃さない
魚介類マグロ、サーモン、エビ、イカ、ホタテ刺身品質を維持でき、鮮度が長持ちする
果物ブルーベリー、いちご、マンゴー、バナナ栄養素を損なわず、スムージーやデザートに最適
下処理済み野菜ブロッコリー、ほうれん草、枝豆、かぼちゃブランチング後に急速冷凍すると品質維持に効果的
主食類ご飯、パン、うどん、餃子の皮でんぷんの老化を防ぎ、もちもち食感を保持
調理済み食品ハンバーグ、コロッケ、唐揚げ、カレー作り立ての美味しさをそのまま保存可能

特に魚介類は、急速冷凍との相性が非常に良い食材です。新鮮な状態で急速冷凍することで、刺身として食べられる品質を長期間維持できます。寿司店や居酒屋などの飲食店では、遠方から仕入れた魚介類を急速冷凍で保存し、解凍後にお客様へ提供するケースも増えています。

また、炊きたてのご飯を急速冷凍すると、でんぷんの老化を防ぎ、電子レンジで解凍した際にも炊きたてに近いふっくらとした食感を楽しめます。ご飯は熱いうちにラップで包み、粗熱を取ってからすぐに急速冷凍するのがコツです

4.2 急速冷凍に不向きな食材

急速冷凍でも品質を維持しにくい食材があります。これらの食材は、冷凍によって組織が破壊されやすかったり、解凍時に本来の食感を取り戻せなかったりする特徴があります。

食材カテゴリ具体例不向きな理由
水分が多い生野菜レタス、きゅうり、トマト、もやし細胞内の水分が多く、解凍後にしんなりしてしまう
豆腐類絹ごし豆腐、木綿豆腐スポンジ状になり、本来のなめらかな食感が失われる
じゃがいも生のじゃがいも、ポテトサラダでんぷん質が変性し、ぼそぼそとした食感になる
殻付き卵、ゆで卵殻が割れる、白身がゴム状になる
乳化食品マヨネーズ、生クリーム、牛乳油分と水分が分離してしまう
こんにゃく類こんにゃく、しらたき水分が抜けてスカスカになり、弾力が失われる

水分含有量が極端に高い食材は、急速冷凍であっても細胞壁の損傷を完全に防ぐことが難しく、解凍後の品質低下が避けられません。レタスやきゅうりなどの生野菜は、冷凍すると水分が凍って細胞が破壊され、解凍時に水分が流出してしなびた状態になってしまいます。

豆腐は冷凍すると高野豆腐のような食感に変化します。これを意図的に活用する調理法もありますが、なめらかな豆腐本来の食感を求める場合は冷凍保存には向いていません。

じゃがいもは生の状態での冷凍には適しませんが、マッシュポテトにしてから冷凍すれば品質を維持しやすくなります。また、フライドポテト用に加工されたじゃがいもは急速冷凍されて販売されており、この場合は美味しく食べることができます。

食材の特性を理解し、適切な保存方法を選ぶことで、急速冷凍の効果を最大限に活用することができます。不向きな食材でも、下処理や調理法を工夫することで冷凍保存が可能になる場合もあるため、食材ごとの特徴を把握しておくことが大切です。

5. 家庭で急速冷凍を実践する方法

業務用の急速冷凍機がなくても、家庭にある道具や工夫次第で急速冷凍に近い状態を再現することができます。ポイントは、食材からの熱をいかに素早く奪うかという点にあります。ここでは、すぐに実践できる具体的な方法を紹介します。

5.1 アルミトレーや金属バットを活用する

家庭で急速冷凍を実現する最も手軽な方法が、アルミトレーや金属製のバットを使うことです。アルミニウムは熱伝導率が非常に高く、食材の熱を素早く冷凍庫内の冷気に伝える役割を果たします。

具体的な手順としては、まず金属製のトレーを冷凍庫であらかじめ冷やしておきます。その冷えたトレーの上に食材を直接置くことで、通常の冷凍よりも格段に速く食材を凍らせることが可能になります。

100円ショップなどで販売されているアルミ製の浅型バットでも十分に効果があります。また、アルミホイルで食材を包んでから冷凍する方法も、熱伝導を高める効果が期待できます。

