
ふぐの本場、山口県下関市。観光客でにぎわう唐戸市場に店を構える株式会社海(かい)様は、大正13年創業、100年の歴史を持つ老舗のふぐ問屋です。熟練の職人が引くふぐの薄造りは、透き通る美しさと繊細な食感が身上です。その凍結には、アルコール凍結(リキッド凍結)を用いていましたが、袋の破損によるロスとアルコール液のコストが経営の負担になっていました。本記事では、液体から空気への凍結方式の乗り換えという導入事例に加えて、二つの方式が何をどう変えるのかを技術の側から解説します。
結論:空気凍結への乗り換えでふぐの薄造りの品質が向上し、廃棄ロスとアルコール液のコストも解消した
株式会社海様は、アルコール凍結機から3Dフリーザー®へ入れ替え、真空パックの破損(ピンホール)による廃棄ロスを解消しました。液体を使わない3D冷気でも、ふぐの薄造りはアルコール凍結以上の品質に仕上がります。高価なアルコール液が不要になってランニングコストは大幅に下がり、濃度管理などの専門作業も消えて、資格や経験のないスタッフでも扱える運用になりました。サーモンやマグロなど魚種も広がり、OEM先からも高い評価を得ています。導入の概要は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 導入企業 | 株式会社海様(山口県下関市・大正13年創業) |
| 事業 | ふぐ問屋、水産物の加工販売、唐戸市場での店舗運営 |
| 対象食材 | ふぐの薄造り、サーモン、サザエ、マグロなどの魚介類 |
| 導入目的 | 廃棄ロスの解消、ランニングコスト削減、薄造りの品質向上 |
| 導入機種 | 3Dフリーザー® ラックインタイプ |
| 導入の決め手 | テストで、液体を使わずにアルコール凍結以上の品質を確認できた |
導入企業:南風泊市場に本社を置く、大正13年創業のふぐ問屋
株式会社海様は、日本唯一のふぐ専門市場である南風泊(はえどまり)市場に本社を置き、唐戸市場内にも店舗を持つ水産仲卸・加工会社です。ふぐの目利きと加工技術には定評があり、週末の唐戸市場「馬関街(ばかんがい)」では、新鮮なネタを使ったお寿司が人気を集めています。通販事業も好調で、下関の味を全国へ届けています。

導入前の課題:アルコール凍結の見えないコスト

以前は、パックした商品をアルコール液に浸して凍らせるリキッド凍結機を使っていましたが、運用には三つの重い課題がありました。
- ピンホールによるロス。液中で凍結させる際に真空パックへ目に見えない小さな穴が空き、商品として販売できなくなる廃棄ロスが多発していた。
- 薄造りの品質。繊細なふぐの薄造りは、アルコール凍結では食感や風味が理想に届かず、品質に納得がいかなかった。
- コストと手間。アルコール液の補充・交換費用に加え、濃度管理などの維持作業に有資格者や専門知識が必要で、運用の負担が大きかった。
凍結のたびにアルコール液が減り、袋が破れれば商品ごと捨てていました。方式そのものに組み込まれたコストでした。
なぜリキッド凍結は速いのに、ピンホールと液の管理コストを抱えるのか
リキッド凍結は、低温の液体に食品を浸して熱を奪う方式です。速さの理由は単純で、液体は空気よりもはるかに大きな力で熱を運ぶからです。凍結を速めたい現場が液体を選んできたのは、この性質に基づく合理的な判断でした。
ただし、液体に浸す方式は、二つの負担を伴います。
食品を液に直接触れさせるわけにはいかないため、必ず包装で覆う必要があります。ところが液の中では、包装に圧力がかかり、投入と取り出しのたびに擦れも生じます。目に見えないほど小さな穴が空けば、そこから液が入り込み、商品はまるごと廃棄になります。同社が悩まされたピンホールのロスは、液に浸すという仕組みから生じる構造的なリスクでした。
液の維持にも手間と費用がかかります。使い続ければ凍結液は薄まり汚れていくため、補充と交換が欠かせず、濃度の管理には知識と資格を持つ人が要ります。凍結という工程が、特定の人にしか任せられない仕事になっていました。
なぜ空気凍結で、薄造りの品質がアルコール凍結を上回ったのか

