日本近海魚 差別化で国内市場開拓

引用元:みなと新聞 2017年12月26日 掲載

川下で資源問題考える好機に

冷凍で商機!!近海魚

日本近海魚を急速凍結して付加価値を高める事例が増えている。産地を拠点にメーカーだけでなく、漁協や卸、商社、小売各社がラウンドやフィレー、惣菜に加工して急速凍結。国内販売や輸出攻勢をかける。生鮮に劣らない鮮度や品質、保存性、利便性が強み。アニサキス問題をクリアするなど安全・安心も魅力だ。産地活性化や新たなマーケットを開く経済効果に加え、近海魚を安定して商流に乗せるため、小売・流通など川下企業を交えて、水産資源の持続的利用という一大テーマに向き合う機運が高まることも期待される。

新潟上越漁協 3Dを活用

新潟県糸魚川市の上越漁協(JF上越、磯谷光一組合長)は組合員の漁業者が水揚げした鮮魚を同漁協直営工場(同市)で昆布締めフィレーや粉付き商品などに加工。真空パック後、6月に導入した古賀産業(山口県下関市)の3Dフリーザーで急速凍結する。同漁協が漁獲から商品化まで一貫。いずれの工程も鮮度・品質保持に徹する。同漁協自らコンパクトな冷凍ケースを利用した販売提案まで手がけ、販路開拓に努める。

漁協による一歩踏み込んだ製造・販売戦略は全国的に珍しい。冷凍技術の活用は「天然魚が獲れ過ぎた場合、値崩れしてしまうから(需給調整のため)冷凍するという以前の考え方とは全く異なる」(小野清隆同漁協参事)。魚を冷凍することで付加価値を高め、需要を掘り起こす試みだ。

商社や小売、相次ぎ強化

商社や卸、小売なども近海魚や同加工品を急速冷凍して商流に乗せる。ニチモウグループのニチモウフーズ(東京都中央区、山本信之社長)は下関市水揚げのノドグロの煮付けを静岡県沼津市のメーカーと共同開発。同メーカーが一貫して国内加工し冷凍出荷する。湯煎かレンジアップすれば食べられるワンランク上の煮魚として本格的な風味と簡便性を売り込む。

首都圏を中心に鮮魚専門店や飲食店を展開する魚力(同立川市、山田雅之社長)は国産魚を産地で加工し、冷凍輸出することを視野に入れる。現在研究中の最新の冷凍技術を生かせば、生鮮と区別がつかない品質を実現するという。冷凍魚は安定供給、マニュアル管理できる強みの他、加工済み商品は小売現場でパートが調理でき、必要分だけ使えるためフードロス対策にもなる。

世界的に魚の水揚げが減り、資源管理施策が強まる中、鮮度や品質で差別化できる国産冷凍魚は今後ますます存在感を強めそう。国内外でマーケットを開拓・確立するには若い小型魚を使わないなど資源の持続的利用が大前提となる。川下企業の対応や発信力に期待したい。

(東京支社・井上雅登)

 

上越漁協が製造するマダラ昆布締め
焦点 FOCUS 上越漁業協同組合 新潟 ニチモウフーズ 魚力 東京
2017年12月25日 19時00分

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