独自3Dフリーザーで最高の料理を

引用元:山口新聞 2023年4月8日 掲載

急速冷凍でも細胞壊さない技術

急速冷却冷凍装置「3Dフリーザー」の製造・販売で食品業界を支える下関市彦島迫町のコガサン。2022年10月、古賀産業から社名変更。同社の製品に「KOGASUN」のロゴマークが付いているため、認知度を上げるため以前から変えたいと考えていたところ、55期の決算を機に変更に踏み切った。

単なる急速冷凍だけでは食品の品質を保つのは難しく、同社の製品は東京海洋大学との共同研究でエビデンス(品質の根拠)を得ているのが大きな特徴だ。大手飲食店や回転ずしチェーン、和菓子屋などで採用実績があり「誰もが3Dフリーザーを使った食品を一度は口にしているはず。それだけ多くのなじみある店で使われている」と古賀靖社長(63)は胸を張る。

古賀社長はマグロの刺し身を例に「他社製品で急速冷凍したものは解凍時にドリップ(汁)が出てべちゃっとした感じになる。3Dフリーザーは刺し身の細胞を壊さないからドリップが出ず、鮮度を保てる」と解説する。冷凍時に湿度を高くし、熱伝達をよくしているのが大きな特徴。冷気も一方向からではなく、食品を包み込むように乱気流を発生させる。さらに氷の結晶の大きさが均一化されているため、細胞を壊さない。

3Dフリーザーに関わる特許は国内4件、EU7件、米国3件、中国で3件を取得。「独自技術なら時間や距離は問題にしない。理想を現実にしてくれる。最高の食材で最高の料理を提供したい」。製品に自信はあるものの、毎年改良を加え続け、ユーザーの使い勝手の向上に余念がない。

製品はトレーイン、ラック、ストレート、ベルトコンベヤータイプをそろえ、多様なニーズに対応する。本社と国内4カ所の営業所にはテスト機があり、食品メーカーの技術者らが冷凍後や解凍後の食品の状態を確認できる。

本社の近くにはトラフグの水揚げ日本一を誇る南風泊市場があり、周辺の水産会社の約8割が同社のフリーザーを導入。冷凍フグの通信販売などを行っている業者が多く、3Dフリーザーの優秀さが認知されてきた。魚だけでなく、肉やケーキ、和菓子、野菜などにも対応。古賀社長は「何を冷凍しても生よりうまい」と冗談交じりに話す。

フリーザーの製造を本格化したのは04年。特許を持つエアーオペレーションズを完全子会社化したのがきっかけ。ただ「最初は全然売れなかった」と振り返る。もともと産業用機械などを製造していた同社がフリーザーだけでやっていけるようになるまで10年近くかかった。「鳴かず飛ばずでえらかった(きつかった)」。その間、食品会社などにダイレクトメールを送るなど地道な営業活動を続けた。

13年に中国経済産業局長賞を受賞し、「ようやく努力が実ったと感じた」と古賀社長。他にも多くの賞を受賞し、売り上げも順調に伸び始めたと思っていたら、20年からはコロナ禍で打撃を受けた。

「外食が減り、最初はテイクアウトだったが、1年したら戻ってきた。巣ごもり需要でネット通販が増えて、食品は急速冷凍が伸びてきた。今年も引き続き伸びている」という。

今年から野球のヤマエグループ九州アジアリーグ・北九州下関フェニックスのオフィシャルスポンサーに。選手の帽子の右側にコガサンのロゴが入った。「話題をつくって皆さんに知ってもらえたら」

今後は、まだ冷凍をやったことのない食品会社などを開拓していく考え。「まだシェアは小さいから広げていきたい。チルド弁当の冷却器も売り込んでいきたい。世界は人口が増え、食料不足が懸念されている。冷凍の需要は伸びる」と目を輝かせる。

(津田雅浩)

【メモ】資本金5千万円。年商約10億円。正社員35人。1967年に北九州市八幡東区で創業。69年に下関市彦島塩浜町に移転。85年に現在の彦島迫町に移転。2代目の古賀靖社長は先代の父が早世したため、91年に31歳で就任。趣味はゴルフ。モットーは「ぶれない」。

 

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コガサン・古賀靖社長
「冷凍の需要は伸びる」と話す古賀靖社長
2023年04月08日 06時00分

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