素材熱伝導率の目安急速冷凍への適性
アルミニウム非常に高い最適
ステンレスやや低い使用可能
プラスチック低い不向き
ガラス低い不向き

5.2 食材を薄く平らにして冷凍する

食材の形状を工夫することも、急速冷凍を成功させる重要なポイントです。食材を薄く平らな状態にすることで、冷気が食材全体に均一かつ素早く伝わります

例えば、ひき肉や炊いたご飯を冷凍する際は、保存袋に入れてから薄く伸ばし、厚さを1〜2cm程度に揃えます。こうすることで、塊のまま冷凍するよりも短時間で中心部まで凍らせることができます。

また、煮物やカレーなどの液体を含む料理も、できるだけ浅い容器に薄く広げて冷凍すると効果的です。小分けにして冷凍することで、解凍時に必要な分だけ取り出せる利便性も生まれます。

食材の例推奨する厚さ冷凍時のコツ
ひき肉1〜1.5cm保存袋で平らに伸ばし、菜箸で筋を入れておく
ご飯1〜2cm1食分ずつラップで包み、熱いうちに冷凍庫へ
肉や魚の切り身そのまま1枚ずつラップで包み、重ならないように並べる
カレー・シチュー2〜3cm浅い保存容器か保存袋に薄く入れる

5.3 急速冷凍機能付き冷蔵庫を使う

最近の家庭用冷蔵庫には、急速冷凍機能が搭載されているモデルが増えています。パナソニックの「はやうま冷凍」、日立の「デリシャス冷凍」、三菱電機の「切れちゃう瞬冷凍」など、各メーカーがそれぞれ独自の技術を採用しています。

これらの機能は、通常の冷凍室よりも低い温度や強力な冷気によって、家庭でも業務用に近い速度で食材を凍らせることを可能にしています。特に専用の冷凍スペースを設けている機種では、最大氷結晶生成帯を素早く通過させる設計になっています。

急速冷凍機能を使用する際は、食材を入れすぎないことが大切です。冷凍室内の空気の循環を妨げないよう、適切な量を心がけましょう。また、熱い食材をそのまま入れると庫内温度が上がり、他の食品に悪影響を及ぼす可能性があるため、粗熱を取ってから使用することをおすすめします。

メーカー機能名称主な特徴
パナソニックはやうま冷凍業務用レベルの急速冷凍で鮮度を維持
日立デリシャス冷凍食材のおいしさを閉じ込める急速冷凍
三菱電機切れちゃう瞬冷凍解凍せずにそのまま切れる状態で保存
シャープおいそぎ冷凍約2倍のスピードで急速冷凍

急速冷凍機能付きの冷蔵庫を購入する際は、冷凍室の容量や消費電力なども考慮して選ぶとよいでしょう。日常的に冷凍保存を活用する家庭では、この機能の有無で食材の品質保持に大きな差が生まれます。

6. 業務用急速冷凍機の種類と特徴

業務用急速冷凍機は、食品業界において品質を維持しながら大量の食材を効率的に冷凍するために欠かせない設備です。冷凍方式によっていくつかの種類に分類され、それぞれに特徴や得意とする食材が異なります。ここでは代表的な3つの方式について詳しく解説します。

冷凍方式冷凍原理冷凍速度適した食品例導入コスト
エアブラスト式冷風を高速で吹き付ける中程度幅広い食品全般比較的安価
リキッド式冷却液に浸漬または噴霧非常に速い魚介類・果物高価
コンタクト式冷却した金属板で挟む速い薄い板状の食品中程度

6.1 エアブラスト式急速冷凍機

エアブラスト式急速冷凍機は、マイナス30℃からマイナス40℃程度の冷風を高速で食品に吹き付けることで冷凍する方式です。業務用急速冷凍機の中で最も広く普及しており、さまざまな食品加工現場で採用されています。

この方式の最大の特徴は、形状やサイズが異なる多様な食品に対応できる汎用性の高さにあります。冷風を均一に当てることで、食品全体をムラなく冷凍できるため、肉類、魚介類、野菜、調理済み食品など幅広い用途に使用されています。

エアブラスト式には、食品を棚に並べて冷凍するバッチ式と、コンベアで食品を搬送しながら連続的に冷凍するトンネル式があります。バッチ式は小規模な生産に適しており、トンネル式は大量生産ラインに組み込むことで効率的な連続冷凍が可能です。