熱を運ぶ力で劣る空気が、アルコール凍結以上の仕上がりを出せた理由は、薄造りという食材の形と、冷気の湿度にあります。
まず形です。ふぐの薄造りは、器の絵柄が透けるほど薄く引かれています。中心まで冷やすべき距離が極端に短いため、熱を運ぶ力の差は仕上がりの差として現れにくくなります。3Dフリーザー®は高湿度の3D冷気を多方向から当てて包み込むため、薄い身は表と裏の差なく一気に凍り、氷の粒は微細なまま収まるのです。身の水分は、筋繊維を包む細胞膜の内側に抱えられています。この細胞膜が破れなければ、解凍しても水分とうま味は身の中に残ります。

凍る速さが位置によって変わらないことも、薄造りでは欠かせません。同じ器の中でも、冷気の通り道から外れた位置は凍るのが遅れ、そこでは氷結晶が大きく歪な形に育ちます。角の張った結晶は薄い身をたやすく裂きます。薄造りは一枚でも欠ければ商品にならないため、この差は歩留まりに直結します。3Dフリーザー®では冷気が多方向から均一に当たるため、器の中の位置による凍りムラが出ません。
そして湿度です。薄造りの品質を最後に分けるのは、凍る速さだけではありません。薄いということは、身の量に対して空気に触れる面が極端に大きいということでもあります。乾いた冷気に当てれば表面から水分が奪われ、縁が反り、身は白く濁ります。3Dフリーザー®の冷気は湿度を保ったまま熱だけを運び去るため、この乾燥が起きません。薄造りを何皿も続けて凍らせても冷気が乾かないのは、冷却器への着霜を抑えるKOGASUN独自のACVCS®によるものです。

液体を使わないことは、包装の意味も変えました。液から守るための包装ではなく、乾燥から守るための包装になります。圧力も擦れもかからないため、ピンホールという失敗そのものが起こらなくなります。方式ごとの違いはリキッド凍結とエアブラスト凍結の比較で詳しく解説しています。
導入の決め手:液体を使わずに、アルコール凍結以上の品質
課題解決のために3Dフリーザー®をテストした結果、求めていた均質な冷凍が可能だと確認できました。液体を使わない3D冷気でも、ふぐの薄造りは劣化せず、アルコール凍結以上の品質で仕上がります。風で凍らせるためピンホールのリスクは構造的にゼロになり、歩留まりの改善を確信できました。
効果1:アルコール液も資格も不要になった運用
高価なアルコール液が不要になり、ランニングコストは大幅に下がりました。液管理などの専門作業がなくなったことで、資格や経験のないスタッフでもボタン一つで扱えます。凍結が特定の人にしかできない仕事ではなくなり、現場の運用は軽くなりました。

効果2:魚種が広がり、OEM先からも高評価
ふぐだけでなく、サーモン、サザエ、マグロなど一般魚介類の加工にも活用が広がりました。3Dフリーザー®で冷凍した商品は、OEM(受託製造)のクライアントからも、ドリップが出ない、色がきれいと高い評価を得ています。
同じふぐ業界では、通年取引に取り組むふくます水産様の導入事例も参考になります。導入前後の変化をまとめます。
| 観点 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 廃棄ロス | ピンホールでの廃棄が多発 | ピンホールのリスクがゼロに |
| コスト | アルコール液の補充・交換費が続く | アルコール液ゼロでランニングコスト減 |
| 運用 | 濃度管理に有資格者が必要 | 資格不要でボタン一つ |
| 事業 | ふぐ中心の加工 | 一般魚介へ拡大しOEMでも高評価 |
効果3:段差のある現場でも設置に対応できた
導入時には工場の床に段差があるという問題がありましたが、現場に合わせたオーダーメイド設置対応で解決しました。機械の性能だけでなく、据え付けから運用開始までの伴走が、老舗の信頼につながっています。
導入機種:薄造りをラックごと凍結するラックインタイプ
導入機種は、3Dフリーザー®のラックインタイプです。パックした商品や薄造りの容器をトレーに載せ、ラックごと庫内へ入れて凍結します。液への浸漬も引き上げも要らず、トレーを載せて扉を閉めるだけの手順が、資格のいらない現場の運用を支えています。機種の一覧は3Dフリーザーの製品ラインナップで確認できます。

