AOT 血合いの黒化変色克服
【下関】エアオペレーションテクノロジーズは「3Dフリーザー」で養殖ブリの冷凍実験をし、魚肉の変色抑制に成功した。養殖ブリはあらゆる冷凍法を駆使しても凍結すると血合い肉が黒褐色に変色する。「冷凍商品化は不能」というのが定説だったが、同社は22日間を費す試験で、解凍後も凍結前とさほどそん色ない色目、身質を保持できることを立証。世界的な魚食ブームで中国、欧米など海外で日本産養ブリの需要急増を背景に、「食の安全安心」の要件を満たす冷凍技術が待たれる中、国産養魚の輸出促進の可能性を広げる試みとして注目される。
AOTは4月16日、3Dフリーザーでの養ブリの冷凍試験に着手。試験には真空包装したスキンレス・ロインを用い、実験のために通常の3D冷凍の温度帯より低いマイナス50度に設定し約40分かけ、芯温がマイナス20度以下になるまで凍結した。
凍結完了後はマイナス35度帯に設定したストッカーに試料を移し、5月7日夜まで保存。その後、庫内温5~10度程度の家庭用冷蔵庫内で約17時間かけ解凍し、気温20度程度の室内で約1時間、放置した後にパックを開封した。
食感、味もそん色なく
結果、ブリの切断面の血合い、白身部分ともに凍結前とほとんどそん色ない色合いに復元。ドリップもなく、食感、味も差は認められなかった。養ブリはエアブラストはむろん窒素凍結、アルコールなどの冷媒液浸漬凍結法を含め従来の冷凍技術では、血合いが黒く変色するのが常識だった。試験に立ち会った養殖専門家は「従来の概念を覆す成果」などと評価した。
AOTは今回の初試験の結果を踏まえ今後、専門家や学識経験者の助言、協力をあおぎながら研究開発を重ね、「一層の品質、精度の改善に向け3Dの特性を最大限に引き出す、冷却、保存、解凍技術などあらゆる可能性を追求する」(古賀社長)方針。
3D冷凍をし22日後に解凍した養殖ブリの切断面(写真上)、従来のエアブラスト緩慢凍結で血合いが黒褐色に変色した養殖ブリのブロック