引用元:みなと新聞 2021年8月23日 掲載
古賀産業が山口大と 独自技術を再生医療用へ
【山口】冷凍機などのメーカーの古賀産業(山口県下関市、古賀靖社長)が、再生医療に使用される細胞シートの凍結装置を山口大と共同開発した。同社が食品業界向けに事業化している独自の3Dフリーザー技術を医療用に転用。冷凍保存技術が高まれば、再生医療に欠かすことのできない細胞シート製造のコストダウンにつながり、細胞シート移植の利便性が高まると期待される。
3Dフリーザーは水分を保った冷気で食品を立体的に包み込むように急速冷凍する技術。乾燥した冷気を吹き付ける従来方式と異なり、食品の水分を奪わず高い品質を維持できるのが強みで、水産物や肉類、果物、菓子など幅広い分野で導入されている。
県のやまぐち産業イノベーション促進補助金を活用して2018年度から共同開発に着手。古賀産業が自社の技術を応用して装置開発に取り組み、山口大大学院医学系研究科器官病態外科学講座が細胞を培養する細胞シート作製技術の提供と保存方法の開発を担当した。
今年2月に装置が完成。「食品以上に冷凍後の再現率がシビアに問われる」と同社の松尾宏技術部長。庫内で乱気流を起こして全方向から冷気を当てることで、7段あるラックのどこに置いても細胞シートを均一な温度で冷凍できるようにした。
5月から山口大医学部の研究室で試験的に使用しており、解凍24時間後の細胞生存率は85%と、既に市販されている再生医療向けフリーザーの54%に比べ飛躍的に向上させた。さらに治療効果も冷凍加工していない細胞シートと比べて同等であることが動物実験で確認されたという。
今後約1年かけてデータを蓄積し、来年にも製品化を目指す。
再生医療向けに開発された細胞シートの凍結装置
古賀産業 山口 機器 資材
2021年08月23日 18時20分 配信