導入コストが他の方式と比較して抑えられる点も、多くの事業者に選ばれる理由の一つです。ただし、冷風による乾燥が発生しやすいため、食品によっては包装してから冷凍するなどの対策が必要になる場合があります。

6.2 リキッド式急速冷凍機

リキッド式急速冷凍機は、冷却した液体を利用して食品を冷凍する方式です。液体は空気と比較して熱伝導率が高いため、最大氷結晶生成帯を極めて短時間で通過させることができ、細胞へのダメージを最小限に抑えられます

リキッド式はさらに、使用する冷媒によっていくつかの種類に分かれます。代表的なものとして、アルコールや塩化カルシウム水溶液などのブライン液を使用するブライン凍結と、液体窒素を噴霧または浸漬させる液体窒素凍結があります。

ブライン凍結は、マイナス20℃からマイナス35℃程度に冷却したブライン液に食品を浸漬させる方法で、魚介類の冷凍に多く用いられています。食品を直接液体に浸す場合は包装が必要ですが、間接的に冷却する方式もあります。

液体窒素凍結は、マイナス196℃という超低温の液体窒素を使用するため、あらゆる急速冷凍方式の中で最も高速な冷凍が可能です。高品質な冷凍品を製造できる反面、液体窒素のランニングコストが高いため、付加価値の高い食品に使用されることが多い傾向にあります。

6.3 コンタクト式急速冷凍機

コンタクト式急速冷凍機は、冷却した金属板で食品を上下から挟み込み、直接接触させることで熱を奪う方式です。金属の高い熱伝導性を活かすことで、効率的に冷凍を行うことができます。

この方式は、厚みが均一で平らな形状の食品に特に適しています。具体的には、精肉のスライス、魚の切り身、ハンバーグパティ、餃子の皮など、板状に成形された食品の冷凍に広く利用されています。

コンタクト式の利点として、食品が金属板に密着するため熱交換効率が高く、エアブラスト式と比較して冷凍時間を短縮できる点が挙げられます。また、冷風を使用しないため食品表面の乾燥が起こりにくく、品質を維持しやすいという特徴もあります。

一方で、不定形な食品や厚みにばらつきがある食品には適しておらず、用途が限定される点がデメリットといえます。金属板との接触面積を確保できない食品では、十分な冷凍効果が得られない場合があります。

業務用急速冷凍機を選定する際は、冷凍する食品の種類や形状、生産量、設置スペース、予算などを総合的に考慮し、最適な方式を選ぶことが重要です。複数の方式を組み合わせて使用している食品工場も少なくありません。

7. まとめ

急速冷凍とは、食品を-30℃以下の低温で素早く凍結させる技術です。最大氷結晶生成帯(-1℃〜-5℃)を短時間で通過させることで、氷の結晶を小さく抑え、食品の細胞を傷つけにくくします。

普通の冷凍との最大の違いは、冷凍スピードと氷結晶の大きさにあります。急速冷凍では氷結晶が微細なため、解凍後のドリップが少なく、食材本来の食感や風味、栄養素を保持しやすいというメリットがあります。

一方で、専用機器の導入コストや電気代がかかる点はデメリットとして考慮が必要です。

家庭で急速冷凍を実践するには、アルミトレーや金属バットを活用する方法や、食材を薄く平らにして冷凍する方法が効果的です。また、急速冷凍機能が搭載された冷蔵庫を使用することで、より手軽に実践できます。

業務用としては、エアブラスト式、リキッド式、コンタクト式など、用途や食材に応じた急速冷凍機が存在します。それぞれの特徴を理解し、目的に合った方式を選ぶことが品質維持のポイントとなります。

急速冷凍を正しく活用することで、食品ロスの削減や食材の長期保存が可能になり、家庭でも業務でも食の品質向上に役立てることができます。

8. さらなる品質の高みへ|次世代の業務用急速冷凍機という選択

サイズ別に比較された急速冷凍機「3Dフリーザー」小規模店舗向けから大規模施設向けまで。

この記事では、急速冷凍の基本的な仕組みから業務用冷凍機の種類まで、その基礎知識を網羅的に解説しました。急速冷凍がいかに食品の品質を維持し、ビジネスに貢献する可能性を秘めているか、ご理解いただけたかと思います。

