エソすり身が冷凍可能に

引用元:みなと新聞 2013年12月10日 掲載

3D凍結 離水抑え高再現性実現

【下関】古賀産業(山口県下関市、古賀靖社長)の特殊急速冷凍機「3Dフリーザー」(3D)が、冷凍すると利水現象を起こすエソなど地場魚の生すり身の凍結を可能にした。同県では複数のねりメーカーが3Dで自家用に地場の冷凍すり身を作っている。

3Dの凍結法は、独自の非貫流熱交換方式(ACVCS)で庫内に湿度を保った冷気をみなぎらせ、食材の全体を包み込むように凍結するシステム。立方的に素早く冷熱を伝導させるから食材の芯部までの氷温帯の通過時間が短く、一般的なエアブラスト凍結に比べ、氷結晶がより小さく丸く仕上がるのが特徴。

このため、水さらし工程などによって潰し魚肉中に潤沢な水分が含まれるすり身でも「水分の結合力がしっかりしている」(学識経験者)ことが、離水現象を抑制しているとみられる。また、3Dフリーザーは氷結晶が限りなく微細で尖りのない球状に生成され、冷凍・解凍時に起きる細胞の損傷が抑制されることから、ドリップが少なく食材の再現性が高いことも作用しているらしい。

かまぼこは「冷凍ができない」のがねり業界の長年の定説。凍結したかまぼこは解凍時にスポンジ状の「す」ができ、弾力、食感が損なわれてしまうためだ。このため、冷凍かまぼこは、製品のすり身割合を下げてでんぷん含量やみりんなどの糖分が高い調合をするか、液体窒素凍結法などコストの高い超低温冷凍といった限定的な手段に絞られるのが実情。

しかし、3Dはこのねり業界の定説を3年半前にメーカーと共同試験で覆している。でんぷん含量1%以下で糖分も極端に少ない同県産の焼き抜きかまぼこを凍結しても解凍後は「す」はなくチルドに近い品質を保っていた。

かまぼこの冷凍化の最大のメリットは長期保存ができること。チルド流通と比べ「ロスの低減」「弾力的な出荷・販売」ができる他、輸送も高コストの空輸以外を選べることなどで採算、収益性が髙まる。

3Dフリーザーが新たにエソなど地場産の冷凍すり身化の道筋を開いたことで、①地場原料を使った差別化製品の周年安定供給②盛漁期の前浜地場原料の集中手当て、冷凍保管によるコストダウン効果ーなどの採算性改善の余地が生まれることになる。

ねりメーカーの多くが回答するとドリップが出て原料に使えないという固定観念に捉われている中、同社では「原料高騰や消費不振、価格競争の激化にあえぐねり業界の構造的な課題克服に3Dで一石を投じたい」と話している。

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