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この記事でわかること
本ガイドは、食品の「急速冷却」を安全・確実に行うための実務書です。HACCP義務化の背景、公的ガイドラインに基づく時間・温度基準、ブラストチラー(ショックフリーザー)の選定・運用、そして現場で使える冷却ログの書き方まで、すぐ使える形でまとめました。
1. 急速冷却とは
急速冷却(ブラストチラーを含む)は、加熱後や室温の食品を短時間で安全温度まで冷ます工程です。食品衛生上のリスクを減らし、ドリップ・乾燥・酸化などの品質劣化を抑え、歩留まりを高めます。国際的にも、Codex(食品衛生の一般原則)は時間・温度管理を中核とする管理を推奨しています。
2. なぜ急速冷却が必要か(危険温度帯)
病原微生物が増殖しやすい「危険温度帯」に食品を置く時間を最短化するためです。代表的には5℃〜57℃が危険帯とされ、ここに長く留まるほどリスクが上がります(米国FDA資料)。FDA Food Codeのクイックガイド参照。
3. HACCPと時間・温度の基準(日本の公的基準)
日本ではHACCPに沿った衛生管理が原則全事業者に制度化されました(2021年6月1日開始)。厚生労働省「HACCP(ハサップ)」のページをご確認ください。
- 大量調理施設衛生管理マニュアル(厚労省)では、加熱後に冷却する場合、
30分以内に中心温度を約20℃(または60分以内に約10℃)まで下げるよう工夫し、冷却開始/終了時刻を記録することが求められています。さらに、提供まで30分以上かかる場合は10℃以下または65℃以上で保存します。
出典:大量調理施設衛生管理マニュアル(厚労省PDF)
参考として、FDA Food Codeは二段階冷却(57→21℃を2時間以内、続けて21→5℃を4時間以内)を推奨しています。国や施設が違っても「危険温度帯を素早く通過させる」考え方は共通です。
4. 現場で使える冷却方法(手段別のコツ)
- 小分け・浅型パン:内容物を薄く広げるほど熱移動が早まります。
- 撹拌+氷水槽:容器ごと氷水に入れ、時々かき混ぜる(食品が水に触れないよう二重容器で)。
- 急速冷却機(ブラストチラー):強制対流で短時間に中心温度を下げます。プローブ測温ができる機種が運用に有利。
- 導入の目安:ロットが大きい/粘度が高い/中心部が冷えにくい食品(ソース、シチュー、肉塊)ほど専用機の効果が大きい。
手段はいくつかありますが、最重要は時間と温度の記録です。後述のテンプレをそのまま使ってください。
5. ブラストチラー/ショックフリーザーの選び方
- 必要処理量:ピーク時の1バッチ量(kg)と、目標冷却時間を明確に。
- 風量と風向:棚の隅まで風が当たる構造か。熱ムラ対策の整流板や可変風量の有無。
- 温湿度制御:乾燥を抑えたい製品は湿度制御の有無を確認。
- プローブセンサー:中心温度プローブと、到達時自動停止(アラーム含む)。
- 洗浄性:ドレン構造、分解・拭き取りのしやすさ、抗菌パッキン。
- 記録機能:温度ログの自動保存(CSV出力)やクラウド連携。
- 設置条件:排熱経路、給排水、床勾配、動線(汚染/非汚染の区分)。
Codexは「加熱・冷却・貯蔵のための設備は、必要な温度に迅速に到達し維持でき、温度を監視・制御できる設計が望ましい」としています。General Principles of Food Hygiene参照。
6. 運用:配置・導線・清掃・記録
- ゾーニング:汚染作業区域/非汚染作業区域を明確に区分。床色分けやラインテープで可視化。
- 導線:加熱→冷却→保管→提供の一方通行。逆流防止。
- 清掃:日次・週次の洗浄計画と記録。器具は用途別で色分け。
- 保管:提供まで30分以上なら10℃以下または65℃以上で保管(日本基準)。
- 記録:冷却開始/終了時刻、中心温度、保存温度を欠かさず記録。
これらは厚労省マニュアルにも明記されています(温度管理、ゾーニング、記録の徹底)。出典:大量調理施設衛生管理マニュアル。
7. よくあるトラブルと対策
- 中心が冷えない:小分け不足/容器が深すぎ。浅型パンへ変更し、撹拌を増やす。
- 表面が乾く:風が強すぎ・時間が長すぎ。風量を下げ、トレーを覆う(通気は確保)。
- ログが抜ける:担当者固定+当番制でダブルチェック。自動記録機能の活用。
- 動線で交差汚染:レイアウト見直し。搬入/搬出を時間か場所で分離。
8. よくある質問(FAQ)
日本の公的手引では、加熱後30分で20℃付近、または60分で10℃付近までの冷却を推奨し、記録を残します。厚労省マニュアル参照。
FDA Food Codeは二段階冷却(57→21℃を2時間、21→5℃を4時間)。FDAガイド参照。
粘度が高い、塊状で厚みがある、デンプン・タンパクが多く熱がこもる食品は優先。大ロットは小分けを徹底。
必要処理量の過小見積りと、排熱・給排水の軽視。ピーク基準で算定し、現場導線と一緒に検討しましょう。
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