特に、最も普及している「エアブラスト式」は汎用性の高さが魅力ですが、記事中で触れたように「冷風による乾燥」という課題も抱えています。この課題を克服し、さらに上の品質を目指すために開発されたのが、特許技術を搭載した次世代の急速冷凍機「3Dフリーザー®」です。

8.1 エアブラスト式の課題を克服する「3Dフリーザー®」

3Dフリーザー・トレーインタイプから冷凍されたロブスターグラタンを取り出す様子|業務用急速冷凍機の冷凍工程

従来のエアブラスト式が単に冷風を吹き付けるのに対し、3Dフリーザー®は、食品の水分を奪いにくい「高湿度3D冷気」で食品を全方位から包み込むように、優しくかつ均一に冷凍します。これにより、エアブラスト式の課題であった乾燥(冷凍焼け)を極限まで防ぎ、食品のみずみずしさを保ったまま凍結させることが可能です。

項目3Dフリーザー®従来のエアブラスト式
冷却方式高湿度3D冷気(包み込むように冷凍)乾燥した冷風(吹き付けて冷凍)
食品の乾燥極めて少ない発生しやすい
歩留まり高い低下しやすい
品質維持非常に高い(特に繊細な食材)食材による

この技術により、これまで冷凍が難しいとされてきた寿司や生クリームなど、その食感と風味を損なうことなく高品質な冷凍が実現します。

8.2 あなたのビジネスを新たなステージへ

「他社との差別化を図れる、圧倒的な品質の冷凍商品を作りたい」 「フードロスをさらに削減し、歩留まりを改善して収益性を高めたい」 「最新の冷凍技術で、新たな商品開発に挑戦したい」

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よくある質問(FAQ)

急速冷凍は家庭用の冷凍庫でもできますか?

完全な急速冷凍は難しいですが、工夫次第で近い効果を得ることは可能です。
アルミトレーや金属バットを使って食材を冷やしたり、食材を薄く平らにして冷凍したりすることで、通常よりも速く凍らせられます。
最近では急速冷凍機能を搭載した家庭用冷蔵庫も増えており、業務用に近い品質で保存できるようになっています。

急速冷凍した食品の賞味期限はどのくらいですか?

適切な温度管理のもとで保存すれば、数か月から1年以上の保存が可能です。
ただし、食材の種類や冷凍前の鮮度、保存温度によって期間は変わります。
肉類や魚介類は3か月程度、調理済み食品は1か月程度を目安にすると良いでしょう。
保存中は温度変化を避け、マイナス18℃以下を維持することが品質保持の鍵となります。

解凍する際に注意すべき点はありますか?

急速冷凍した食品の品質を活かすには、解凍方法も重要です。
冷蔵庫でゆっくり解凍するか、流水解凍が基本となります。
電子レンジの解凍機能を使う場合は、加熱ムラに注意してください。
常温での放置解凍は雑菌が繁殖しやすいため避けましょう。
刺身用の魚など生で食べる食材は、特に衛生面に配慮した解凍が必要です。

急速冷凍すると栄養素は失われませんか?

急速冷凍は栄養素をほぼそのまま保持できる優れた保存方法です。
短時間で凍結が完了するため、酵素の働きが抑制され、ビタミンCなどの水溶性ビタミンの損失も最小限に抑えられます。
むしろ、収穫後に時間が経過した生鮮食品よりも、新鮮なうちに急速冷凍した食品の方が栄養価が高い場合もあります。

業務用急速冷凍機の導入にはどれくらいの費用がかかりますか?

機種や処理能力によって大きく異なりますが、小型のものでも数十万円、本格的な業務用では数百万円から1000万円以上するものもあります。
初期導入費用に加えて、電気代やメンテナンス費用などのランニングコストも考慮する必要があります。
ただし、食品ロス削減や品質向上による付加価値創出を考えると、長期的には投資効果が期待できます。

一度解凍した食品を再び冷凍しても大丈夫ですか?

衛生面と品質面から、解凍した食品の再冷凍は基本的におすすめできません。
解凍時に食品表面で雑菌が繁殖する可能性があり、再冷凍してもその菌は死滅しません。
また、解凍と冷凍を繰り返すことで細胞がさらにダメージを受け、ドリップが増えて食感や風味が大きく損なわれます。
どうしても再冷凍する場合は、加熱調理してから冷凍するようにしましょう。

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