お客様の声:株式会社海様より
「以前はアルコール凍結でピンホールなどのロスが多かったのですが、3Dフリーザーにしてからはそれがなくなりました。アルコール液が不要でコスト削減になり、資格者も不要になったのが大きいです。ふぐ以外にもサーモンやマグロなども加工可能になり、OEM先からも高評価をいただいています。」
ご協力いただいた企業様

株式会社海様
- ふく問屋(下関ではふぐを「ふく」と呼びます)、一般魚介の加工販売
- 山口県下関市彦島西山町4丁目16-14
- 株式会社海様 ウェブサイト
- 公式オンラインショップ
アルコール凍結と薄造りの仕上がりを比べる:無料の凍結テスト
リキッド凍結のランニングコストや袋の破損に悩んでいるなら、方式そのものを疑う価値があります。KOGASUNの凍結テストは費用も出張費も無料です。現在お使いの急速冷凍機との比較を前提にした持ち込みも歓迎です。同じ商品を両方式で凍らせれば、次の項目を並べて比べられます。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 解凍後の食感 | 薄造りのしなやかさと歯ざわりを、方式ごとに食べ比べる |
| 身の透明感 | 縁が反っていないか、白く濁っていないかを見る |
| ドリップ | 容器にたまる量を、同じ解凍条件で比べる |
| 包装の状態 | 凍結後に袋の破れやしみ込みが起きていないかを確かめる |
| 運用の手間 | 投入から取り出しまでの作業と、必要な管理の量を比べる |
解凍後の品質とコストを並べてお確かめください。申し込みの流れは食品を持ち込める凍結テストでご確認ください。
凍結方式の切り替えでよくある質問
リキッド凍結は低温の液体に浸して熱を奪う方式、空気凍結は冷気で熱を奪う方式です。液体は熱を運ぶ力に優れる一方、凍結液の費用と管理、袋の破損リスクが伴います。高湿度の3D冷気は、液体を使わずに均質な凍結を実現します。
液中では包装にかかる圧力や擦れで、目に見えない小さな穴が生じることがあります。穴が空けば液が触れた商品は販売できず、廃棄になります。3Dフリーザー®のような空気凍結には液がないため、この形のロスは構造的に発生しません。
アルコール液の補充・交換と濃度管理の作業がなくなり、専門資格を持つ人に依存しない運用になります。本事例ではボタン一つの操作になり、誰が担当しても同じ品質で凍結できる体制に変わりました。
使えます。本事例ではふぐの薄造りに加え、サーモン、サザエ、マグロなどの加工にも活用し、OEMの受託製造まで広がりました。魚種ごとの仕上がりは凍結テストで確認するのが確実です。
ロス削減や生産性向上を伴う設備更新として、ものづくり補助金や中小企業省力化投資補助金を検討できます。公募回ごとの要件と締切は、KOGASUNの導入相談で最新情報をご確認ください。
まとめ:方式の乗り換えが、廃棄ロスとアルコール液のコストをなくした
創業100年の老舗が選んだのは、使い慣れた方式を守ることではなく、品質とコストで凍結方式を選び直すことでした。薄い身は熱を運ぶ力の差が出にくく、最後に品質を分けたのは、冷気の湿度でした。その結果、液体を使わずにアルコール凍結以上の仕上がりに達しています。ピンホールのロスとアルコール液のコストをなくし、薄造りの品質を高め、魚種とOEMへ事業を広げました。凍結方式の乗り換え一つで、これだけの変化が生まれました。リキッド凍結の運用負担に心当たりのある水産加工の現場は、無料の比較テストで仕上がりの差をお確かめください。機種選定や設置のご相談は、以下からお問い合わせください。







